にじ高の夏2024 育成編

それは意外な参戦だった。昨年のにじ甲では★999の二刀流・葛葉(大谷転生)を育て上げ、感想配信ではかなりやり切った感を出していた椎名監督。舞元氏の休止が続いていることもあり、例えば椎名・レオスなどの布陣で主催に回ることも予期されていた。ただ春のV甲では天開氏の恐る恐る出したオファーを快諾するなど、心境の変化(リセット?)も窺われるところではあったかもしれない。

ドラフトでは(例外的なことに)予告通り社築を一位指名。「やししぃ」は発端の告白こそ2023年の6月だが、にじ甲2023の翌日にマイクラハードコア配信で擦り倒した上でのマットレス案件というのが恐らく起爆剤であり、丁度1年掛かりでゴールインしたとも言える。何がゴールインだ。良いコンセプトが思いつかなかったようで、他は仲良しや弄りやすい(悪い言い方をすると★の低い選手に当てても良さそうな)ところを選んでいった。

さて今年は新作、パワプロ2024の発売開始と同時に育成期間が始まった。監督陣が一旦見に回る中、情勢を形作ったのはレレササや葛葉、そして何よりイブラヒムの研究に拠るところが大きい。弱小同士の対戦でも10点取られることなど当たり前という超打高の環境。後半戦でセンター返しを合図かのようにして凄まじい連打が始まるそれをイブラヒムは「呪い」と呼んだ。

何故そこまで打たれるのか? 相手も固有戦術や伝令を駆使している、CPUがこちらの戦術選択を記憶している、野球的な洞察(配球の読み合いなど)の重要性が増している、など「#イブ研」タグで様々なデータ・説を集めつつ、イブラヒム自身も検証の中で総合戦力に着目する。自校の情報として表示される総合戦力(呪力)が一段階上がった途端、きっぱり呪われることが無くなった。スマホ版の栄冠クロスにおいてはチーム総合力の概念があり、本家栄冠でもこれが導入されているのではないか。攻撃呪力と守備呪力の差によって呪いレベルが変わるのではないか。スコアを前もって決めたシナリオに誘導するシステムがあるのではないか…。決定的な攻略法(呪力の核心)と言うには心許ない「守備と魔物の重要性」を遺して研究は幕を閉じた。

こうした情報を追っているリスナーとしては環境の変化に慄き、監督は事前に一回触った方が良い、と言わざるを得ない。恐らくあまり気負わずにスケジュール上トップバッターとなった椎名監督だが、半信半疑のまま練習配信をする運びとなった。しかし元が守備に長けたチームを引き、呪いを体験せぬまま練習は終了。監督の運勢(序盤に強い印象がある…オカルト!)や経験重視のプレイスタイルからするとこれは結果的に悪手だったのかもしれない。

そして本番、キャッチャーB(本戦で投手のスタミナ消費を抑えるため極めて重要)こそあるが転生選手はおらず、呪力や性格(固有戦術を決める。内気だけでなくお調子者のような全体バフもいなかった)などかなり厳しい滑り出し。キャッチャーBに転生投手もいる英アカのお蔭で「おは下位互換」と不名誉な挨拶も飛び出した。(ギラホスは更に強かったが開始時期がずれていた。)初の公式試合は12-6で迎えた9回表、7点もの連打を浴びた後、三振・ライトフライ・内野フライであっさりと3アウトを取り、露骨にシナリオ地味た展開に「ふざけるな! おめぇそんな力じゃねぇだろ!」と吠えた。RP重視というかあまりシステムがどうのとは言わないタイプなのでなかなか珍しい場面。

1年目の印象としてはやはり、戦術面で前作の経験が不利に働いたような気がしていた。これはV甲や練習配信で2022的な栄冠をしたのもあるだろう。ステ振り面ではこれまでも外野の守備の重要性を徐々に認識するなどしており、2024の呪力総量(特に守備の総合力)を重視する意見をスムーズに吸収できた。一方で戦術面は戦術レベル(数字)を重視して相手の配球はあまり気にせず、守備でも戦術を1球ずつ考えたり1回外したり(オカルトではあるが人気のある手)はしなかった。別にそうしたら上手く行っていたという話では全くないが、初監督の面々がその辺り丁寧だっただけに少々心配ではあった。

しかし振り返ってみるとこの頃の育成の割り切りようは見事だった。ショートでびるは例年の「G消し」すらせずに守備系特化、2年目6月には弾道を上げる余裕なしと断じ、投手もコントロールを最低限にした本戦仕様。私はFCをつぶさに把握している訳ではないのでどういう意思決定だったかは分からないが、少なくともその選択は褒められて良いだろう。最初の卒業生に本屋3人という引きを見せるも、ふれ高♡が同じ引きでまた下位互換と化す。結局「勝たないといけない」と言った2年目も公式戦0勝となった。

負けが込むとリスナーとしては「去年でやり切ったしまぁ…」などと勝手に安心したくなるが、椎名唯華は物事を楽しむ天才であり、七夕の選択肢では学力ルートを提唱して邁進。OB本屋達もそれに呼応するようにしてアベレージヒッター×2を仕入れ、合宿では広角打法×2を習得、効率アップも多数引き入れ戦力自体は整いを見せてきた。

3年目はマネージャーから転生?した四季凪による投手陣の補強(ヴァーミリオンのコンバートで1枚少なかった)、モイラという野良の理論値のような野手の入学、性格のラインナップも改善し、特訓・本屋共に好調、溜めた「バネ」を信じて戦ってきた監督を報いるかのような我が世の春となった。ブルアカでバネを使い果たしてなどいなかったのだ。(余談だが、アニバ直後という間の悪いタイミングで始めてどハマりした椎名唯華が次のアニバで案件を貰い、ガチャ的にも大勝利したのはファンとしても嬉しい流れだった。)

県大会の序盤は他校調査と魔物の複合もあり、順調に勝ち進む。しかし問題は準決勝から、まず名門・八峰を相手に3-2のロースコアゲームを演じ、実力勝負を切り抜ける。そして決勝、相手は超名門・藤里。前作通りなら1%という最悪のルートを引き、しかも4番ファーストには落合。金特持ちのロッテではなく中日レジェンドではあるが、弾道4ミートSパワーS、威圧感アベレージヒッターパワーヒッター広角打法…まさにレジェンドと言う他ない。

卯月コウはにじ高唯一の内気でありながら、2年では一度たりともその魔物を見せることがなかった。しかし最後の夏、彼は見える限り全ての場面で魔物を現した。0-6で9回裏ノーアウト、開眼した魔物は同点まで怒涛の追い上げを実現するも、あと一打が届かず延長へ縺れ込む。タイブレーク制によりノーアウト12塁、相手の打力を考えると絶望的状況にりりむが登板。インローの全力ストレートをセンター前に運ばれるも、しば渾身のダイビングキャッチが辛うじてアウトをもぎ取る。興奮で視界が真っ白になりそうなくらいの劇的ファインプレー。続いて4番・落合と対峙するも、外角ギリギリのストレートがキャッチャーフライとなり社が危なげ無くキャッチ、ランナーを進めない最高の形となる。次でライト前ヒットを受けるも、シェリンのC近い強肩がホームインを許さず満塁。最後は投手からのコンバートでまた強肩のサード・ヴァーミリオンがしっかりゴロを取り、奇跡的な無失点で守備を終えた。

10回裏ノーアウト12塁、打者はしば。送りバント4、セーフティバント5という選択肢。数字は高いがセーフティバントは野球的には3塁でアウトを取られる可能性、成功すると満塁時ホームでフォースアウトの可能性などリスクがあった。コメントでも割れていたところだが、椎名監督はセーフティ成功の実績や数字を信じセーフティを選択する。ここは(結果しばアウトだったが)やはり一貫してゲーム的センスによりプレイしている監督の色が出た場面だった。

続く社、手札は転がせ5とスクイズ3。転がせはデータ的にも最強とされる戦術で、しかし超名門ともなると守備が固すぎて抜けにくく、2022時代にバントスクイズは黄金コンボではあったが、2024でスクイズは弱体化しており…。まさに究極の選択だった。悩んだ末、伝令を残せばアウトになっても次でヒットを狙えると判断、スクイズを指示する。全力ストレートの勢いを殺し切れずサード方向へ転がるボール、それでも全力ダッシュでホームインする卯月コウ、カメラはガッツポーズする社をソロで抜く。2年目まで公式戦0勝の高校が甲子園への切符を手にした瞬間だった。
  
甲子園の初戦も魔物の力を受け8回裏に逆転を決めるが、この時ノーアウト1塁、打者社という場面でコメントはダブルプレーを避けるバントを推す声が大きい中、監督は転がせを選択する。ノーアウト魔物にしたい、1アウトで魔物の方が怖い、という言葉には先の伝令温存と同じ、勝ちまでの明確なイメージを持つ戦略思考が表れている。守備でも気づけば(1球外せオカルトも駆使しつつ)慎重に配給を作り、戦術的にも隙の無い名将が完成していた。

最近熱心に配信していたダンガンロンパの1作目で、主人公・苗木誠が超高校級の幸運、いや〇〇であることが判明する。(一応伏せるが以下読めば分かってしまうだろうから注意。)これは個人的に椎名唯華(の今回よく見られた解釈)とよく一致すると思っていて、つまり諦めずに何事も楽しむ姿勢、それが本質で幸運は結果的なものに過ぎないという見方だ。戦略思考という話をしたが、最悪を避けるのではなく最善を追うというのも「幸運」に必要な要素だろう。(機会が無ければ運も何も無い。)配信者一般にも言えるが、ハイリスクハイリターンの択を行くのが俗人との違いであり、リスクを引いても椎名唯華は楽しめる。だから最強なのだろう。

それにしても「呪い」とは何だったのか。守備動作も悪化しているだとか、打球速度が速すぎて対応できていないだとか、そういう指摘を踏まえると「流れ」(その存在自体は開発陣が認めていたはずだ)によるバフ・デバフの双方がE以下辺りの守備力に刺さり過ぎて、試合を破壊しているように見える。真面目な話別に「シナリオ」などある訳ではなく、点を取り過ぎると抑止するシステムがあり流れなどの効果を打ち消すのだろう。

あとは人数的に選手にはできなかった先斗で、2年目の肩揉みでチームを破壊したりもしたが、「お褒めの言葉」で買い物できていないチームを救いもした。監督のテンションも上げ続けた。Xを見ていると今年のメンバーで一番熱く応援していたのは恐らく先斗だろう。(あとはレン・ゾットで、昨年の誘いもあってのことだろうか。)本戦に出られない点気にする人間もいるだろうが、先斗はマネージャーのポジションから全力で楽しんでいた。高難易度の今年の環境において、陰の立役者と評しても過言ではない。


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