『逃げた女』
ホン・サンス『逃げた女』(2019)
77分という良い尺。主人公を演じるキム・ミニは『お嬢さん』の絢爛な役が印象的だったけれど、ホン・サンスとの仕事は現代の女性を等身大で表現しているだろうか。
わりとわいわいおしゃべりしながら、一方で静かに内観するような映画。
長まわしの会話シーンが多く、シーンによってはズームアップとズームバックでおおげさにいえば監督の強引さを感じる、ぎょっとしたりもするのだけど、そこがおもしろいのかもしれない。
猫が登場するシーンで、人がいなくなったあと猫にズームアップし、最後まで演技しきった猫さんがみごとだった。
力をふるおうとしてくる男性と対峙する会話シーンも印象的だけど、男性はいつも後ろ姿でほとんど顔が見えない。勝手な(理不尽な)男性的な力に対して、連帯して立ち向かう、やりくりするというような構図を感じ、主人公の夫は登場しないけれど、主人公の口伝てに、主人公が嫌がっているわけではないにしろ、いっしょにいることをしいているような想像もできる。
みんなよくしゃべるのだけど、ここでも、人は言葉ではうそがつけるけれど行動はうそがつけない(人の本心は行動にあらわれる)という現実の仕組み、真理が主人公の行動にあらわれているようである。
女性たちが男性について語る。それはネガティブな側面が目立つようで、だんだんと主人公の、単純にいい・わるいでははかれない感情のゆらぎが伝わってくるようだった。
キム・ミニがホン・サンスの関係性が長くなるにつれ、作品への影響もあるのかなと想像してまう。
キム・ミニがモノトーンでどちらかというとマスキュリンな格好をしているのですが抑制を感じさせるような。似合う人はいいですね。制服っぽい格好が好き。