【朔 #118】面妖な梟
王子動物園。何年振りだったか。須磨海浜水族園が閉園して、動物と親しめる施設はここぐらいになってしまった。
入口すぐのフラミンゴ。これが王子動物園の醍醐味。「オウジに来たな!」という感じがする。記憶にあるもの、ないものを見て回る。
印象的だったのはジャイアントパンダの飼育舎。先般亡くなったタンタンの為に捧げられた花で溢れていた。動物は何も居ない飼育舎に蘭や向日葵などが並べられているのは巨大な喪失感を抱かせる。そんな心の真空状態を幼き日の私が駆け抜けて行った。
さて、今回来園した目的は梟の観察である。停滞している詩篇「腐九楼」の取材。意外にも、王子動物園には鳥類がたくさん飼育されている。旧花鳥園の方が鳥類が多いイメージ。マナヅルやタンチョウ、孔雀、鴨、カンムリヅル、鷲、数種類のインコ、ガチョウ、アヒル、青鷺、ゴイザキ、カモメ等。その中に地味目な梟(名前を忘れた。茶色くて、季語としての梟らしいフクロウ)とシロフクロウ。このシロフクロウが面妖な梟で、暑さからか目を細め、嘴を開けたままあちこちを見回している。それが雄で、残り二匹の雌は簾の陰で身を寄せ合っている。そっちの方が暑いと思うのだが、二台ある扇風機の風がちょうど交叉する枝に雄がいるので、独占していたのかもしれない。私も暑さと虫に耐えて十五分くらい眺めていた。マナヅルの迫力ある声に驚きつつ。収獲は多い。
もう一つの発見。梟や蝙蝠に惹かれるのは自覚していたが、虎にも惹かれているらしい。アムールトラの沈思黙考の構えは神さびて、大陸の神の滴りが聞こえてくるようだった。象とは違う、高潔なる神聖。彼の(猛々しい睾丸を最後に見せて、檻の裏へ引っ込んだのだ)独語をもう少し聞かせてもらいたい。