電車

あっと思った時はもう遅かった。電車の中で、ペットボトルを倒してしまった。

「大丈夫ですよ、すぐに拭きますから」と、駅員がニッコリと笑いながら、雑巾を取りに行った。

私は頭を下げ、申し訳なく思いながら、駅員が拭くのを見ていた。しかし、拭いている最中に電車が発車してしまった。

「あれ? 電車が…」

「ええ、もう発車しましたね」と、駅員は苦笑いしながら言った。

次は終点まで止まらない列車だった。終点まではかなり時間がかかる。

気まずい。という私の気持ちが伝わったのか、しばらく同じ車両に立っていた駅員は違う車両に移動してしまった。

しばらくすると、電車が止まった。
線路の安全点検。ますます、申し訳ない思い。

私が乗り込んだ駅は、駅員一人の小さい駅。ということは無人のまま1時間。

頭の中から無人駅が離れないまま、終点まで過ごした。

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