『ニッポン国古屋敷村』
★小川紳介『ニッポン国古屋敷村』(1982/小川プロダクション)@アテネフランセ文化センター
前半、古屋敷村における稲の生育について科学映画さながらの描写が続き、「何だろうこれは」と興味深く思いながらも気を失ったりもしたけれど、花屋さんが登場すると俄然画面が活気づくのだった(あくまで主観的なものだが)。この花屋さん、キャラが立っていて見ていてあきない。その話し言葉は字幕が無いとわからないのだけど、それが魅力でもあるかのような。「えーおなご」の話とかあまりに突拍子もない文句に笑ってしまう。この人を見ていて私は母方の祖母を思っていた。似ている、場所も遠いことはないし。いまひとりの花屋(ちう)さん、この人は私の父方の祖母に似ているのだった。出征した息子二人を失い、その死亡通知証を出して見せ、作家は当時の気持とか突っ込んだ質問を浴びせる。(記録映画作家というのは、そのくらいの気概なければならないのかもしれないが)私の父方の祖父は戦死していて、父は祖母より先に亡くなっているので、ちうさんと祖母が、顔や仕草まで似ているように思えてくるのだった。誰かが、『三里塚』の第二砦の人々?を見ていて、途中でスクリーンと現実の境目がなくなるような、自分も映画の出来事のなかにいるような不思議な感覚があったと言っていたように記憶してるのだけど、映画とは多かれ少なかれ、誰かの体験や人生を共有し、それがまさにまぎれもない自分の体験として生き直されるものなのかもしれない。フィクションでもドキュメンタリーでも。それで自分は変わるのだろうか?
(2004/2/25)