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地震に弱くなりがちなプラン【3選】

建物の形にもいろいろありますが、そのなかでも特に注意を要するプランがあります。
総じて特殊な形、シンプルではない形が構造的に弱点が生まれやすいのですが、代表的な要注意プランをご紹介します。
※要注意プランでなくても基本的に構造計算で安全性の確保をオススメします。
※ここでの構造計算とは「許容応力度計算」以上の計算を指しています。


1 スキップフロア

面積効率がよく、狭小住宅で採用されがちなスキップフロアですが、構造的には結構複雑です。

スキップフロア

各層で水平構面が連続していませんので、応力伝達ができているのかなど細かいチェックをしておかないといけません。
スキップフロアを壁量計算で建てるのはかなり危険です。
※品確法の計算方法でもスキップフロアの安全チェックは不十分です。

2 凸凹プラン

建物全体の平面形状が凸凹したプランです。

凸凹プラン

中庭を確保し、窓を大きく取りたいときにこのような形状になりがちです。
三方向から中庭を楽しめる、採光・通風など優れています。

しかし、構造的にはくびれ部分が弱点になりますので、くびれの強度をどのように補うのかがポイントになります。
構造設計においてはくびれを中心に左右の建物に分割して安全性を検討します。
これも壁量計算ではまったく配慮なく建てれてしまうのが怖いところです。
※品確法の計算方法でも水平構面のチェックが不十分です。

建物としては非常に魅力的のあるプランですので、凸凹プランを採用するときは構造計算とセットで考えておきましょう。

3 1階と2階がずれてるプラン

1階と2階の間取りを重ね合わせたときに、壁の位置がずれることがあります。このずれがたくさんある場合、2階の柱の下に柱がない状態、通称「岡立ち柱」が多くなります。

1階と2階がずれてるプラン
岡立ち柱

当たり前ですが、2階の柱の下にも柱があったほうが構造的には安全度が高いです。
多少なら大きな問題にはなりませんが、岡立ち柱がたくさんある場合は大きな問題が発生します。

どのような問題かというと、いろいろありますが1つは耐力壁の性能低下があります。2階の筋かいの下に柱がない場合、筋かいの性能が100%発揮できなくなります。
(状況によりですが、筋かいの性能が本来の60%(40%減)になります)

このような耐力壁が多い場合は実際には壁量不足になっているのですが、壁量計算の場合はまったくの性能低下なしで計算されます。
※品確法の計算方法でも性能低下なしです。

つまり、計算上は100の性能を期待している筋かいが、
いざ地震で揺れたときには60しか働いてくれないということになり大変危険です。

理想的には1階と2階の間取りがピタッと重なるプランが構造的には安全性が高いといえますが、プランニングのハードルは高いので、多少のずれは致し方ないでしょう。

なお、上下階の壁の重なりを度合いを「直下率」といい、
直下率60%以上であればプラン的に無理が少ないといえます。
※直下率=耐震性ではないので注意。あくまで構造的に無理がないかの目安です。
※厳密には「壁の直下率」、「柱の直下率」があります。

まとめ

構造的に要注意なプランを3つご紹介しましたが、
そもそもな話、何が危険でどこまでが安全なのかは構造計算によるチェックをしないとなんともいえません。
基本的には複雑なプランかどうかにかかわらず構造チェックをオススメします。構造チェックができていれば弱点を補うこともできます。

ご紹介したプランは絶対にNGということではなく、構造への配慮なしにやると危険なものになりやすいということです。
構造に配慮しつつ計画するのであれば、問題なく安全を確保しながら建築することが可能ですので覚えておきましょう。

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