ホールドオーバー
映画『ホールドオーバーズ』を観てしばらく経った
真夏にクリスマス映画というのも乙なものだな
タイトルは“残留者たち”“居残り組”のような意味で所謂負け組や可哀想な人とされる3人が描かれるが、なんてったって私はそういうのに弱い
というのも、マイノリティ側の人間や苦い思いを抱えてきた人間にしか持ち得ないものが好きだから
私自身も“そっち側”であると自負しているし、それによって出来上がった自分をなかなかに憎めないでいる
今年、冬の終わる頃、急に波がやってきた
重油の浮いた水の中にいるようで、浮き上がろうにも阻まれて光も酸素も届かないところでじわじわと死んでいくだけ
それは3ヶ月程続いて、
これまで「死にたいわけじゃあないけど生きていたくない」とぼんやり思い続けてきた人生ではあったけれど、「死のう」と決意したのは初めてだった
何にも気力が湧かずただベッドのシミになるしかないのに、死へ向かうエネルギーだけは凄まじく準備はどんどん進んだ
けれど狭くなった思考回路で少しだけ残った恐怖心がなんとか生を繋いでいる間に、わけもなく波がほんの少しずつ凪いできて、同時に死を囁き続けていた何者かが去っていった
死に時を逃した
このエネルギーに飲まれなかった事が幸か不幸かはわからないけれど、やり遂げられなかった事がひとつ増えたのは確かで
うつの診断を受けてから3年半、私だけ取り残されている
私はすっかりホールドオーバーだ
ただ、この空の下で元気でいます