映画バービーのマイルドなフェミニズム

昨年話題になった映画バービー。ずっと見たいと思っていたけど、映画館に足を運ぶ機会がなく、ようやく先日配信されてるものを見た。マーゴットロビー演じるバービーがとてもおしゃれで可愛くて、フェミニズムなメッセージが込められているけど、口うるさくなりすぎず、上手く調整されて楽しめる作品だった。過激じゃない、優しいフェミニズムのメッセージが込められているように感じた。

基本的にこういったフェミニズムの主張が入ってるような作品は、主張が全面に出すぎると、興ざめして作品自体が面白くなくなってしまうことが多い。だが、この作品はそうはならずに純粋に楽しめる映画になっている。

その要因はどこにあるのか。

まず1つ目として、バービーが現実世界を知らない、純粋な(悪い言い方をすると、幼稚な)存在であることがあげられる。それにより、こちらがキャラクターの主張や言動を肩肘張らず見守っていられる。

例えば現実世界に来たバービーは、男性たちからの性的な目にさらされることとなる。しかしバービーは純粋であるが故の性的発言で(「私、”vagina(膣)”がないの」)、彼らをいったん黙らせることに成功する。これを普通の人間の大人の女性がやったら違和感があるし、そうする女性に対して、批判的にな見方をする人もたくさんいると思う。

次にバービー人形の持ち主サッシャを見つけたバービーは、彼女からミソジニーバリバリの攻撃を受けることになる。(「」)そしてそれを聞いたバービーは涙を流しながらバス停に座る。その際、高齢女性を見たバービーは「あなたきれいね」と言う。反エイジズムなセリフだが、これも普通の人間が言っていたら違和感があるが、純粋な心を持ったバービーのセリフだからすっと受け入れられる。

2つ目にフェミニズムに対する様々な立場からの意見をバランスよく紹介していることがあげられると思う。

サッシャ親子を伴ってバービーランドに戻ったバービー。ケンが作り上げた男性社会になってしまったバービーランドでは、バービーたちは洗脳されていた。変わってしまったバービーランドにショックを受け、バービーはへんてこバービーのところに連れて行かれる。その後サッシャ母の女性の怒りを代弁したようなセリフに周りのバービーの洗脳が解け、バービー自身も元気を取り戻すことになる。この母親の言葉は何度も聞かされるとうるさいが、母親が主張するのはたった1回だけ。バービーたちの洗脳をとく場面はカーテンに隠され、この言葉をもう一度聞く事は無い。

そして男性側の主張もちゃんと受け入れている。場面は少し戻るが、マテル社のCEOが「私だって少女の夢を叶えたかった。気持ち悪くない形でね。」と言う場面があり、フェミニズム映画で悪者になりがちな強者男性にも配慮されている。

強者になりきれなかった、ケンたちにも優しい。男社会への転換に失敗したケンたちは、何者でもない自分に戻ることが嫌で、また支配していくことにも疲れると弱音を吐く。弱気になって涙を流すケンをバービーは優しく受け入れ、バービーランドの人々も受け入れていく。

そして最後には自分が何をしたいかわからない純粋なバービーは、生みの親である女性に連れられ人間世界と生まれ変わる。

他にも細かい点はいろいろあるが、男性も、女性も、今のフェミニズムに違和感を感じる人も、どの立場の人も受け入れる、大変バランスが良くて、みんなに優しい映画になっていたと思う。

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