【知的財産権の学習・初学者向け】著作権法について① -著作権とは?-
こんにちは。中小企業診断士・紀の川きのこです。
知的財産管理検定3級の範囲を想定して、知財初学者向けに、代表的な論点を解説します。
学習内容の最も効率的な理解と習得には「自分が得た知識は速やかにアウトプットすべし」という鉄則があります。
そこで、自分の知識定着の加速化とあわせて、せっかくなのでこの場で皆さんとも共有していこうかなと思います。
私の学習ペースに合わせて少しずつ取り上げるため不定期となりますのでご了承ください。
さて本日は、
・著作権とはなにか
という点についてご紹介いたします。
1 著作権法の全体像
(1)著作権の発生
著作権は、「著作物」の創作者である「著作者」に発生します。たとえば、ある作家者Aさんが小説を執筆したとします。この時創作された小説は「著作物」とよばれ、作家Aさんはその「著作者」となります。そして、この小説に発生する法的な権利が「著作権」というわけです。
そして、著作権についての法律上の根拠となるのが著作権法になります。
この著作権という権利は「財産権」であり、別の言い方では「著作財産権」と言ったりもします。
著作権は、財産権であるため、著作権者は、著作物を他人に利用させる際に、対価(金銭)を得ることもできますし、著作権そのものを売却(著作権上では”譲渡”と表現されます)したりすることができます。
著作権と同じような財産権のなかには、民法で規定される「所有権」というものがありますが、知的財産権である著作権は、「物」を物理的に支配する所有権とは取扱いが異なります。
例えば、先ほどの小説を執筆された作家Aさんが、ご自身が書かれた小説を知人のBさんに売却したとしても、Bさんに移転する権利は「小説の所有権のみ」であり、作家AさんとBさんの間に特約がない限り、著作権がBさんに移転するわけではありません。
(2)著作権法の目的
著作権法の第1条には、次のように著作権法の目的が規定されています。
この書きぶりからもわかるように、著作権法には、著作権法には著作権だけではなく、様々な事柄が定められています。
著作権法では、まず、著作権が設定される著作物とはなにかを規定したうえで、その創作者を「著作者」と位置づけ、著作者を保護するための権利(著作者人格権及び著作権)を定めています。
また、著作物を広める役割を果たす人々もいますよね。たとえば、作詞作曲された歌を歌う歌手だったり、舞台俳優や映画俳優、さらにはテレビ放送やラジオ放送局なども該当します。
こういった役割を行う者を保護するために「著作隣接権」というものが規定されているほか、著作権法に書かれた権利を侵害した者に対する対抗措置(差止請求権や刑事罰)についても定められているのです。
2 著作物とは
(1)著作物の定義
著作権は、著作物に対して発生する権利ですから、著作権について考える場合には、まず、「その創作物が著作物に該当するか否か」を判断する必要があります。
著作権法上では「著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています。
この定義について少しかみ砕いて説明すると以下のような感じになるでしょうか。
「思想又は感情」が込められたものであることから、「人」の創作物である必要がある。
「創作的」であることから、「オリジナル」である必要がある。
「表現したもの」であることから、他人が感じて会得できるものであること。
「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」なので、特許など「産業財産権」の対象とならないものであること。
また、「人」が創作したものであれば良いので、年齢性別はもちろん問いませんので、小さな子供が書いたお絵描きやパパに書いたお手紙だって立派な著作物となります。しかし、「チンパンジーが描いた(描かせた)絵」や、防犯カメラに映った映像などの「機械的な映像や写真」は著作物として認められていません。
(2)著作物の例示
具体的に、著作権法ではどのような例示がなされているのでしょうか。以下にまとめます。
少し補足をしておくと、美術工芸品やプログラム(コンピューターソフト等)は、著作権のほか、意匠権や特許権の対象にもなったりします。
(3)特殊な著作物
少し特徴のある著作物についても、著作権法では規定がありますのでまとめてご紹介します。
例えば、ある小説Aを原作とする映画Bは、その小説Aの二次的著作物に該当します。この場合、映画Bには、小説Aとは別に著作権が発生します。
また、編集著作物というものもあります。これは、素材の選択又は配列の「いずれか」に創作性を有する著作物が該当します。
たとえば、「先生がクラス全員の作文を出席番号順に掲載した文集」には創作性がなく編集著作物にはなりませんが、「生徒が選んだ10作品のみを掲載した文集」は編集著作物となります。
(4)著作物ではないもの
ここまでの定義を満たさないものや、創作性が発揮できる範囲が狭いもの(=誰が作成しても似た内容になってしまうもの)は、原則として著作物になりません。
(5)著作権法の保護対象
著作権法は、日本国民の著作物や、日本国内で発行された著作物を保護対象にしていますので、日本国民又は日本法人の著作物は、発行の有無を問わず、また、外国で最初に発行されたものであっても、(日本国内において)著作権法で保護されます。
しかし、外国人又は外国法人の著作物は、次にいずれかの要件を満たしたものに限って、日本の著作権法で保護がされます。
(6)保護対象とならない著作物
最後に、保護対象とならない著作物についてまとめておきます。
ここに入るものは、いずれも国民の権利や義務に関するものであって、広く国民に利用させることが公益に適うという観点で、著作権法の保護対象とならないものです。
言い換えれば、誰でも自由に利用したり、複製したりすることができるというわけです。
いかがだったでしょうか。
身近な財産権である著作権、ひとことで言っても様々な観点で整理が必要なのですね。
この内容に照らせば、私が書いたこの記事にも著作権が発生するわけですが、皆さんは細かいことは気にせず、じゃんじゃんコピーするなり活用していただければ嬉しいです。
決して著作権侵害だ!みたいなことは言いませんので・・
今回はここまで。
次回は、著作権のより詳細な内容と、著作権の保護期間についてまとめたいと思います。