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さよならは全力で

華やかな袴を着た学生達を見て、
綺麗だな〜と心躍る一方で、

春は別れの季節である事を思い出す。

別れにも色々なものがあるけれど、
私は別れというと アキさん を思い出す。

アキさんは私が大学生の頃、三重県に農業体験に行っていた時に同じ農園に研修に来ていたお兄さんだ。

多分その頃で30前半くらいだったんじゃないかと思う。

アキさんは3人暮らしで、
愛する奥さんとの間に幼い女の子がいた。

アキさんはどんなに小さくても、少しでも、
美味しいものは必ずお家へ持って帰る。

美味しい栗きんとんを農園のみんなで頂いた時なんかも、小さな小さな栗きんとんを少しだけかじって うんめ〜!! と叫んだあと、すぐにまた包にくるんで、 嫁と子供に食わせよ〜♪ と言ってポケットにしまった。

採れた野菜を分け合いっこしている時、アキさんにはお子さんがいるからねっと少しだけ多く野菜を入れてあげただけで、アキさんは目をキラッキラさせながらとっても喜んでくれた。

アキさんは分からないことがあると それ知りません!何ですか? ととっても率直に聞く。

アキさんは昔、今の奥さんと世界を周り、オーストラリアでお金が尽きて、農園でバイトしながら日本へ帰るためのお金を貯めた思い出をとっても楽しそうに話す。

私はアキさんといると何故だかいつも清々しい気持ちになった。優しい気持ちにもなった。


農業体験最後の日、

私はアキさんにさよならを言った。

アキさんは軽トラの窓を開けて、
元氣にやれよ〜またな〜! と何度も言った。

大きな声で何度も何度も言うもんだから、

こっちは恥ずかしくなって、

恥ずかしいからもういいですよ〜 と言ったら

アキさんは、

だめだめ、おれ、さよならは全力でやるタイプだから

と言った。

全力でやるタイプって何???笑

と思ったけれど、

最後まで手を大きく振りながら、
またな〜〜〜!!!
と言って去っていったアキさんとのお別れが

なんだかとっても嬉しくて、なんだかとっても楽しかった。

だから私も今では、
さよならはなるべく全力でやるようにしている。

しっかり手を振って、
またね〜!!っと笑顔で言う。

ちょっと恥ずかしい時もあるけれど、
そうすると清々しくお別れして、
お互いの道を進めるきがする。

進むための勇気が湧いてくるきがする。

奈良県の村で、農泊を始めたいと言っていたアキさん。今はどうしているだろう。

またな〜!のその日を楽しみに、
今日も自分の道を進む。

だからやっぱり、さよならは全力で。

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