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京大卒のストリートファイター雀士・夏目ひかりさんの素顔
日本プロ麻雀協会の夏目ひかりさんは、京都大学出身の才媛。
女流雀王決定戦では惜しくも敗退したが、その潔い戦いぶりは多くの麻雀ファンを魅了した。夏目プロのことをもっとよく知りたくて、お話を聞いた。
京大在学中に プロになった3つの理由
夏目ひかりさんは、京都大学在学中の24歳のときに日本プロ麻雀協会のテストを受けて合格。今は東京都内で会社員として働きながら、土日中心にプロ活動を続けている。
夏目さんがプロになった理由は3つある。
「1つ目は、麻雀で生まれた人とのつながりを保っておきたいと思ったからです。学生時代に雀荘でアルバイトをしていて、いろんな人と出会えました。卒業してからもそのつながりを保つためにも、麻雀プロになりたいと思ったんです。
2つ目は、純粋に麻雀が好きだからです。麻雀の試合をしたいなと思いました。
3つ目は、男女の競技人口を1対1にしたいと思ったからです。麻雀はこんなに面白いゲームなのに女性が少ないのはおかしいと思い、女性で麻雀をする人をもっと増やすために広告塔になれたらいいなと思いました」
前の2つはそれほど珍しくないが、3つ目はちょっとおもしろい。
「私は松嶋桃プロや角谷ヨウスケプロと同じ京大を出ており、当時そのようなバックグラウンドのプロは少なかったです。高学歴の麻雀プロということは武器になるかもしれないと思ったんです。自分自身の人気よりも、麻雀をもっと知ってほしいという気持ちが強いですね」
鹿児島県出身。カーテンに包んで洗牌
ここで夏目さんの経歴を聞いてみよう。
「鹿児島県出身で、高校まで鹿児島県で過ごしました。学校の成績はずっとよかったですね。ドラえもんの道具のようなものを作りたいと思って工学部を志望しました」
一浪して見事、京大工学部に合格。
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「テニスサークルに入ったんですけど、ちょっと年上の男の先輩に憧れて、その人と一緒に遊ぶために麻雀を覚えました。そうしたら麻雀に夢中になってしまって、そこからは麻雀ばっかりで(笑)。同期に教えてみんなで麻雀をしていました」
最初は見様見真似で、大変だったようだ。
「大学1年生でみんなあまりお金がなかったので、セット雀荘にも行けず、誰かの家に集まって打ってました。でも私もまだよくわかってなくて、麻雀は反時計回りなのに、最初は時計回りでやっていました。チーしようとしたら『ストップ!』と止めないと次の人がツモってしまい鳴けなくなるんです(笑)」
アパートやマンションでは、麻雀牌の音は結構響く。
「音を立てないように、窓のカーテンをはずして、牌をカーテンに包んで混ぜたりしていました。 麻雀が好きな人同士だといろいろ盛り上がって『24時間連続で打とう!』という企画を立てて『何時から何時までは〇〇さんの家、そこから移動して〇〇さんの家』という感じで寝ないで打ちました。鴨川の河原にレジャーシートを敷いて打ったこともあります」
傍目には何とも京大生らしい、楽しそうなエピソードだ。そんな生活が大学3年生まで続いた。
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フリー雀荘に行って すぐにアルバイト開始
「初めて雀荘に行ったのは3年生の時で、牌テンション四条店でした。新しくセット仲間になった友達がアルバイトしていたからです」
そこでまもなくフリーデビュー。
「初めてフリーを打った時は手が震えましたけど、すごく楽しかったです。その日のうちに、牌テンションの人に『うちでバイトしない?』と誘われて働き始めました」
他の店にもフリーを打ちに行くようになったが、そこでは嫌な思いをすることがあった。
「当時、フリー雀荘に女の子が全くいなくて、行くと目立ったんですよね」
身長172センチのスラっとした若い美人が雀荘に現れるだけで、店内の空気が変わることは容易に想像できる。
「他の店にフリーを打ちに行くと『アルバイトしない?』と誘われて嫌でした。大学生だからシフトの融通がきくだろうと、誘ってくれた方たちは思っていたかもしれないです。だから結局休みの日も、自分が働いている牌テンションで客打ちをするようになりました」
麻雀に明け暮れながらも大学には真面目に通っていたが、卒業後の進路には迷いがあった。
「大学院に行くか就職をするか悩んでいて、結局院の試験も勉強して受けて、合否が出る前にやはり就職したいと思いました。そこで、就活を本格的にするにはもう時間がなかったので、あえて1単位落として意図的に留年することにしたんです。そしてそのまま就職活動を始めて、麻雀プロになることも決めました。プロの活動をしたかったので、会社は初めから『副業OK』のところにしぼって就活しましたね。そして、今の会社に入ってずっと頑張ってます。
平日は仕事の後ほぼ毎日フリー麻雀を打ちに行き、土日は月に数回、麻雀店やバーのゲストに入ってます」
女流雀王の逢川プロは 憧れの人
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