宇宙人からの勧誘(ショートショート)
目が覚めると私は白い空間にいた。
目が覚めると、というか気が付いたらと言うべきか、前後の記憶が全くない。
突然目の前に3人の〈何か〉が現れた。3〈人〉と形容しているのはシルエットは人間っぽかったからだ。しかし顔は分からない。見えないような、認識できないような…
分かるよねぇ?
的な、言葉?と言うよりテレパシーとでもいうのか?とにかく言葉以上に心に、そして本能に直接話しかけられるような感覚、(私達は人間では無い、それ以上の存在だ)というのが一切の疑念なく分かったのだ。
彼らは言った。
お前の事色々見てたけど人間にしては中々面白いヤツだな、どうだ?俺達のいるところに連れてってやるよ
うおおおお!!!!やった!やった!やった!嬉しい!嬉しい!メッッチャ嬉しい!!こんな!こんな人間より〈上〉の存在に認められた!褒められた!俺は!俺はえらばれたんだ!ヨッッシャアアアアア!!!!!オラァ!!!行きます!行きまーす!!
喜びに浮かれる最中、ふとある事が気になったので聞いてみた。
「あの〜…もちろん地球?に帰れますよね?」
はい?何いってんのお前??帰れるわけねーだろ
そりゃそうだ。そんなうまい話があるわけが無い。そこで生来の疑り深さが働き始めた。
まず〈彼ら〉の口調は終始上からだ。まあ上の存在なんだから当たり前なんだけどなんか引っかかる。
〈中々面白いヤツだな〉というセリフ、まるで関西人が他所の人間にいう〈自分オモロイな〉くらい引っかかる。
連れてって〈やるよ〉というセリフにも上から目線がなんか引っかかる。そもそも私程度の人間が勧誘されるのもなんかおかしい。特にこれといった経歴も実績もないんだぞ?彼らにとって連れて行くメリットはなんなんだ?せいぜいペットとか見世物小屋に置かれるくらいではないのか?
「あの〜……やっぱやめます」と伝えると
はぁ!?お前バカか??いやいやいや!フツー辞退しねぇよ!?おまッ!マジこんなチャンスねぇからな??…ったく!ワザワザ誘いに来てやってんのによ!ハァ〜〜・・・
分かった…もういい…お前もう帰れ
というと彼らはサングラスを掛けると、おもむろにナニカを取り出した
《あコレ映画とかである記憶消す装置じゃね??》
と察知した私はとっさに目を瞑った。と同時に強烈な閃光が辺りを包んだ。
・・・
目を瞑ったとはいえ、次の瞬間には私はなにやらトンネルの様な所を貨物車の荷台?のような所に寝ていて、猛スピードで流れる照明?を眺めていた。気が付いたら朝だった。
不思議な夢だったなぁと思う。
たまに今でも考える。あのとき《行く》選択をしてたらどうなったんだろう?と
帰れないということは地球上で僕は消滅したことになるわけで。
そもそも彼らは宇宙人だったのか?
《人類より上の存在》としか認識出来なかった。
死神だったんじゃないか?という疑問も残る。
まぁ、どちらにせよ結果は同じだし、こちら側の認識の問題だろう。
まあ、ハナからお笑いスキルは自分達が上という目線で言ってくる関西人の《自分オモロイなぁ》はイラッとくる。まあ…なんかそれのおかげで命拾いした様な気が…しないでもない…知らんけど。
※関西人の口癖(知らんけど)もなんか嫌い。