にじ高の夏2024 リーグ戦

Aリーグ

8月10日、まずはAリーグ。初戦の1回6失点は例年通り「打線は水物」、不振もあれば打ち崩してのビッグイニングも常にありうることを示した。英アカの苦戦は下馬評的には意外だが、ステータス差がある一方で打撃系の青特を見るとそうでもなく、打力について青特の重要性を示唆しているように思われた。

またリリーフ・レオスの活躍は、CPU対戦の最適解と言われていたフォーク一点集中の軟投派の強さを改めて知らしめた。ここは更にその道を突き詰めたKOTOKAの活躍を期待させる。一方でイブラヒムもそれなりに打たれており、投手では青特などの部分の真っ当な強さはそこまで印象的でなかった。とは言え大崩れしない強さは見せただろうか。

Bリーグ、第4試合まで

さて翌日のBリーグ。振り返りの「熱狂」では「因果応報」がテーマと評されていたが、にじ高的にはやはり「愛」だったように思った。何故なら(応報も何も椎名唯華は全方位に煽るし)配信枠での待機から一戦目が始まるまで、間違いなく銀河立(ギャラクシりつ)こそ最も愛された高校だったからだ。北小路やSMC、リゼなど中軸選手の応援のみならず、待機コメントも「ギャラクシィィィ!!!」に侵略されていた。

その銀河立戦、威圧感は懸念されていたほど猛威を振るっていないかに見えた。スタミナが尽きてきてもフォアボールや甘い球がやや増える程度で、結局打撃は時の運なのか。いやここは投手の気迫と、チャイカ監督の絶妙な継投策を褒めるべきなのかもしれない。ヒット数では銀河立10本に対してにじ高11本と上回っていたが、あと少し繋がりきらない印象だった。8回にはレヴィに継投しつつTP(ターニングポイント)を得た相手を無失点に抑えるなど耐えつつも、序盤の1点差を覆すには至らなかった。

次のレインボール戦、勝利こそすれ得失点としては苦しい展開となった。にじ高はチャイ高戦と同じく11ヒットながら結果2得点、やはり残塁が多く、まず2アウトになってから打つという間の悪い展開が目立った。とは言え8回表のチャンスで代打を出していれば…という「熱狂」で散見されたような意見は結果論に過ぎない。それはレインボールをナメているか得点と失点のトレードオフを理解していないのだろう。

Bリーグ、第5試合

さて大一番、の前にこの試合だけは触れるべきだろう、第5試合の銀河立対レインボールである。銀河立はこの時点で勝ち点3の得失点-6、勝ち点6で得失点+8を抱えるギラホスに追い付くには、10点差コールドで得失点+4くらいまで最低でも稼がなければならなかった。が失点を重ね逆に5回コールドを喰らう可能性すら見え、育成中の名場面を彷彿とさせる石神のホームアウトも出るが更にあっさりと失点、加賀美から監督へのイマジナリー伝令を受けつつリアル「この回20点取れ」な苦境中の苦境へ。

錯乱しながら月ノ美兎のキャラクリへ「洗濯機のやつ使うんだったら草喰えよ」と難癖、いわゆる美兎チル(月ノ美兎チルドレン)の片鱗を覗かせる。配信は完全に銀河立のペースとなっていたが、6回初ヒットに飄々「ノーノー切れた悔しい!」と言い放った小野町監督も鋭利な畜生さを見せた(褒めている)。未来人・夕陽リリへ「未来変えて〜」と雑弄り兼懇願する監督に「未来というか過去(既に9失点)を変えてほしいですよ〜はい」、打ってなければ代打しようかと検討する監督に「打ってない…ってか、この回(試合)誰も打ってない」など葛葉のコメントも最もキレていた。

7回表、0-9で3点を稼がなければ終わってしまう場面。観戦者にも駆り立てられつつ「後のことなんて知らねえ、俺は『今』なんだ」と守備ポジションを崩壊させてでも代打により2アウト満塁まで繋ぎ、ここぞの満塁男・ヴォックス。渾身のレフト前ヒットにより2点を返し、AP(アタックポイント)も獲得した。この試合のサイレンも務めたバレンウォートへ希望を託すも、初球ショートゴロ。銀河立は宇宙(そら)の星となった。

Bリーグ、第6試合

そして最終戦、にじ高対ギラホスである。得失点の差を埋めるため、にじ高は4点差以上が必要だった。にじ高はセンターという「庭」を駆け巡るしば始め、野手の厚いカバーにも支えられてKOTOKAはフォークの打たせて取るピッチングに磨きを掛けてゆく。一方ギラホスのエース舞元も1回の満塁を何とか無失点で凌ぎ、スロースターターの懸念だった1・2回を切り抜け闘志も温存。凄まじい投手戦の様相を見せる。いわゆる「100マイル」に達する速球とフォークを併せ持ち危なげ無い舞元と、2塁・3塁と迫られ灼炎に焦がれるような猛攻を凌ぎ続けるKOTOKA。対照的なピッチングながら6回を終えて両者3ヒットの0点と、試合は辛うじての均衡を保っていた。

8回表、スタミナの尽きていたKOTOKAに代打・アイアを出し、裏で四季凪が登板。(なお葛葉が気にしていたりりむは元々球速があり、フォーク持ちのKOTOKAもいるため本戦ではなく栄冠向きの育成になるということを知識のあるリスナーは初めから分かっていたが、椎名監督はそこを意識せずに★のやや高い方をりりむに当ててしまった雰囲気がある。まぁ椎名監督は分かっていることを騒ぎ立てるコメントはきっぱり無視するので真相はわからないが。)しば・卯月コウと外野陣が激走でフライに喰らい付き、試合は0-0のまま9回へと突入する。

ここで1人目の卯月コウは、銀河立のリゼにも失投を見逃さずホームランをお見舞いしており、解説の舞元本人も脅威としていた。スタミナがオレンジ圏に入りフォークも落ち辛くなってきた舞元は2ボール2ストライクからど真ん中の失投を放ち、卯月コウはやはり見逃さなかった。確定ホームランをレフトスタンドへ叩き込み1点リード、舞元の闘志を霧散させる。まさに反撃の狼煙であった。

威圧感のシェリンに痛恨の四球、モイラ・社はフライに打ち取るも、舞元のスタミナとメンタルはもう限界だった。147kmまで落ちたストレートをでびるにセンター前へ運ばれて2アウト12塁、不破監督は遂にLUCAへの交代を宣告する。一打で条件達成の場面、8番しばはこの試合ノーヒット。代打を出したくなる場面だが、守備を思うとしばは変えられない、次の9番四季凪に代打が要るとして、しばを信じる選択をする。これは育成での県大会決勝、運命のスクイズ選択を彷彿とさせる場面だった。椎名唯華はやはり戦略家であり、勝ちまでの道筋の確たるイメージを持ち、それを信じて進み続ける。どんな極限でも(プレッシャーに騒ぎつつも最終的に)それを選び続ける精神力の持ち主なのだ。『アカギ』の言葉を引いても良いだろう、その最も傑出した才能は「自分の判断を信じる才能」「揺れない心」だと。

しばの打球はセカンド・ネスの頭を僅かに越え、代打アイクもセンター前を放ち3-0。魂の采配に応えあと1点まで迫り、2アウト23塁、打順は1番レンゾットへ。不破監督は動揺しつつも「監督!ギラついていこう!」と舞元直々の(逆)伝令を受け、「できることもねえわ!信じるしかねえこれ」と続行。レンゾットはLUCAの4球目のカーブを追うも捉えきれず、ライト・梢桃音がフライに取り3アウト。運命のあと1点は砂のように掌上から零れ落ちたのだった。

試合後

惜しい戦いだったが、他監督からのコメントがなかなかに良かった。不破監督の「椎名って、つええんだなと」私は最初これがゲーム上のことを言っているのかと思ったが、次いで多分「常連の椎名ってこんなやばいんだなと」と言っており、文脈を考えるとメンタル面の話なのだろう。スプラ3の「黙れ黙れ黙れ」など何かと当たりが強く、逆凸もアポ無しでしたり普段ナメてそう(悪い意味ではなく、気を使わなくていいという意味で)な不破からこうしたリスペクトの言葉が出るのは意外だし嬉しいところ。またエクス監督も「椎名さんを悪く言う奴がいたら僕がぶっ飛ばす」など強火の援護。これは観戦配信を軽く見返しても文脈が見当たらないので謎だが、最終戦で相当感動したか変なコメントでも見掛けたのか何なのか。

振り返ってみればにじ高は失点は銀河立に許した4点のみで、Bリーグでは最少失点に抑えた。どこかであと一打あれば、という数奇な巡り合わせであり、また銀河立戦の特異性が目立つ結果でもある。歌が、いや愛が、やはり命運を分かったのだろうか。違う、決してそうではない。

(やししぃを断じて許さないあの社が、だ!)
あるとすればそれはエンタメ力であったのかもしれない。育成の最後まで絶望的苦境に立たされたチャイカ監督は、それでも銀河立の物語を諦めたりしなかった。芸能の神も今回ばかりはその不屈のエンタメ魂に傾いたのかもしれない。多くの視聴者もそうであったように。


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