小さい人は手繰り落ちリスクが高いです
こんにちは。”小さいクライマー”のKinnyです。
クライミングで新人さんに説明されていないことの解説シリーズ、何本目かな?です。
さて、外岩でリードデビューと言うことになると、クリッピングという動作が出てきます。
外の岩場では、
安定した足場があるところ=クリッピングチャンス
と大抵なっています。
「危険危険危険→クリッピング→安心→危険危険危険危険危険→安クリッピング→安心」というリズム感です。
この危険と安心のリズムが、”日本の岩場の課題が前提としている身長”がないと、どうなるでしょうか?
「危険危険危険→クリッピング→え?届かないよ!めっちゃ危険!!→ ・・・。」
というリズムになるのが、同じクリッピングポイント(良いフットスタンスであることが多いです)に立っても、ボルトに手が届かないことが多い、低身長のクライマーです。
私の経験では、小川山の「トムと一緒 5.10a」は、小川山で最も易しい5.10aと言われているそうでしたが、核心ムーブの前に、クリッピングできない人にとっては決して安全とも、したがって、簡単とも言えないルートでした。
瑞牆に「たぬき 5.10a」がありましたが、これも核心前にクリッピングできず、やはり登れるようになりませんでした。(ちなみに登れる5.10aはたくさんあり、登っています)
一般的に、核心をこなす前にクリップができれば、落ちても大事に至らない、
と分かっているので、思い切ってムーブを起こすことができます。
このように、背が低いクライマーには、
クリップが届くのか届かないのか問題、
という問題があります。
これは、正直、クライミングのリスクテイキングにおいて大問題で、クリップしてロープで命を確保される前に、核心動作をこなさないといけない、というのは、イチかバチか。一方、ロープで命を確保された後であれば、イチかバチかではありません。白と黒ほどもリスクが違います。
そして、このことによって起る、もう一つのリスクが
たぐり落ちのリスク
です。たぐり落ちは、もっとも危険行為、とされるクライミング上のタブーです。
このリスクが、背が低いほうが格段に高くなります。遠いだけで、つま先立ちにならないといけなくなれば、ふらつきやすいのです。何割かアップか、分かりませんが、ぐらついて落ちるリスクが高くなります。
そして、たとえ、プリクリップしたとしても、プリクリ棒からロープが滑り落ちるリスクはあります。これも、何割かリスクがアップです。
たとえ、5cm届かないだけでも、届くか?届かないか?というのは、オン・オフの世界で、リスクで言えば、ある・なしです。0か100かということです。
つまり、
平均的身長のある、クリップが容易なクライマーには、リスク0
クリップが届かないクライマーには、リスク100
です。
人というものはどうも同じ目に合わないと、相手が対面しているリスクが理解できないようで、このことは、一般的な身長があるクライマーからは、女性クライマーも含めて、ほとんど理解されていません。
理解があるクライマーは、
・低身長の子供と登ったことがあるクライマー
・低身長の女性クライマーと登ったことがあるクライマー
です。
低身長の女性でも、上記のようなクリップが遠い課題に、たまたま巡り合っておらず、「私、特に問題感じないけど」という人も、良くいます。詳しく話を聞いてみたら、ずっと旦那さんのトップロープで登って、自動化が安定してから(つまり暗記で登れるようになってから)、リードしている人だったりします。
初めて見る課題に取り付いて、一発で登れることを
オンサイト
と言いますが、そういう登り方をしてきていない、今日の一般的なクライマーは、
クリップ時にボルト位置が遠いというリスク
が、
死の危険をはらむ、ものすごく大きなリスクだ
ということに、気が付かないまま、クライミンググレードを上げ続けることが習わしになっています。
なぜなら、暗記によるレッドポインター登りが主流だからです。
そういう人は、自分はリスクフリーなので、「ここ面白かったですよ、登ってみたら?」とこともなげに言いますが、リードで登る場合は、よくよく見て、もし、危険だと思ったら、安全なところまで、クライミングダウンして降りましょう。
これはダメだ!と思った時用に、マイロンを一つハーネスにぶら下げておくのがおすすめです。