GRApPのクラウド型運営と今後のホテル開業について Vol.2
前回の「GRApPのクラウド型運営と今後のホテル開業について Vol.1」(https://www.wantedly.com/companies/akizero/post_articles/330463)では、弊社が民泊やホテル運営を行うにあたり重要視している部分についてお話ししました。
今回は、ホテル開業において非常に重要な「収支提案」において大切なことや、実際のホテル開業や運営についてお話しできればと思います。
ー先ほど収支提案の話がありましたが、やはり受託を獲得するには収支が一番の重要な部分だと思います。その精度についてはどう考えていらっしゃいますか?
今まで出してきた収支提案の中で、想定通りの収益が出ている案件は特にコロナ前だと少なかったですね。到達率で言うとだいたいが8~9割です。この数字はこれまでアップサイドのみでの収益試算をしていたことが理由ですね。
今は、到達率は6割や8割あたりのダウンサイドやスタンダードシナリオの収支を合わせて提示することをベーシックな提案にしていくようにしています。
今では大阪や京都は供給過多になっていますが、そもそも開発段階では読めないことも多いので、あらかじめアップサイド・スタンダード・、ダウンサイドでの試算もしっかり見極めた上で、「いつ依頼を受けるのか」「オープン時期のタイミングをどこにするか」などを提案できるようにしていく必要がありますね。
特にホテル開発だと、このスケジュールの間隔があいてしまうので、情勢の変化などに対応できるような形での収支提案は必要になってくると思います。
ーどうにか案件を獲得するためにアップサイドの収支提案をする会社が多い中、グラップはきちんと現実的な提案をしていくと。
そうですね。今はまさにそこを大事にしていますね。
ホテル投資に夢を持ちながら目標値に向かっていくとはいえ、やはり「投資」なので。
弊社でも読めない部分がある中、投資家さんはもっと読めないので、しっかり現実をお話した中で提案することが大事です。信頼関係の構築と期待値のすり合わせは必ず必要になると思います。
ー期待値のすり合わせの要素として大事なものは何でしょうか?
「現実を知ってもらう」ことですね。
長いところだと数年かけて開発していきますし、その間に情勢が変わることもありますよね。コロナにしてもそうですし。政治などもかなり影響しますので。
いわゆる旅行者については、インバウンドと内包される日本国外全てと日本国内で分けると思うんですが、インバウンドを紐解くと、日本への旅行者というのは、実は韓国を含めた東アジアでニーズのほとんどを占めるんです。特に大阪においては、ですね。
アフリカのどこかと日本で揉め事が起きても特に国内旅行に影響はないと思うんですが、韓国などのニーズの強い国などは、日本への旅行がストップしてしまうと宿泊事業はかなりの打撃を受けてしまうことになる。
オーナーさんなどは他国全てを含めて「インバウンド」と考えるので、韓国一国と揉めたところで日本の旅行に影響はないだろうと考えがちだと思うんですが、実はその一国の影響がかなり大きいといった現実があるので、そこはきちんと理解していただく必要はありますね。
収支提案だけでは伝えきれない部分がありますし、不安定な情勢の国にマーケットシェアが左右されるので、今までの知見をきちんと伝える意味でも、どこがメインのユーザーで今後どこが大事なユーザーなのかも含めた上で、そこに潜むリスクもしっかり説明は必要ですね。
ーなるほど。リアルの共有は大事ですね。
リアルを知ってもらって投資してもらえれば、変動があるボラティリティの強い商材への投資について理解してもらえるので、需要が下がる可能性があることについても理解していただけるので、そういった意味でのすり合わせがとても重要になります。
なので、様々なリスクなど全て考えた上で、事前の予算をしっかり堅実に押さえにいくことが必要になってきますね。
建物開発だと、トラブルが起きた場合の削減対象はやはり運営側の予算なので、「絶対削れないですよ」という部分を明らかに伝える必要があります。
運営まで考えずに開発することも多いと思うのですが、ホテル収支にコミットするための必要な要素なので、確実に理解いただくことが必要になってくる。
そうでないと、何かあったときの全ての責任が運営側にまわってきてしまうのでせっかく受託しても運営が回らなくなります。
そういう意味でも、収支を達成するには必ずここは大事にしないといけないですよというすり合わせが本当に大事で、それを理解いただけない場合はそもそも運営できないことを伝えるようにしています。
ーアドバイザリーの立場としての運営とも言えますね。その点について、今後の立ち位置やすべきことなどについてはどう思われますか?
基本的にはもうリスク含め運営側が気付いたことは全て伝えていくことが必要ですね。それをしっかり資料や提案に落とし込んでいくことが大事です。伝えるべきチェックリストを作ることもすごく重要かと思います。
ー実直に事実を伝えることがすごく重要ですね。あとは、仲介会社さんとも一緒にオーナーさんと物件のお話をしていくこともあると思うんですが、そのあたりどうでしょうか?
今後業務提携をしていく上で、不動産会社や仲介会社のような会社にもちゃんとリスクなどを伝えた上で、オーナーへの提案を行うことが大前提になりますね。やはり営業会社は、現実の部分を知らないことが大半なので。
実際に運営が始まった際に問題があった場合は、ウチのような運営側だけでなく、オーナーが損をしてしまうことになる。
それは一番避けるべきことなので、営業の委託会社にもしっかり現実的な部分を理解いただく必要があります。
お互いにリスクを理解した上で収支を作らないと、いわゆる収益を大きく見積もったイケイケな収支提案をして案件は決まったとしても、結局のところ営業会社は案件が決定すれば運営には関わらないので。
とりあえず案件を取る、ではなく、案件スタート後もうまくいくようにするためにも、営業会社には本来オーナーに言いたくないこともきちっと事実を伝えていただきたいですね。
金額的な部分もそうですし、企業の精神面での損にもなって信頼関係が築けなくなるので、一番大事な部分だと思います。
そこを理解してくれる営業会社と協業したいですね。
ー「信頼営業」が本当に大事だと勉強になりました。一つのチームとして営業側と共有が必要ですね。
はい、本当にチームとしての認識の共有が大事です。
―グラップが運営するにあたり、強みなどはありますか?
あとは、我々が運営するアパートメントホテルについては、ビジネスホテルと同様で評価の軸が明確に決まっているので、その軸を踏まえた上で価格決定するんです。
検索の順位としては、「場所」「価格のレンジ感」「一枚目の写真」というファーストビューで全てが決まるので、このPV数をどれだけ上げるかがコンバージョンにつながります。
なので、「高級感があるかベーシックか」などの見た目の大事さと、アクセスの良さでだいたいが決まるんですよね。あとは、場所は微妙でもホテルが少ない、のようなケースだと、潜在ニーズはあります。
ビジネスホテルの基本的な考え方としては、100室未満のホテルは固定コストの観点から運営はなかなか難しく、運営会社も見つかりずらいため売上が作りづらいんですが、弊社は100室未満でも運営できる強みがあります。
今までは地方戦略としてもなかなか実現できなかった小規模ホテルでも、弊社での運営などを検討いただけるのであれば開発の可能性をご提案できると思っています。
今まで供給はない場所でも、国内出張者の方や意外と近くに観光名所などがあるところなどは、場所としてニーズがあるところも多いので、開発・運営が見込める可能性があるんです。
参入障壁も高いので、そこで当たればかなり強くなります。
分かりやすい都市部にいくよりも、現在弊社が運営している東松戸のホテルのように、周辺に観光施設などがなく宿泊ニーズがないと思われていた場所が実はニーズがあった、という成功事例を作れているので、都心からは離れている場所でも潜在ニーズを掘り起こして運営できるような成功例をどんどん作っていきたいと思っています。
ーなるほど。運営の実績については、やはり「口コミ」が重要だと思いますが、運営において重要視しているポイントはありますか?
そうですね、特にこのコロナ禍でさらに進めていた部分でレビューを良くすることにも通じるんですが、「情報共有の徹底」ですね。
そもそも、無人ホテルだからレビューが低いということはないんですよね。
弊社が運営するアパートメントホテルは基本的に無人チェックインですし、生活できるほぼ全ての設備を整えているので、一般的なホテルと違って物が多いんですよね。
キッチンにも炊飯器や電子レンジなどもありますし、食器やカトラリーも多い。
なので、オペレーターが正しく情報を事前に把握し、何か質問があった場合に的確に答えるという最低限のことをするためには、やはり一番最初の各物件・各部屋の情報を確実に情報共有しておくことはとても重要なので、そこを徹底するようにしています。
ゲストへ提供する情報をきちんと作ることで、そもそも問い合わせコール数を減らすことができますし、「そもそも質問が来ない状態を作る」ことが一番重要だと思っています。
また、問い合わせがきた場合には確実なレスポンスができるように徹底することを重要視していくことが必要かと思います。
このコロナ禍の影響で、今後の旅行も変化していく中、グラップのような無人・省人ホテルは今後も確実にニーズが増えると考えています。そのために、引き続きクラウド型運営の在り方を追求し、業界をリードしていく存在として成長したいと思っています。