水母
わたしはテーブルのうえ、料理を食べる選択をする。いや、正確には料理とすらいえない代物やもしれず。ただ、その料理がわたしであると理解していたんだ。
フォークに刺したそれを鼻先に近づけてみると、幽かに青くさい。若い青麦のにおいがする。
それは生まれたにおい。
耳のない猫が言った。
生まれたにおい。それを聞きながらわたしは、躊躇うことなく口へと運ぶ。生きていた、死んでいたより、それはほんとうに生まれたにおいの味がした。
わたしの恍惚に耳のない猫は、満足げに耳のない顔を左前足で撫でる。それを見ながら女は相変わらずと、ひげを爪弾いていた。つづく
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