クライミング界のリアル…ジムクライマーが外岩ボルダリングに来る時、何が起こっているのか?
こんにちは。外岩クライマーのKinnyです。
クライミングがオリンピック種目になったのはいいのですが、それに付随して、知識が浸透していないので、インドアジムでクライミングを覚えた人がそのまま外岩に流れ込んでは、迷惑だの、事故だのを起こし、アクセス問題の温床となっています。
その実態がどういうものか?というのは、山岳上位団体にある方は、全く接点がないので、気が付くということ自体が、難しい盲点になっているのではないかと思います。
そもそも、日山協の講習会に来るようなクライマーは、山岳会の中で一人か二人です。つまり、優等生。
そして、問題を起こすクライマーというのは、たとえ機会があってもそのような講習会を避けているような人たちです。つまり、劣等生。
しかし、岩場がある地域の人たち、つまり、一般住民の目から見れば、
全部クライマー
です。たとえ、昨日から岩場に来た人であっても、クライマーでしょ、と地域の人の目には見えます。
そこが、クライミング界で、問題児たちに手を焼く理由です。
■ 現代クライマーというのはどういう人たちなのか?
一体、現代クライマーというのはどういう人たちなのでしょうか?
答え)
現代クライマーというのは、
1)クライマーがやっていないクライミングジムで、ボルダリングに目覚め
2)山岳会にも入らず
3)誰とも登らず
4)当然、フリークライミング協会の存在も知らず
5)雑誌(ロクスノ)も読まない
で、
外岩ボルダーに行く人
です。
トポはネットに公開されているので、これが可能になります。
■ クライミング移住
そういう人が、岩場のある地方自治体にボルダリングがしたいからと言って、移住してくるのが、現代のクライマー事情であることを、目撃する機会を得ました。
普通は移住して来るくらいクライミングに熱を上げているとすれば、有名クライマーの名前や、大雑把なクライミング史…ボルダリングの歴史くらい知っていると思うでしょう。
…ところが、徹底的に無知な方でした。私が見た事例が特殊なのかもしれませんが…一例としてご参考に。
事例:
ボルダラーなのに、”黒本”って言葉も知らない。”御岳ボルダー”って言っても、きょとんとしています。こんな調子では、室井〇〇男も知らないと思います…。
当然、ノーマットで登った記録のすごさとかを見聞きしたことがあるわけでもなく、ただ単に、”金がないから”がノーマットの理由でした。これでは怪我を防いでレベルを上げていくことができません。
ちなみに、「単独で誰からも何も教わらずに登っている」と言われたとき、私が聞いたのは、
「マットは何枚使っているの?」
でした。
なんせ、ボルダリングは、マットを運ぶのが大変なので、マット担ぎ要員としてメンバー揃えるのが核心の一つです。
一人で登っていたら、マットを運び入れるだけで大変です。
ところが、答えは「マットは使っていない」でした。それで、ノーマットが発覚したわけです。
■ 誰からも教わっていない
誰からもクライミングのリスク管理や危険予知を教わっていない上、日本フリークライミング協会が出している『安全ブック』などを置いているクライミングジムもない僻地のジム…。
ので、当然のことながら、結果は次のようになります。
1)ボルダリングは9割落ちているクライミング形態であるとは知らない
2)ランディングのセルフコントロールが、すなわち、ボルダリングのリスクコントロールである、ことも知らない
3)ので、ランディング技術を磨く=ボルダリングのスキルの一つとも知らない
4)ロープが出るクライミングより、ボルダリングのランディングでの事故が多いことを知らない
5)たとえ頭を切っても翌日から登れるが、足首をやると数か月は最低登れないことも知らない
6)仮にノーマットで外ボルダリングして、事故になった場合、岩場が閉鎖になる恐れがあると知らない
7)そのため、公開された岩場でのノーマットが、全クライマーにとって、非常に迷惑な行為であることを知らない
8)ソロで登る場合、事故の際、発見が遅れただけで、大事になることがあるということを知らない
9)もし発見が遅れて死亡事故などにでもなったら、岩場の閉鎖の憂き目にあう可能性があり、そうなったら全クライマーの大迷惑…
10)したがって、危険予知を分かっていない入門レベルのクライマーのソロ行為は、迷惑行為の一つであり、一般クライマーには許されない、非常識行為である。
と、10個くらいの無知が重なっています。
■ どのような内容のクライマーなのか?
どのような内容のクライマーか?というと、50代でクライミング歴2年、13Kgの歩荷でヘロヘロになってしまうそうで、今登れるグレードは3級が限界グレードだそうです。きわめて平均的なのかもしれません。
ところで、一般的な話ですが、一般登山からスタートしてアルパインクライミングへステップアップするクライマーは、一般的に
・女性で25kg、
・男性なら30kg
を担いで
・大倉尾根をノーマルコースタイムで登って帰これる
が、アルパインルートデビューの要件になっています。山では、そのくらいの強さは、最低限って意味です。
私はアルパインでスタートしたクライマーなので、50代の男性が、たったの13kgでへばっていると聞いて、ビックリ仰天でした。前にいた会では、60代の太ったおばちゃんだけが12kgで限界、と言っていました。いくら歩く必要も歩荷の必要もないボルダリングでも、外岩に出るなら、もうちょっと体力が必要あるでしょう…
クライミングのほうの実力はどうか?というと、3級が限界グレードだそうでした。その実力で、なぜ2段の課題を登るのに、マットを使わないとか言っているのか? それが迷惑行為だとも知らず…です。
これが、クライミングジムでデビューして、クライミング教育を得ることなく、どこからも情報を得る機会がない人が、外岩デビューしている実の態です。
■ ノーマット偉業とは異なる
そんなお粗末な、無知の結果のノーマット主義なので、クライミング史に残る偉業のノーマット主義とは、訳が違います。
これが、クライマーがやっていないクライミングジムが町中にうじゃうじゃできて、
これまで絶対に岩場に来る機会がなかったような人たちが岩場に来始めたときに起こること
です。
その結果として、事故が多数起きているにもかかわらず、何の対策も施されていない、というのが現状です。
外岩に安全にデビューする方法を知りたいボルダラーは、かといってどこに行ったらいいのでしょうか?
リードであれば、ロープワーク講習会などがありますが、現状ではどこにも、初歩的なボルダリングの安全講習を行っている機関はありません。
というよりも、日本ではクライミング指導者が、何をどう指導するべきか?ということがまだ固まっていない時代です。
ボルダリングにデビューしたい方は、アウトドアでのデビュー前に
1)薄い、アウトドアマットに的確に落ちる(ランディングする練習)
2)マントル練習
3)登るより先に、下降路を確認する習慣
4)初心者に適したボルダリング課題の選び方
など、必要な知識を得てから登ってください。
アクセス問題が起きた場合、クライマー界全体が大迷惑をこうむります。