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金属をカンナのように削る『プレーナー加工』とは

切削加工の技術広場　キンタン

◆プレーナー加工とは

金属加工の世界は奥深く、様々な加工技術が存在しますが『プレーナー加工』というものをご存知でしょうか。
恥ずかしながら私は展示会で出会うまで知りませんでした。

プレーナー加工とは、一般的な回転工具とは違い、木材のカンナがけのように真っ直ぐ金属を削って平面や溝を作り出す加工方法、といえばイメージしやすいでしょうか。
とはいえ想像してみて下さい、数メートルの長さの金属を均一にカンナのように削るところを。数メートルですよ。
わかりました。平面はいけるとしましょう。門型のフライスもありますしね。
では、V溝はどうですか。そのV溝を数メートルにわたって削って作り出します。工業部品なのでそのV溝にピタッとハマる部品が存在します。
厚さ２mmの薄いアルミだったらどうですか。
一般的に「切削熱」は通常600〜1000℃に達し、高温になることで金属が曲がったりひずみを起こしやすくなります。
切削熱で歪んだり曲がったりする薄さ２mmの板厚ですよ。
はい、これらのことがプレーナー加工だとできるんです！
なんと6ｍの長さを±0.1の精度でプレーナー加工を行う技術を有する会社が埼玉県にあります。

埼玉プレーナー工業所

埼玉県川口市に拠点を構える『埼玉プレーナー工業所』は、創業以来60年以上にわたり「門型プレーナー」を設備し、高精度な「プレーナー加工」を通じて日本のモノづくりを支え続けている企業です。
今回、取材をさせていただきました。

プレーナー加工のメリットとは

プレーナー加工のメリットはフライス加工と比べるとわかりやすいです。
先ほども書きましたが一般的に回転工具などでは「切削熱」は通常600〜1000℃に達し、高温になることで金属が曲がってきたりひずみを起こしやすくなります。
プレーナー加工はゆっくりとカンナのように削るため「切削熱」を抑えることができます。そのため素材に無理なチカラがかからず、反り、曲がりなどを最小限に抑え、「経年変化に強い製品をつくれる」というのが他にない最大の利点になります。
鈴木社長からその必要性が伝わるおもしろいエピソードを聞かせていただきました。

40年間メンテナンスフリーの加工

鈴木社長「ある電力プラントからこんな依頼が来ました。”40年間メンテナンスフリーのレールを制作して欲しい”と。そのレールがある箇所は一度可動を始めるとひとの手が届かなくなるため、メンテナンスができない。しかもそのレールを走る部品は緊急時に約１２秒でそこを通過しなければならない。レールの精度が最も重要になってくる。」

高い精度を40年間維持できる技術を探してプレーナー加工を営む埼玉プレーナー工業所を訪ねてきたそうです。

鈴木社長「金属は強いチカラと切削熱で応力が残留しちゃうんです。つまり削りたてはしばらく平面精度を保っていても時間と共に中に残留していた応力がはたらいて歪んだり、曲がったりするんです」

金属応力は非常に重要な要素であり、その影響は製品の性能や寿命に直接関わります。
その加工には適切な工具と治具選定を行い、高度な技術と知識が求められます。これらの対策により残留応力や加工中のひずみを最小限に抑えることが可能となります。

プレーナー加工は加工後の歪みや反りを大幅に抑えることができるため、特に長尺ワークや難削材、大物プレートの加工において、その効果が顕著に現れます。例えば、ステンレスやチタンなどの硬度が高い材料はより残留応力が働きますが、プレーナー加工を用いることで、内部に応力を溜めることなく、経年変化に強く精度を維持した仕上がりを実現できます。この特性は製品の品質を向上させるだけでなく、研磨などの後工程での手間を軽減することにも寄与します。

アルミなどの薄物素材にも効果は発揮します。
厚さ２mmの板も±0.1の精度で削ります。
カンナのように削るので、リンゴの皮剥きのように削った鉄くずが熱を放出してくれるのです。

プレーナー加工は、大きく分けて「平削り」「形削り」「立て削り」の３種類に分類されます。

平削り: ワークの表面を平らに削る加工。

形削り: ワークに溝や段差などの形状を付ける加工。

立て削り: ワークの側面を垂直に削る加工。

※ワークとは加工の対象となる材料を指します「ワークピース」や「被削材」とも呼びます。

工具はなんと自作

高い精度が求められるプレーナー加工において、工具である切削バイト（bits）の選択は加工精度を左右する重要な要素となります。
しかもプレーナー加工の技術者は、なんとこの切削バイトを自分で削って制作するところから始めるのです。
プレーナー加工は、機械の使い方を覚えるだけではできない加工なのです。
適する刃物を選定する知識を持ち、そのうえ自ら切削バイトを制作する技術がなければ、高い精度の加工ができないなんて、驚きませんか。
見て下さい！この工具から湧き出る ”できるヤツら” 感を

使い込んだ道具が放つオーラってありますよね

プレーナー加工のカッコイイところ出てますよね！
プレーナー加工職人の中里さんが、実際に切削バイトを削って制作するところを見せてもらいました。
次の記事では職人中里さんのシビれる技術を紹介します！

《参考資料》
・切削加工で「ひずみ」が発生する原因とは？材料の特性や対策ポイントも｜宮脇鋼管株式会社
・残留応力の話｜株式会社山本金属製作所
・プレーナー加工とは｜埼玉プレーナー工業所
・有限会社埼玉プレーナー工業所 「プレーナー加工技術」～曲がり・反り・歪みを格段に少なく
・金属の反り・歪み（ひずみ）の原因｜湯本電機株式会社
・プレーナー加工｜リョーユウ工業㈱
・バイトのすくい角と逃げ角｜中川バイト製作所
・すくい角とは｜キーエンス
・すくい角｜再研磨.COM
・三和製作所カタログ
・ロウ付けバイトのメリットとは？｜㈱ビット

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