#9 設計と施工を誠実にまとめあげる凄腕プロデューサー・鈴木幸雄
木の家だいすきの会のメンバーの、人となりを紹介していくこの企画。第9弾は、クオリスの鈴木幸雄さん。施工管理という、一般には耳馴染みのない仕事について伺いました。広い視野と現場主義によって、家づくりをまとめあげる仕事の奥義とは!?
設計士さんや大工さんに気持ちよく仕事をしてもらう
――鈴木さんが代表を務められているクオリスは、どのようなお仕事をされているんでしょうか?
鈴木 一言でいうと施工会社になります。設計士さんや工務店とタッグを組んで、工程管理や予算のコントロールをして、円滑な施工を管理する仕事ですね。
――他の業界では「プロデューサー」や「ディレクター」とも言われる職種ですね。
鈴木 そうですね。私の兄が工務店をやっていて、ともに無垢の自然素材でつくる家づくりやリフォームなどを手掛けています。
――ご家族がパートナーだとスムーズに仕事が進みそうです。
鈴木 もともと父が大工をしていて、私自身も幼少の頃から工事現場を見ていました。だから大工さんの思いがよく分かるし、彼らに気持ちよく仕事してもらうのが大切な役割のひとつです。
――大工さんをサポートする仕事とは、例えば・・・?
鈴木 図面を見て段取りの良い施工を指示したり、ときには工賃の交渉もします。また、建材や工法に関する新たな情報をインプットして、現場に共有したりもします。
――なるほど。しかし、そうして家づくりの現場にいると、自分でつくりたくはなりませんか?
鈴木 それがならなくて(笑)。もちろん、設計士さんにも大工さんにも強い敬意は持っていますが、私には管理のほうが向いているようです。
木の家は、伝統技術と知識があって建つもの
――無垢自然素材での家づくりを掲げていらっしゃいますが、それゆえの難しさはありますか?
鈴木 自然素材は生きているからこそ、想定外のできごとは多々おこります。そこで重要なのが、臨機応変に対処をしていくこと。計画段階での確認と、現場での検証という2つのアクションを反復して、常に高い品質になるように心がけています。そうした難しい仕事だからこそ、特別な価値が生まれるんだとも思います。
――特別な価値とはなんでしょうか。
鈴木 やはり、木ならではの調湿性能や、触感の素晴らしさ、経年美などでしょう。しかしそうした木の良さを引き出すには、道具の使い方や材木の目利き、さらに木組みのイロハを体得した大工さんの技術が必要です。また、設計士さんでも、木の特性をよく分かっている方の設計は、施工がやりやすいものです。木の家だいすきの会のメンバーはみなさん木に通じているからこそ、良い木の家づくりができているんだと思います。
――木に詳しい作り手は年々減っているのでしょうか?
鈴木 現場を見ていると、大工さんは高年齢化しているのは間違いありません。ただ、自然素材の家づくりが見直されてきているので、今後増えていくことを期待しています。
誠実な対応を可能にする引き出しの多さ
――施主さんとのコミュニケーションで心がけていることはありますか?
鈴木 正直であるようにしています。パット見の見栄えや、コストばかり追っていると、見落としてしまうこともあります。たとえば、吹き抜けの空間は気持ちがよいものですが、建材によっては音が反響して落ち着きません。その際に、適切な対応がとれるかどうかが、私たちの腕の見せどころです。
――鈴木さんの現場での体験と、新しい情報がここで活かされるわけですね。
鈴木 そうあろうと努力しています。なにしろ、施主さんには、「価格が適正か」「職人の技術は高いか」「その建材は正しく使われているか」などは分かりません。だからこそ、しっかり私が説明できるように、広い視野と現場主義を大切にしたいですね。
――ちなみに、木の家だいすきの会のメンバーからも、鈴木さんの顔の広さは聞いています。どこでそうした人脈を築くのですか?
鈴木 顔が広いかは分かりませんが…お酒が好きなのでコロナ禍になる前は飲み会でコミュニケーションを取っていましたね(笑)。近いうち、またみなさんとお酒を酌み交わして語らいたいです!
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