SCMについて考える(物流業務編)
SCMはモノを管理することですが、その基礎はまず物流にあると思っています。在庫をどの程度保管するかは、部品や製品の輸送にどのくらいの時間がかかるかにもよると思っているからです。(それだけで決まるわけじゃないけど)
製品の顧客配送はモノを売るための重要な競争力です。極端な話、類似商品があふれている中では早く届けてくれる会社から買おうとか配送無料の所から買おうという結論になることも多いです。物流を契約締結後の単なる「モノ運び」ではなく、重要な販売戦略として、コストとサービスレベルをバランスさせる必要があります。人手不足に陥っている物流現場の現状では、コストとサービスレベルを維持しにくくなってきているのでなおさらですね。
製品の輸送形態は製品と会社のサプライチェーン(工場の場所、販売エリア)によって変わります。製品のサイズや温度(融けるものか)やワレモノかどうか、高額なのかどうかやライフサイクル(生ものは早急に届ける必要がある、など)によって変わりますし、会社のサプライチェーンは特に国内なのか海外なのかによって大きく変わります。国内は地代が高いため工場に在庫を多く持つことができないことと、国土が狭いのでそこまで輸送に時間がかかりません。逆に海外では広大な工場を設けることができ、その工場からの輸送エリアが比べ物にならないほど広いです。そのため、海外では売れる見込みがあるのであれば在庫を多く抱えた方がよいということになりますし、輸送時間の短縮化はマストなのです。このような事情のちがいから海外でうまくいった物流およびSCM戦略をそのまま国内で適用することはできないと思っています。またその逆も然りです。
さて、物流競争においての昨今の戦略は基本的にスピードアップに関するものがほとんどです。顧客満足度をあげるためにスピードをアップさせたいが、いかにコストを抑えながらそれを達成するか、という観点が多いように思えます。もちろんスピードアップは顧客満足度をあげるための重要な要素です。でもそれを達成するために輸送サイクルをあげたり、締め時間を遅くしたり、配達時間を長くしたりするなど人手不足に陥っている原因の一端を作っているように思えるのです。
今日関東では大型台風がやってきています。ヤマトさんからは「明日届ける予定の荷物を届けられなかったらごめんなさい」メールが早々に来ていました。それを見て私は、この荷物って別に台風で大変なんだったら無理して届けてくれなくてもいつでもいいんだけどな・・って思いました。ECサイトでの購入では通常「お急ぎ便」の指定はあっても「急いでないよ便」の指定はありません。ヤマトさんのメールに対して、遅れてもいいよという意思表示をすることはできません。「急いでないよ便」指定ができれば世界はもっと優しくなると思うのです。
顧客満足度をあげるために、顧客が要求していることを企業は収集しています。ですが、顧客にとってどうでもいいと思っていることを企業は収集していません。これまでは顧客ニーズを収集することで他企業より一歩前に出られたかもしれません。ですが、投入できる資源(ヒト、モノ、カネ)には限度があり、特に物流市場においてはその限度に直面していると思うのです。「急いでないよ便」指定ができれば、少なくともその荷物については過度なスピードアップを図ることなく、コストを抑えたり従業員の勤務時間を守ることができるのではないかと思うのです。
これまでのようなひたすらいいもの、無限の顧客満足度を追求していく時代は終わりました。顧客にとってどうでもいいと思っていることのサービスレベルを上げても顧客は何とも思わないし、逆にサービスレベルを下げても特に何とも思わないことがほとんどです。限りある資源をいかに効果的に選択投下していくかに時代は移っていると思います。
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