木の実横丁

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  • 絵日記

    2020年6月〜絵日記をまとめています

最近の記事

何か大きなもの

若いころに憧れた人たちの訃報を聞くことが増えた。そういう年齢になった。 高校生のとき、電車で1時間+バスに乗って通った中古レコード店でオムニバスのサントラ盤を見つけた。バート・バカラックとの最初の出会いだった。 大学生になってひとり暮らしをはじめて、渋谷のレコード店によく行くようになった。 ソフトロックを知って、ほかの名盤とともにバカラックを聴いた。 当時ウォークマンで聴くMDをつくったら、かならず何曲かは入れていたはずだ。 2008年2月の国際フォーラムの来日公演に行

    • お元気ですか

      以前から妹さんのなかしましほさんのことを知っていたのだけれど、ニットデザイナーの三國万里子さんを知ったのはわりと最近のことだった。 おふたりが同郷で中学の先輩だと知ったのはもっと最近で、おどろいた。いくつかの点と点が線になった感覚がした。 9月に出た三國さんのはじめてのエッセイ集『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』(新潮社)が気になっていて、読む前に、高橋源一郎さんのラジオにゲスト出演されたのを聴いた。 高橋さんが内容を紹介する際に発した固有名詞に耳を疑った。

      • なんてことない2、3のふしぎ

        ふしぎだけど人に聞かせるほどの話ではなく、おもしろいエピソードでもないけれど、備忘録的に書いておこうと思う出来事。 ①この夏、長年勤務した職場を離れることになった。同時に、長年通った街にも通うことはなくなる。 最後の出勤日、職場前の赤いポストの上に置かれた見慣れた物体を目の端にとらえた。 私がいつも使っている折りたたみの日傘が、折りたたまれた状態で置いてある。そして、同時に私はいま、その傘を差している。 その傘はサンリオキャラのプリントが施してありファンシーだが地味な色のも

        • いっちゃんのこと

          愛猫いっちゃんが、7月14日満月の日、虹の橋を渡った。 扁平上皮がんがわかってから、約ひと月半。 病気の進行がはやく、毎日めまぐるしく変化する体調のなか、安心して楽に過ごせるようにと試行錯誤しながら、周囲の方々のご協力を得て、一緒に過ごせた時間は、やはりしあわせだったと思う。 もう長くはないとわかってからは悲しみに暮れてしまい、心配させてしまったかもしれないけれど、彼女は気丈に、最期まですべてのタイミングをはかって、段取りを采配して、それはみごとでエレガントだった。 旅立

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        • 絵日記
          43本

        記事

          「心白」を観に行く

          初めて行く劇場「せんがわ劇場」(調布市)へほろびての舞台を観に行った。 安藤忠雄設計の建物が立ち並ぶこの通り、安藤ストリートと呼ばれているとのこと。 「心白」(こはく)。 突然奪われたり失われることと現実が隣り合わせであること、ほろびての舞台で今まででいちばん舞台と観客席、さらには世界中が地続きであることを思い、「私たちの」物語だと感じられる。 それでも希望はある。 劇中、終盤にホール内に携帯電話の呼び出し音(「世界に一つだけの花」)が鳴り響いた。なかなか鳴り止まず、これは

          「心白」を観に行く

          ホットミルクの味

          先日、TBSラジオ「日曜天国」を流していたら、ラジオネーム「やぶからスティック」と聞こえてきた。 ルー大柴がトゥギャザーしていたその音声はアデランスのCMなのだと、あるエッセイで触れられていたのを読み、後になって思い当たった。 そのくらい、「アデランス」という固有名詞を忘れ去っていた近年だったのだが、アデランスと聞けばすぐに記憶のふたが開く。 通っていた小学校の至近にアデランスの工場があった。 小学生時分社会科見学に行ったのだろう、みんなで応接間のような部屋に通され、砂糖入

          ホットミルクの味

          絵日記本『プレイタイム』お取り扱いくださるお店のご紹介

          拙絵日記本『プレイタイム』、4月10日「日記祭」で無事店頭に並べることができました。お手にとってくださった方に感謝申し上げます💐 このたび、下北沢の日記屋 月日のほか、お取り扱いくださるお店が増えました。 谷中のひるねこBOOKSさん。ねこ好きとしてもマーマーマガジン読者としても、置いてくださること、うれしいかぎりです。 通販もしてくださっています。 西荻窪の本屋ロカンタンさん。日記本が並ぶ棚に陳列していただきました。店主さんによる選書、映画関係古書も興味が尽きません。

          絵日記本『プレイタイム』お取り扱いくださるお店のご紹介

          絵日記本を出します

          2020年はじめころの日記に加えて、2020年4月から2021年までほぼ毎日つけ続けた日記と、コロナ禍に家で過ごす時間に愛猫を描いた絵日記をまとめたリトルプレスをつくりました。 4月10日(日)下北沢 日記屋 月日のイベント「日記祭」に合わせて制作していましたが、間に合ってほっとしています・・・ 2020年以降、仕事も人間関係も変化していって、初めての経験ばかりだった日々。日記を書くことはよりどころでしたし、自分を知る手がかりになっていました。絵を描く楽しさを思い出せたこ

          絵日記本を出します

          『ツボちゃんの話』

          佐久間文子『ツボちゃんの話』(新潮社)を読んだ。 とめどない佐久間さんの『ツボちゃんの話』の、ほんの少しの部分を聞いた、という感じがする。 人には複数の、さまざまな側面がある。本人以外には知り得ない履歴がある。 当然のことなのに、ふだんそのことを忘れて平気でいる。 神保町で、坪内さんを三省堂の前あたりで見かけたことがあったかしらと思う。あるいは、写真や名前を見かけることが多すぎて、そう思っていただけかもしれない。 そんなことがあったからか、勝手にも、どこかしら身近な存在

          『ツボちゃんの話』

          『逃げた女』

          ホン・サンス『逃げた女』(2019) 77分という良い尺。主人公を演じるキム・ミニは『お嬢さん』の絢爛な役が印象的だったけれど、ホン・サンスとの仕事は現代の女性を等身大で表現しているだろうか。 わりとわいわいおしゃべりしながら、一方で静かに内観するような映画。 長まわしの会話シーンが多く、シーンによってはズームアップとズームバックでおおげさにいえば監督の強引さを感じる、ぎょっとしたりもするのだけど、そこがおもしろいのかもしれない。 猫が登場するシーンで、人がいなくなったあと猫

          『逃げた女』

          近いようで遠い

          店内で流れていた「エイリアンズ」を耳にした若い女性が言った。 「入った店で自分の好きな曲かかててってるのえもいー。エリンギだっけ?」 結論が出ないまま2人組女性客は店を出ていった。 自分自身の場合、なんの気なしに入ったお店で好きな曲がかかっているとテンションがあがるのはたしかだ。 けれど最近になって、店にいて自分の好きな曲を流し続けていると、体感としてはすこし疲れるようになった。 なんのひっかかりもなく心地よく流れる音楽というのもすばらしいと思うようになった。ときには生活音

          近いようで遠い