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「ソトロビマブがオミクロンBA.2に効かない疑惑?」
TONOZUKAです。
ソトロビマブがオミクロンBA.2に効かない疑惑?
以下引用
ようやく新規陽性者数のピークを越えた感じがする新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第6波。ただ当院も含めて、コロナ病棟では入院患者数が多い状態が続いています。入院患者が増えてくると、時折、COVID-19治療薬がうまく“回らない”事態が生じます。
モルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)とソトロビマブ(ゼビュディ)は、基本的に院内在庫がそれぞれ3本(3人分)で、一度に多くの患者さんが入院すると、治療薬の奪い合いのような構図が発生することがあります。となると、結局余っているのがレムデシビル(ベクルリー)だけということもあります(これまで、コロナ病棟でレムデシビルは枯渇したことがありません)。
軽症例に対して、レムデシビルの3日間投与のエビデンスが構築され、なおかつ厚生労働省もこうした使用を認めてくれましたので、当院でも入院軽症例によくレムデシビルが使用されています。
ニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッドパック)は、納入部分の問題なのか、当院では2月24日時点で使用歴がありません。
米国立衛生研究所(NIH)ガイドライン1)では、ニルマトレルビル・リトナビル、ソトロビマブ、レムデシビル、モルヌピラビルのどれか1剤を使用することが推奨されています。諸外国ではあまりモルヌピラビルは使用されていない感じですね。
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さて、現在流行しているオミクロン株はBA.1からBA.2(亜種)に変わっていくだろうと予想されています。BA.2に既に置き換わっている国として、デンマークがあります。この国はEUで初めてコロナ規制の大半を撤廃し、日常生活を取り戻しつつありますが、それがあだになっているのか、BA.2により感染者数や死者数が増えている状況です(感染者数のピークは過ぎたようですが)。
オミクロン株BA.2は、BA.1で見られるスパイク蛋白質の変異の幾つかが認められず、反対にBA.1にはない変異を幾つか有しています。
新型コロナ研究コンソーシアム「G2P-Japan」のシュードウイルスを用いた研究2)では、オミクロン株BA.2の実効再生産数はオミクロン株BA.1よりも1.4倍高いことが示されています(図1)。
この研究では抗体医薬の効果についても検証されています。オミクロン株に対して使われることがなくなった抗体カクテル療法カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)に関して、BA.1、BA.2ともに中和活性が低下していました。現在、大活躍しているソトロビマブについては、従来株よりBA.1、BA.2ともに中和活性が低下していましたが、BA.2の方が目立って悪い数値というわけではなさそうです(図2)。
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しかし、別の研究ではソトロビマブの効果に懸念が示されています3)。ソトロビマブがBA.1およびBA.1+R364K変異に対して従来株と同等の中和活性を示すのに対し、BA.2に対して効果がないレベルに活性が低下しているというものです(図3)。どうやら、スパイク蛋白質のS371F変異の存在が大きく関与しているようです。
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日本では未承認ですが、イーライ・リリーの抗体医薬ベブテロビマブ(bebtelovimab)はオミクロン株のBA.1であってもBA.2であっても中和活性を有していることが示されており、米食品医薬品局(FDA)は2月11日に、ベブテロビマブに緊急使用許可(EUA)を与えています。さすが米国、早いですね。
今回、ご紹介したのはあくまでシュードウイルスを用いた研究かつ、プレプリント論文に書かれている内容であることから、ソトロビマブがBA.2に本当に有効なのか無効なのかはまだ結論が出ていません。いずれにしても使用量が増えているソトロビマブの不足は今後、深刻になりそうで、有効・無効のどちらに転んでも、日本のCOVID-19抗体医薬の状況に混乱が生じそうです。
(参考文献)
1)The COVID-19 Treatment Guidelines Panel's Statement on Therapies for High-Risk, Nonhospitalized Patients With Mild to Moderate COVID-19(NIH、COVID-19 Treatment Guidelines)
2)Yamasoba D, et al. Virological characteristics of SARS-CoV-2 BA.2 variant. bioRxiv preprint doi:10.1101/2022.02.14.480335
3)Iketani S, et al. Antibody Evasion Properties of SARS-CoV-2 Omicron Sublineages. bioRxiv preprint doi:10.1101/2022.02.07.479306
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