【2023年1-3月期】 新規上場企業の成長可能性資料一覧とポイントまとめ
※本記事はシリーズ記事です。
2023年4-6月期の新規上場企業の成長可能性資料一覧とポイントまとめは下記からご覧ください。
成長可能性資料は、自社の魅力を伝える最も重要なマテリアルの一つ
成長可能性資料とは、東京証券取引所の定める「事業計画及び成長可能性に関する説明事項」に基づき、企業が東証グロース市場に上場(IPO)する際に公開する資料です。ビジネスモデル/市場環境/競争力の源泉/事業計画/リスク情報等が掲載されており、株式投資家がIPO企業への投資を検討するにあたって最も参考にする資料の一つです。また実務的には、公募価格決定プロセスの一つである対機関投資家向け1on1プレゼンで利用するロードショーマテリアルとほぼ同内容であることが多いです。
IPOは、企業にとって初めて不特定多数の株式投資家に価値評価される一世一代のビッグイベントです。そのため、企業経営者は「如何に自社の魅力を伝え切り、正当な価値評価を受けるか?」を考え抜き、成長可能性資料を作り込む必要があります。ただし、株式投資家の目線をもって「自社の魅力は何か?」、「何をどのように伝えるべきなのか?」を適切に判断し資料に盛り込むことは容易ではありません。
今回は、23年1-3月に新規上場したIPO企業の成長可能性資料を参考に、「IPO企業はどのようなポイントを投資家に説明しているのか?」、「上場後、投資家から高評価を受けたIPO銘柄は何を訴えていたのか?」を探ってみたいと思います。
23年1-3月期IPO企業の事例から、成長可能性資料のポイントを読み解く
23年1-3月に新規上場を果たしたIPO銘柄は以下表の13銘柄です。このうち、公募価格からの株価上昇率(上場1ヵ月後)が最も高かった銘柄は、建設業界のニッチ領域の課題を解決するBIM/SaaSプロダクトを開発するArent(5254)でした。
成長可能性資料は上場当日朝に一般公開されますので、このマテリアルから読み取れる企業の魅力度が高ければ高いほど、株価に押し上げ圧力が掛かると言えます(当然、株価は複合的な要因で決まるため、あくまで一要素としてご理解下さい)。そのため本稿では、「Arentが成長可能性資料で何を訴えたのか?」を軸に、マテリアルで訴えるべきポイントを整理していきたいと思います。
【事例】Arentは「成長ポテンシャル」と「収益の持続性」を訴えた
結論から言えば、Arent(5254)は特に「成長ポテンシャル」と「収益の持続性」の2点の示し方が秀逸だったと言えそうです。まずは、以下のスライドをご覧ください。
マテリアルの冒頭で、「Arentが対峙している業界はどこか?」を定義しています。ポイントは、巨大な市場規模を抱える建設業界を敢えて細分化して見せることで、BIM/SaaS化を通じて既存業務を効率化し、置き換えていく領域は数多くあることを強く印象付けた点にあると、筆者は見ています。
自社が事業展開する市場規模の大きさを図示する企業は数多くあります。ただし、その多くは単に何かしらの統計資料をもとに全体規模を指し示すに留まっており、「市場が大きいのは分かったけれども、足元収益水準との差がありすぎて、どのような成長ステップを踏み収益拡大していくのかイメージが湧かない」といった投資家目線を払拭し切れておりません。上記スライドは、その疑念を一定払拭し、リアリティのある「成長ポテンシャル」を訴えかける一手段として、他業界含め参考になるのではないでしょうか。
続いて、以下のスライドをご覧ください。
ここでは、売上高の四半期推移を、プロジェクト初動の「本開発」と、その後の「継続開発」に分けて表記しております。ポイントは、①「本開発」から「継続開発」に切り替わっても、ほぼ過去同水準の売上規模を確保していること、②2023年6月期に再度「本開発」が拡大しており、将来的な「継続開発」の積み上がりが期待できることを示し、「収益の持続性」が高いことを印象付けた点にあります。
投資家は、将来業績に対する不安が募れば募るほど、高いリスクを踏まえ、低い価値評価を下す傾向があります。そのため、自社の収益構造やビジネスモデルを俯瞰的に見て、「如何に業績が安定しており、収益の持続性が高いか?」を突き詰め、その確度を訴える事はマテリアル作成上極めて重要なポイントとなります。上記スライドは、投資家の将来業績に対する懸念をある程度払拭し、安心感を与える「収益の持続性」を訴えかける資料足り得たのではないかと見ています。
尚、Arent様の成長可能性資料の制作は当社がご支援させていただきました。クライアントインタビューは下記からご確認ください。
「成長性」と「持続性」の視点を持って、他IPO企業の資料を見てみよう
本稿では、Arentを例に成長可能性資料で訴えるべきポイントをピックアップしましたが、その他IPO企業の成長可能性資料にも数多くの工夫が見られます。「成長性」と「持続性」は、価値評価にあたって最も投資家に訴えるべき2大要素なのですが、他の企業がどのように成長可能性資料に落とし込んでいるのか見てみると、勉強になる点も多いでしょう。以下に、23年1-3月にIPOした企業の成長可能性資料のうち、特徴的なスライドの頁番号とポイントを整理しておりますので、気になる企業の資料は巻末URLから遷移して確認してみてください。
なお、株式会社KINOCOSでは、ロードショーマテリアル・成長可能性資料の作成について、エクイティ・ストーリーの構築段階から多数ご支援させて頂いております。「自社だけでは投資家目線に沿ったマテリアル作成はハードルが高そう」、「マテリアルは作成したけれども、これで適正に評価してもらえるか不安」、「IPOは果たしたものの、株価は正当な評価を受けていない気がする」といった経営者の方は、お気軽に弊社(https://kinocos.com/)までお問合せ下さい。
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