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僕の人生を変えてくれたのは全盲の数学教師だった

高1のときの数学の河村光左右先生は全盲だった。

当時少しやんちゃだった僕は,
全盲の先生だからって授業中に遊んだり,漫画読んだり,寝たり…
ロクでもないことをしていた。

それでも河村先生は毎日授業を淡々とやっている。

全盲だから板書はぐちゃぐちゃ。
字の上にまた字を書いたり,
見当違いの場所を消したり。

ある日,
「この先生、本当にちゃんと授業やってんのかな?」
と疑った僕は,50分丸々授業を聞くことにした。

「教科書○ページ開いて。前回の解説を応用した練習問題,やってみよう」

そんな感じだった気がする。

もちろん,クラスのみんなは思い思いに遊んだり,寝たりしてる。

数分後,「じゃあ解説しよう」

と言って解説を始めた河村先生。

相変わらず板書はぐちゃぐちゃ。

(あれ?でも何でこの先生は問題の数式がわかってんだ?全盲じゃないの?)

教科書を見ながら先生の話を聞く僕。

(式,間違ってない…。覚えてんのか?

ん?なんだ!?なんだ!?

解説がめっちゃわかりやすいィィィィィ!!!!

声の使い方,スピード,間の取り方,すごいぞ!この先生!!

その興奮をみんなに伝えた。
たぶん,この日からクラスの雰囲気がガラッと変わったと思う。

僕はこの1年間,席替えの時は必ず一番前のセンターポジションを希望した。

河村先生は出席簿が書けないので僕が代筆するためだ。

代筆して誰が欠席かを河村先生に伝えると、

やわらかく,優しい丸い声で

「ありがとう」

といつも言ってくれた。

いろいろあって,僕も教師になった。

教える,という仕事がこんなにも人を感動させることができると知ったのはこの時が初めてだったと思う。

少しでも河村先生に近づけたかしら。

まだまだ,まだまだ,河村先生への道は遠そうだ。

どこかで「ありがとう」の声を真似している僕がいる。

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