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【朔 #36】囀の果樹よ

 高校生以来の『古事記』再読は蝸牛(蝸牛やごはん残さず人殺めず/小川軽舟)のような速度。それがいい。いちいち、文字単位で引っかかりながら感嘆するなんて、もう、そうそうない。早くも、葉月を待つ心が、ある。
 舌を挿し込まれて、
 虫鳥の淫らさに花が咲く。
 船戸神(もう、ここから先に来るな──)。
 木を接ぎ、骨を接ぎ、河童の皿を洗ってゆく。墓洗ふ、髪洗ふ、眼を洗ふ。雪下、囀の果樹よ。何モ言フコトハナイ。厩戸王。

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