R-1グランプリ1回戦

ピン芸人で500万円が欲しい僕にうってつけの大会であるR-1グランプリの1回戦に出場してきた。

前日に、大学の陸上部の監督になって駅伝優勝を目指すというアプリをインストールした僕は「こんなことしてる場合か?」と自問自答しながらも
結局朝4時まで駅伝優勝に向けて努力してしまったし、惜しくも優勝できなかった。
しかし、駅伝で果たせなかった優勝は必ずR-1で果たすぞ!という前例のないモチベーションを得た僕は明日に備えて眠りについた。

目が覚めたのは13時半。ちょうどHグループが始まるくらいの時間だが、Zグループで出番が20時予定の僕には痛くも痒くもなかった。

会場がある渋谷に着くと、スクランブル交差点の近くで「ラジカセであいみょんのマリーゴールドを流しながら、脳から羞恥心さえ取り外せば誰にでも可能であると思われるクオリティのエアギターをしているスキンヘッドのおじさん路上パフォーマー」がいて、こいつを2回戦に上げろと思った。

会場に着いて受付を済ませたあと、人知れず便意を催していた僕は男子トイレの個室に駆け込んだ。
早く着替えて練習がしたいという強い気持ちからお尻の拭きも甘くなる。
およそ1分という好タイムで個室を出た僕はネタの準備を済ませ、出番を待った。

いよいよ次が自分の出番というタイミングで舞台袖にいるスタッフさんに「ネタで使うイスはスタッフさんが出してくれるんですよね?」と念の為確認してみた。
すると「〜〜〜ます!」と、舞台袖で小声なので全く聞き取れなかったが、「はい!こちらで出します!」みたいなことを言っている雰囲気を口の動きと手振りで感じ取った僕は「ありがとうございます!」と最高の笑顔で返した。
そのあとの「〜〜〜は〜〜〜です!」という言葉も聞き取れず、雰囲気や手振りでもわからなかった僕は「わかりました!」と最高の笑顔で返すというギャンブルに出た。

ネタ終わり、結構手応えがあったので余韻に浸ろうとしたらさっきのスタッフさんが急いでやってきて「イスは自分でハケてください!」と怒られた。
さっきはその事を言っていたのか!と気づいた僕は「いや〜緊張で忘れちゃいました、てへへ」とばかりに、愛嬌あふれる「あ〜すみません〜」をスタッフさんに繰り出したがその奥で別の女性スタッフさんがこちらを睨んでいて怖かった。

もう2度とスタッフさんの方を向けなくなった僕は壁に向かったまま黙々と着替えを済ませ、逃げるように会場を後にした。

駅に向かっていると行きで見たエアギターのおじさん路上パフォーマーが同じ場所でやっていたので近づいてみるとラジカセからあいみょんの聞いた事ないアルバム曲を流していて、こいつに来年のシード権をあげろと思った。
しかし行きで見た時と違うのは、行きでは誰も足を止めて見ていなかったのに1時間半経った今、大勢の観客に囲まれてエアギターを披露していた。
僕がR-1を受けている間におじさんが売れていた。R-1に出るまでもなくバレていた。

今日の結果はまだ出ていないけど受かってたらいいな☆

追記 落ちました。

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