2023年 第18戦 資生堂レディス
【どちらが勝っても初優勝】
3日目を終えて、-7で首位に4人が並んだ。岩井明愛、桑木志帆、藤本麻子、そして宮田成華。最終日のペアリングを見て、私は桑木の初優勝を予想した。ギャラリーやテレビカメラは明愛のいる最終組に集中する。初優勝するためにプレッシャー要素は少ないほどいい。首位と同スコアながら最終組の1つ前の組でスタートできた桑木は、序盤連続バーディでペースを掴む。前半でやはり2つ伸ばした明愛に並ばれてはいたが、明愛は1つ後ろの組だ。プレーを目の当たりにすることも、顔を合わせることもない。-9で明愛と並んだまま後半に入り試合が動く。12番でボギーを打った桑木は13番でバウンスバック、そして14番で連続バーディゲット。流れは桑木にあるように見えたが、18番バーディパットが惜しくもはずれ-10でホールアウト。悪くはないが決め手にかける今日の明愛の調子からすると、このまま桑木が優勝してもおかしくないスコアだった。しかし実は最終組ではなく桑木と同じ組に虎視眈々と初優勝を狙う者がいたのだ。昨季ステップアップツアー5勝、今季もっとも初優勝が期待される1人で、プロフにも書いてあるように私が明愛に続いて今季初優勝を願っていた選手、櫻井心那である。神谷そら、穴井詩に続くドライバー飛距離をもつ彼女の武器はもちろんそのキャノン砲だが、今日は渋いパーパットをいくつも決め、桑木に食らいついていた。しかし終盤の16番パー5でバーディを逃した櫻井に対し、桑木は執念のバーディ。ついてしまったこの2打差で今大会での櫻井の初優勝は消滅したと誰もが思ったところ、次の17番、そして18番のセカンドショットに神が舞い降りて連続バーディゲット。特に17番はカップをかすめた“ほぼイーグル”のスーパーショット。ついに桑木とプレーオフに突入することになった。
勢いは明らかに櫻井にあり、PO2ホール目で決着はついた。櫻井心那が見事JLPGAツアー初優勝。
これは神谷そらが今季フジサンケイで初優勝したときに見せた、一度後ろに隠れて終盤急にエンジン全開で差し切る“スリップストリーム”な勝ち方。いや、もしかしたら神谷以上のインパクトかもしれない。プレーオフ1打目のドライバーを満振り、ウイニングパットは下りを壁ドン。しかもこれらすべての所作を顔色ひとつ変えずに行う。どうやら半端ない強メンタルの持ち主のよう。これはもう偶然などでは決してない必然の優勝であった。これからの活躍を大いに大いに期待したい。
それともうひとり書くとするなら、宮田成華だろう。よくここまで戻ってきた。さすがに最終日は疲れてしまったのか、終盤はティショットが暴れてしまい思うようにスコアを伸ばせず、優勝こそ逃してしまったが単独4位は105ptゲット。これでメルセデスランキングを70位まで上げ、シード獲得も夢の話ではなくなってきた。彼女の4日間の戦いに最大級の賛辞を送りたい。
しかし、今季初優勝を期待する選手として名前をあげた2人が、見事にそれを達成してくれたことはたいへんうれしいのだが、観戦する楽しみがひとつ減ってしまったのも事実。だからというわけでもないが(あるが)、次回ミネベアミツミの前にでも、以前番外編(上田桃子の態度が悪い?)で書いた内容の答え合わせでもしてみようかと思う。
最後に菊地絵理香は54位Tで4日間大会を終えた。来週はホステス大会、しかも地元北海道開催だ。そうだ、菊地も間違いなくここに照準を絞っている。香ばしい連中は幸いにもみなアメリカ大会に参加で留守。昨夏に続いて通算6勝目を期待だ!