「国レベルの新しい経済圏をつくる」レディオブック代表・板垣雄吾さんの人類 “やりやら化” 計画
著書『やりたくないことはやらなくていい』(幻冬舎)で世の中に一石を投じた、実業家・板垣雄吾さん。
レディオブック株式会社を起ち上げ、スマホ買取・販売・修理事業をメインに、各種クリエイト事業(HP作成、システム構築、ライティング、デザインなど)を展開。オンラインサロン「やりやらタウン」のオーナーでもあります。
2部構成となる本インタビューの前編では、壮大なロマンを描きつつも、冷静と情熱を器用に行き来しながら語る板垣さんの語る「新しい経済圏」とは何かを伺いました。
【板垣雄吾(いたがき ゆうご)】
1980年2月21日生まれ。大学在学時にバンド「スラッシュ」のメンバーとしてインディーズデビュー(メンバーの脱退などの理由により解散)。大学卒業後、プロの総合格闘家として有明コロシアムでデビュー。引退した後、個人事業主としてECサイト運営を開始。2013年に立ち上げたブランド「iPhone修理のレディオブック」を、2014年に「レディオブック株式会社」として法人化。2015年、iPhone修理ブランド「i+Remaker(アイリメーカー)」としてリブランディング。2019年3月、ビジネス書『やりたくないことはやらなくていい』(幻冬舎)を発刊。同年4月、オンラインサロン「i+Remaker(アイリメーカー)」を開設し、同年8月より「やりやらタウン」に改名。
信用値を可視化した仕事受発注システム「やりやらシステム」
――オンラインサロン「やりやらタウン」は、今年の4月に開設したばかりで200名まで増えていますね。今後もメンバーを増やす予定はあるんですか?
板垣さん:そうですね。ざっくりなんですが、1,000万人くらいまで増やしたいと思っていて。
――1,000万! 膨大な数ですが、何か意図があるんですか?
板垣さん:まあ実際のところ「1,000万人」という具体的な数字を求めているわけではないんですが、要は国ができるくらいの人数にしたいということですね。
人を増やせばその分、事件も起こります。それ、おもろくないですか? ただの何気ない日常よりも、問題が起きたほうがおもしろいと思うんです。
――たしかに、何もないより、何かあったほうが板垣さんにとっても、メンバーにとっても経験値になりますよね。
板垣さん:それもあるし、何より、問題が起きているほうが飽きないので。「うわ、こんな問題が起きちゃったよ!」って、イベントが頻繁にあるほうがヒリヒリしていておもしろいですよね(笑)。
――わかる気もしますが......。そんな “国レベル” の規模を目指した先で、どんなコミュニティを目指しているんですか?
板垣さん:一言で言えば、仕事とお金が回っていく「新しい経済圏」をつくりたいんです。
クラウドソーシング(※)をイメージしてもらうとわかりやすいんですが、言ってみれば、信用値が可視化されたクラウドソーシングサービスをつくっているんです。『やりたくないことはやらなくていい』という僕の著書から取って「やりやらシステム」と呼んでいます。
※クラウドソーシング:インターネットを通して不特定多数のクラウド(群衆)に仕事を依頼できる業務受発注サービス。
板垣さん:これまでのクラウドソーシングサービスって、インターネット上で、互いに顔も知らなければ声も聞いたことのないような、見ず知らずの誰かと仕事のやり取りだけをしているような状態だったんですよね。
でも、オンラインサロン内なら近い距離感でやり取りができます。経歴や実績だけじゃなくて、人となりや共通の知り合いからの評判なんかも窺い知ることができる。受発注に不安があればビデオチャットをするなり、不安を取り除くアクションも取れる。
インターネット上では広すぎて個人の情報が捉えにくいのに対し、オンラインサロンという閉じた空間であればこそ、信用が数値として可視化されるわけです。
――なるほど。信用を担保できると。
板垣さん:まさに。しかも、オンラインサロンなので、自分の仕事の枠を超えていろいろなプロジェクトが動きます。それに飛び込んだり観察したりして楽しみながら仕事をしてほしいと思っています。
仕事は最高のエンタメ
板垣さん:仕事を回すと言っても、会社のようにはしたくありません。それは労働とも違います。
――どういうことですか?
板垣さん:僕のなかで “仕事” と “労働” は定義が違うんです。
まず、労働とは、「やらなきゃいけないこと」をやっていることだと捉えています。
たとえば、ご飯を食べたあとに食器を洗いますよね。それは、汚れた食器を放置しておきたくなくて “洗わなきゃいけないから” 洗うわけです。だから、たとえ誰かに命じられたわけじゃなくても「やらなきゃいけないこと」をやっているので労働です。
では、“仕事” とは何かというと、自分のやりがいを持って物事をつくり、社会的な価値を生み出すことです。
――「能動的にやっているかどうか」に大きな違いがあるわけですね。
板垣さん:そういうことですね。仕事って最高のエンタメじゃないですか。それをみんなで楽しめるような仕組みをつくりたいんですよね。
――「仕事は最高のエンタメ」......! 本当にそのとおりだと思います。
板垣さん:でも、まだまだ “仕事” ではなく “労働” をしている人が大半だと思うんですよ。もちろん、僕もそうだったんですけど、その違いに気づいてからは仕事がどんどんおもしろくなりました。
そんな “仕事” をしようと挑戦する人たちに優しいコミュニティにしたくて、値段設定は月額1,000円にしています。挑戦をする各人に、それぞれのタイミングがある。それが来たらすぐに動き出せて、仕事がどんどん回っていくような仕組みづくりを整えているところです。
――ワクワクしてきますね。「やりやらシステム」はいつごろ完成する予定なんですか?
板垣さん:着々と進んでいて、今年の12月に完成予定です。
――もう完成間近ですね! これ、利用するだけでなく、仕組みをつくったり運営していく側もおもしろいでしょうね。
板垣さん:むしろ、それもおもしろいと思いますね。
仕事とお金が巡るオンラインサロン
――仕事を回すということは、メンバー間で「お金」も回っていくということですよね。これまでのオンラインサロンでは、メンバー同士でお金が回るという事例はあまり聞いたことがありません。
板垣さん:たしかにそうですね。でもそれってべつに特別なことじゃないと思うんですよね。
「オンラインサロン」という仕組みができてからまだ数年しか経っていないなかで、堀江貴文さんの「HIU」とかキングコング西野さんの「西野エンタメ研究所」とか、いわば創世期のサロンがどんどん常識をつくっていきました。その1つが「お金のやり取りがない」ということ。でも、言ってみればそれが常識だと思い込んでいるから新しく見えるだけなんですよ。
たとえば、会社で社長が「うちの会社は社員みんなにお金を払います!」って言ったところで、「当たり前だろ」ってなりますよね。要は、仕事とお金を回す場所を “オンラインサロン” にしただけなので、それで新しく見えるんです。
つまり、僕から見れば「オンラインサロンでは金銭のやり取りがない」というのが常識になったおかげで、なんか革命を起こしているみたいになっているだけですね。
――なるほど。たしかに、僕自身もオンラインサロンの概念に馴染みがあるために新しく見えるわけですね。そうじゃない人から見れば、当たり前なのかもしれません。
やりたくないことは、やりたい人に振れ
――サロン内では誰でも自由に仕事の受発注ができるんですか?
板垣さん:もちろん自由にできます。そこは「やりやら」です。つまり、やりたくないことはやらなくていい。自分のやりたくないことは誰かのやりたいことだから、任せればいいんです。
たとえば、仮にですが、金藤さんが「書いた記事をサロン内でコンテンツ化したい」と思っているとしますね。そこで、ライティングと写真撮影と企画はできるけど、WordPressの編集は嫌いだったとするじゃないですか。でも、WordPressをいじるのがうまい人ってサロン内にきっとたくさんいるはずなので、その人に振ればいいんです。自分の嫌いなことが好きな人、得意な人がいるはずなんです。
そうすると、自分のやりたいことだけをやれるからテンションも上がるし、パフォーマンスも上がる。それだけじゃなく、相手もやりたいことをやれるんです。ここが重要です。それに加えて、何かしらのフィーがもらえるとなれば、きっと嬉しいですよね。
もしも、自分がやりたくないことを、同じくやりたくないと思っている人に振ったとしたら、それは押し付けているだけで誰もおもしろくない。だから、自分が嫌いなことが好きな人を探すんです。どこかに必ずいます。
それが見つかれば、自分にとって嫌でストレスでしかなかったことが、相手に「ありがとう!」と言われるようなものに変わる。こんな最高なことないでしょ。
――まさしくWin-Winな経済圏ですね。会社ではなかなかそんな環境は整えられないと思います。
板垣さん:会社じゃなくても、昔ならたぶんこの仕組みを構築するのは無理だったと思います。なぜなら昭和40~50年頃は、まだ “労働” と “仕事” を切り分けて考えることができなかったからです。でも、いまは労働がAIに成り代わられています。AIによって労働がどんどん削ぎ落とされていき、これからは労働はいらなくなる。
そうなると、AIに奪われていく労働をし続ける人たち、もしくはそれしかできない人たちは路頭に迷う。実際、そういう人はかなり大勢いると思うんですね。
しかし、「このままじゃだめだ」と思っているはず。僕自身もそういう人間だったからわかるんです。そんな人たちがこのサロンに入って、やりたいことを見つけていってほしいんです。
気づきを得るのは他の場所でもいい。箕輪さんや西野さんの本を読んで「あ、このままじゃヤバイ」と気づいたときに、「じゃあどうするか」を考え直すきっかけになる。「やりやらタウン」がそんな場所になればいいなと思っています。
リアルとバーチャルを連動させた経済空間「デジタルタウン」構想
――信用値の可視化された仕事受発注サービス「やりやらシステム」。楽しみですね。
板垣さん:でも実は「やりやらシステム」っていうのは、最終的な目的である「経済圏をつくる」っていうパーツの1つでしかないんですよね。実はいま、サロン内でめちゃくちゃおもしろい取り組みをしていて。
――いまの「やりやらシステム」が板垣さんの目指す新しい経済圏ではないんですか?
板垣さん:これはその一部に過ぎないんです。いまはさらに進んでいて、リアルとデジタルを連動させた「デジタルタウン」という経済システムを構築しようとしています。
――何ですかそれ......! めちゃくちゃ気になります...!
板垣さん:昔、ファミコンで流行った『MOTHER』(任天堂)っていうゲーム知ってます?
――やったことないですけど知ってます。ネスが出てくるやつ......。
板垣さん:そうそう。あのドット絵の街並みをイメージしてもらいたいんです。
▲画像引用元:MOTHER(任天堂)
▲画像引用元:MOTHER2(任天堂)
板垣さん:あんなふうに空から見た街のなかに自分のキャラクターがいるわけですよ。
たとえば金藤さんがデジタル上に架空の住所を持っていて、やりやらタウン1-1-1のやりやらマンション、略して「やりマン」102号室に住んでいるとするじゃないですか。
――はい(笑)。
板垣さん:その部屋から、やりやらタウンのなかにあるお店にオーダーをかけると実際にモノが届きます。
――あ、UberEatsとかAmazonみたいな。
板垣さん:そう。でも、これだけならまさにUberEatsやAmazonと変わらないですよね。
デジタルタウンは、いわばリアルな世界にゲーム性を持たせた経済空間なんです。
Uber EatsやAmazonのようなサービスって、自分が注文してお金を払ったら指定した住所に商品が届くという、「個人対企業」だけのつながりしかありません。
「デジタルタウン」では他のユーザーもキャラクターのように動いています。そこで商品を買えば現実の自宅に届くのはもちろんのこと、会話もできるし、仕事もできる。稼いだお金は実際の口座に振り込まれる。売りたい商品があれば写真だけ撮って送れば、商品を発送するよりも先にお金が振り込まれる仕組みなんかもつくります。
カジノや銀行もあるし、ハローワークに行けばそこで仕事の受発注ができる。デジタルタウンのなかで車や自転車を持っていれば他の町のお店にも行けます。
――なるほど。インターネット上では検索ボックスでお店を検索したり、お店のサイトを探さなきゃいけなかったりするけど、デジタルタウンではまさにゲームのようにキャラクターを動かすことで経済生活がまるまる行なえてしまうと。
板垣さん:そういうことです。現存するサービスで言えば、UberEatsで商品を注文すると画面にマップが表示されて、バイクとか自転車に乗った配達員が商品を家まで届けようとしてるのが見えるじゃないですか。あんなことがあらゆる商品、あらゆる店舗で可能になるんです。
つまり、ゲーム上で衣食住がすべて賄えるようなサービスです。
――まさに国レベルの経済圏。すごい壮大な構想ですが、もし実現したら引きこもってしまう人も増えるんじゃないでしょうか......(笑)。
板垣さん:経済活動はデジタルで行なっていても、すべてが現実の話。リアルで会うのは “人” なわけです。そこで仕事もモノもサービスも生まれていくので、「引きこもってゲーム」みたいな感覚ではないんですよ。
――めちゃくちゃでかいプロジェクトですね......。イメージが次々に湧いてきてワクワクします......! ちなみに、これって――。
板垣さん:まあ、「やりやらタウン」ではこんなプロジェクトを実現するために本気で動いているので、あとは実際に入って見てみるのがいいと思いますね(笑)。いまは信じられないかもしれませんが、話を聞いているだけよりも、見たことのない世界を一緒につくるほうが100万倍楽しいし、仲間が増えることは僕らもみんな大歓迎です。
――こ、これはとてつもなく大きなチャンスですね......!
前編はここまで! 後編では板垣雄吾さんの「仕事観」を大いに語っていただいています。ぜひご覧ください!
▼後編のインタビューはこちら
「人の基本は三方よし」現代の近江商人・板垣雄吾が語る、打率100%の人脈構築法
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バナーデザイン:松儀愛侑(まつぎ あゆ)
撮影、グラフィックレポート(後編に掲載):でらみ
ライター:金藤 良秀(かねふじ よしひで)