映画『オールド』感想

『オールド』という映画を観た。

製薬会社が秘密裏に行っている治験のために、異常な速さで時が進むビーチに閉じ込められた人々を描く。

急速な時間経過によって様々な現象が起きるのだが、老化や子供の成長といった加齢に関する要素に加え、傷が一瞬で治ったり、腫瘍が肥大したり、バリエーション豊かで気味が悪い。
なかでも、6歳の子供が数時間で青年になり、同じく数時間で成長した少女と恋に落ちて妊娠させ、人々の前に笑顔で現れるシーンは気持ち悪さの頂点だろう。セックスが発明された瞬間。最悪のアダムとイヴである。少女は出産するのだが、新生児は急激な老化に耐えられず死亡する。

こういった嫌な描写のオンパレードな本作だが、ストーリーは明確でテンポが良く、最後に生き残った主人公姉弟がビーチからの脱出に成功、製薬会社の治験を告発するという結末まで一直線に進んでいく。
危険な環境に取り残されるというシチュエーションの映画では、疑心暗鬼になった人々が争い始め、展開がストップする例が多いが、本作は錯乱した人物を蚊帳の外に追い出して話を進めるというパワープレイを見せてくれるので、最後までダレずに鑑賞できた。
時間の経過という主題に焦点を絞り、なぜ時間が速く進むのかという疑問もあっさり解決させて片付けてしまう思い切りの良さは本作の展開の大きな特徴だ。
離婚寸前だった主人公の両親が老人になり、物語の終盤、二人並んで海を眺めながら死んでいくシーンは本作のハイライトだ。夫は妻に対して言おうとしていたことがあるが、後回しにしているうちに老いて忘れたまま死ぬ。残された時間は少なく、後回しにしたことはそのうち忘れる。『オールド』は、そんな映画だ。

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