【朔 #95】弑すべし、釘を知らない
酒臭い接吻を、
たんぽぽの傷んだ茎のように思い、
川、
占い師の足裏から単眼の巨人が囁くか、
真っ赤な紐が垂れている橋に、
筒鳥の心の、
火の記憶よりも早く、
遠ざかる乾癬のかんばせ、
遠ざかる密教のコルク、
葉桜に、
樹としての姿、
桜若葉に、
磊々落々、
きっと世界の深奥には鰻が尾を漂わせて人骨の閊えた肛門を庇っている、
心理が現象の全てを恋に逢着させるなら、
弑すべし、釘を知らない、
御仏の、弑すべし、
(ここまで如実に日常を写し取っているのですよ)
弑すべし、
山の全霊に歯が無い、
祓われた若葉の下を列車はますます冷え、
言下に拒むチョコレート。