【朔 #175】安全な川
安全な川……。
奈、
くらげなす、
あなたの初めての、
安全な川から男がひとり出てくる。棍棒を握りしめて、ひたひたと、冬の星が侵入するのを打ち落とせ、三年、みとせ、背、絡み合う柘榴だ今生も枕木も。指先に蜩が鳴いていて、それでも私は悲しかった。悲しいという感情がわからなくなるくらい悲しかった。もう、勾玉に乳の匂い。するすると縄は垂らされ、一応は深海に火山を抱く環太平洋の賢明なる水母と炊飯機の炊き上がる音とは利害関係の県知事に薔薇を遣るから早く退け。
安全な川、
安全な谷の中。(一月の川一月の谷の中/飯田龍太)
蛇が、……(ここで出てくる⁉︎)
彗星だ。
水平だ。
私たち、
陰影だ。Chiaroscuro。
最低だ、檸檬が累々と流れされてゆく。