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【雑文】夢日記(令和四年十一月下旬)

令和四年十一月十八日

 ありがとう、と言うと、非常に無礼な物言いをしたかのように皆が私を見る。だから、すみませんね、と言ったら、当然の言葉だというように皆が私から視線を外した。
「すみませんね」
と言って、私は水を一杯もらう。別に喉は乾いていない。


令和四年十月二十日

 見えてくるなぁ。うん、見えてくる。
 遠いんだ。うん、遠いんだ。

 真っ直ぐな道路、これは恐らく国道二号線なのだけれど、その果てから誰かが歩いて来ている。
 友人のうちの一人なのだと確信があって、私は土産の一つも持っていないことに気付くと、周囲を見回して店を探す。洋菓子屋があったので入った。
 カラン、カランカランッ。
 ケーキの並んでいるショーケースは店の一番奥。そこに至るまでのスペースに、テーブルがいくつか置かれ、籠が並び、その中にクッキーやガトーショコラなどが溢れんばかりに盛られている。壁際にも台が備え付けられ、数種類の菓子パンが陳列されている。
 店員が居ない。とにかく店の奥、ショーケースの前に立ち、ケーキを見るフリをしつつ店員が来るのを待った。なんとなく音を立てて、客の気配に気付かせようとする。意味のない(はずの)独語も。
「しっ、しっ、しっ、疾走だよなぁ。」
「聞こえる。聞こえる。続く。一人なら良いことも、一人だと思うと、首吊る人が居て、その虚しさに、ほら、涙が」
 私はショーケースの向こうに周り、どうも調理場などに繋がっているような入り口の前に立った。壁を長方形にくり抜いたところを布で覆っているだけの入り口。ぺらりと捲って、ひょいと覗くと、自慰に耽る全裸の若い女性が居て、彼女は調理師ではなく、販売、レジ打ちを任されたバイトなのだ、とわかる。
 だったら良いか。さて、調理師はどこだ。菓子職人は。
 カラン、カランカランッ。
 店の扉に付けられていた鐘が鳴る。咄嗟に店舗スペースへ出て、ショーケースの裏に立った。客は、居たけれども、確かに覚えていたその人の名が、今はわからない。


令和四年十一月二十五日

 私の手に触れてきた君の手を、私の手の甲へそっと覆いかぶさるようにして触れる君の手を、何故か振り払わねばと思う。しかし、甘えだなぁ。いいかぁ、と緩んでいる。決して、更にその上に私の空いている手が載ることはないのだ。
 コンクリート打ちっぱなしの床の上に座り、壁にもたれ、青い空を仰ぎつつ(ここはスロープだ。あの我が母校の、小学校の、バリアフリーの、校舎と校舎の薄暗い間に入るスロープだ)、全く、私の嫌いな昭和の学生みたいな、フォークでも歌っていそうな若者のようにずっとそうしていた。


令和四年十一月二十六日

 喉をスパッと切る。道ゆく人の喉を。血が噴き出し、迸り、私が、浴び……。
 ある男もスパッと切ったのだが、なんとなく助けてみたくなって、胸に差していたペンを取り出して、切り口に挿入してみた。気道を確保するつもりだろう。男がはっきり喋っている。
「痛い、痛い。」
 私は彼の鼻をズバッと切る。
 それだけで急に失血死したらしい。肌がみるみる白くなって、赤血球の流出を思っていた。
 白昼の淡路島東岸。私は狂わぬ異常者だった。


令和四年十一月二十七日

 いつになくファンタジックな夢。
 私はある人の涙を小瓶に入れて、持ち歩いていた。小瓶に入れた経緯については意識していないが、二度と手に入るものではないと分かっていて、持ち歩く時点でリスクが発生しているのだが、その上にも慎重に鞄に納めていた。



令和四年十一月三十日

 激つ水。


 投稿し忘れていたらしい夢日記を投稿して、本シリーズは休止する。
 そもそもが詩が書けぬ苦しみから逃避せんとして、夢に縋ったまでのこと。またいつか、再開する日が来るかも知れず。それが意味することの、心細き……。

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