見出し画像

先週のkinologue【1/13-19】

年明け2週目は飛ばして3週目より。それも先週のことだし、もう火曜だし。2週目はCINEMA連載の締切前にバタバタと試写に行く日々。年末からテーマは決めていて、いつものように決め打ちで書く予定にしていた映画が観るとどうも違った。映画としては悪くないけど、読者にアピールできるものがなかった。締切数日前で焦ったが、試写に行った2本で書ける見通しが立ち、今回も何とか間に合った!入稿した日は授業が2本あり、その準備もあって、ふぅ。先週は誕生日祝いを2回して貰い、頑張った甲斐があったというもの。ありがたや。

先週末のミニシアターランキング1位に。公開してから客足がジリジリ伸びているのはすごい。

久しぶりのシネマリン。八幡さんにも久しぶりにご挨拶を。1本目は『小学校〜それは小さな社会〜』。年末年始にタイムラインで感想が続々とアップされていたから、早く観に行かねばと思っていた。フィンランドが製作に入っているので、去年ヘルシンキに行ったときにも話題に上った。コロナ禍の世田谷区の小学校、生徒と先生の1年間の記録。自分が小学生だった頃から変わらないこと(運動会の歌とか昭和のまま!)と、ものすごく変わったことが入り混じり、実際に子どもがいないと知らない、いまの小学校の世界。世田谷区というのは日本の中でも特殊な気がするけど。1年の間の生徒の成長と先生の努力、小学校という社会の形成過程には誰もがキュンと思い出すことがあり、ドキュメンタリーのドラマとして面白いところはあった。平日の夕方でも幅広い客層でぎっしり入っていて、みんなどんな気持ちで観ているのだろうか。ビジュアルやコピーは「THE MAKING OF JAPANESE」や「あなたはいつどうやって日本人になったのか?」とある。これは日本人にとって「発見」となるのか、"教育大国"フィンランドに「発見」して貰って誇らしさを感じるのか。いずれにしても違和感あり。フィンランド語のタイトルは『日本の学校』で、キャッチコピーは「愛のある躾」(ってなに?)。実際にこの小学校をフィンランドの高校生が見学に来たらしい。

個人主義なフィンランドの教育が、きっと今まで見向きもしなかった日本の集団主義的教育から何かを学ぼうとしているのか、「発見」しようとしていることは興味深い。フィンランドもここ数年、色々揺らいでいるからね。
何となくモヤっとしたまま、次の映画まで2時間半くらいあったので、読書して待つ。前日に数ヶ月に一度の新聞寄稿を読んだばかりの朴沙羅さんの『ヘルシンキ 生活の練習はつづく』を読み残していたので、何気なく持ってきたが、これが当たり。フィンランドがもはや教育大国ではないことがはっきり書いてある。だよね、違和感の理由はそこ。そして、また奇遇にも朴さんの本は次の映画にもつながっていった。フィンランドに住んでいる在日韓国人として日本とフィンランドを比べることの無意味さ、どちらにいてもどちらの人だと思われることもなく、どちらも差別がある。それがわかった上で、社会をより良くするために行動することが自然なフィンランドと、社会に無批判であることに慣れてしまった日本。国籍が違う国で生きることの生きづらさが、自分は本当の意味でわかっていないなと思いながら、2本目の『港に灯がともる』へ。

1/17初日が大きく書かれたポスター。階段の手すり?を生かしたメインビジュアルも珍しい

最近は朝は『カーネーション』、昼は『カムカムエブリバディ』と完全に安達もじり(哲学者・鷲田清一の息子さんらしく、モディリアーニからつけられた名前なのがすごい。お兄さんはメルロ=ポンティだから、どっちがいいかなぁ)ワールドの住人。『100分de名著』で『心の傷を癒すこと』が取り上げられており、ドラマ化された屈指の名作も久しぶりに見ることができた。最後の回で生まれた赤ちゃんが灯(あかり)という名前だった。やはりここが起点になるのか。ドラマ『心の傷を癒すこと』(映画化もされたことは知らなかった)は直接的な主人公の安さんの物語だったが、『港に灯がともる』は安さんが書いていることの深淵に迫ったものになっている。更に神戸在住の在日韓国人家族の苦悩も三世となってより深いものになっている。とても辛い告白のシーンから始まり、最初な彼女に何が起こっているのか、わからなかった。それがじわじわとわかってくるいくつかは、きっとテレビドラマだと放送事故に思われかねない、精神が乱れた主人公が呼吸を整え、静かに自分を取り戻すシーン。映画だと、劇場で聴く音だと、ゆっくり伝わってくる。安達組に集まった安定のスタッフ・キャストによって丁寧につくられていて、これまでとこれからをつないでいる。じっくり観られていってほしい。

次回は鶏そぼろご飯を食べたいから、ミックスの小にしよう

ようやく行けた、シネマリン近くのくぬぎ屋のワンタンスープでホッと一息。スープまで飲み切れる美味しさ。シネマリン隣の喫茶あづまにもタイミングが合わず、なかなか行けないが、いつの日か。。。

いいなと思ったら応援しよう!