映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』を男性不妊の男が観てきた感想
これでもかってぐらい大号泣した。
てか後半はほぼ泣いてた。
映画館って椅子にもたれて観るわけですから体が後ろに傾いています。
そうすると涙はまっすぐ頬をつたわずに耳の下を通って首筋の後ろを通って背中に落ちていくんですね。背中に汗をかいていると思うぐらい泣きました。
おっさんになると涙もろくなるので映画でちょい泣きするのは多々あるけど、号泣したのなんて「トイストーリー3」以来。
なんでこんなに泣いたかというと私自身が男性不妊だからです。
自分の気持ちと主人公の気持ちが一致するとこんなにも泣けてくるんですね。それぐらい主演の松重豊さんにシンクロして観ていました。
映画を観る前に原作も読んでいたんですが、松重豊さんだと年齢が上すぎてさすがに配役を間違ってるだろうと思ってたんですよね。
50で子作りなんて、そりゃー男性不妊も発覚しますよ。
実際の男性不妊は35歳を超えたあたりから症状がでてきます。
こっちは40で悩んでるのにリアリティー無いやん!というのが観る前の感想。
とはいえ男性はいくつになっても子供を作れるというのが常識のなか、実際は加齢によって精子が減退するということを周知させるにはいい映画だったと思います。
なによりも、男性不妊に悩んでいる男の気持ちがしっかり反映できていて、夫婦の心合わせがとても大事だと感じるハートフルな映画でした。
劇中でも描かれていましたが、男性の検査というと、精液検査ぐらいしかありません。
ぴゅっと出して検査して、多いか少ないか、動いているか動いていないかぐらいか調べるぐらい。悲しいかなそれ以外やることがないんです。
大切な奥さんが何種類もの検査をして、毎日基礎体温を測り、仕事の合間をぬって病院に通い、痛い思いをして、自分の体に子供が宿るように祈りを捧げていても男性は何もできることがないんです。
検査方法は精子を出すだけ。
精子の状態はわかっても、悪い原因がわからない。
数値をあげる具体的な方法も確立されていません。
しかもパートナーにばかり苦労をかける。
あがきたくても適切なあがき方がわからない希望の無さたるや。。。
パートナーに依存するしか無い無力さたるや。。。
本作品のメインコピーにもなっていますが、
「やれることは、全部やる!」
男性にとってそれしか方法が無いんです。
運動量を増やし、酒を控え、サウナを控え、ザクロの写真を壁に貼り、桃缶を食べ、妊婦が握ったおにぎりを食べる。
科学的に提唱されているものから、本当か嘘かわからない都市伝説も含めて全部試すしか男性に残された道はないんです。
そんな苦労を何年もかけておこない、何度も心が折れながらも、夫婦の心を一つにして一つの命を宿すために日々を過ごす。
何年も不妊治療を続けて諦める夫婦もいれば、さくっと子供ができる夫婦もいます。現実はとても残酷でですが、そこに向き合う間に夫婦の絆が強まっていくんでしょうね。
男性はあまり男性不妊の検査に行きたくないと言いますが不妊の半分は男性が原因です。
この映画を観て、男性不妊が一般認知されて前向きに不妊治療を進める夫婦が増えてもらいたいものです。