「COVID-19による推定超過死亡数は報告数の約3倍の可能性」

TONOZUKAです。

COVID-19による推定超過死亡数は報告数の約3倍の可能性

COVID-19による推定超過死亡数は報告数の約3倍の可能性

以下引用

本コラムでは、Googleが提供する学術雑誌のインパクト指標「h5-index」から、各領域10誌を抽出。それを元に世界中で最も多くツイートされた論文を紹介する。

　3月7～13日に最もツイート数が多かったのは、Lancet誌の「Estimating excess mortality due to the COVID-19 pandemic: a systematic analysis of COVID-19-related mortality, 2020-21」（新型コロナウイルス感染症［COVID-19］パンデミックによる超過死亡率の推定：191カ国を対象にした2020～21年の死亡統計分析）で9068件だった。この論文は、公衆衛生上の意思決定の基礎になる死亡統計を充実させ、COVID-19パンデミックの世界的な影響をより正確に把握するために行われた研究だ。交通事故などでの死亡が減少した可能性がある一方で、COVID-19以外の疾患の治療の遅れによって死亡者が増えた可能性がある。パンデミックの期間中に実際に観察された死亡数と、過去の死亡統計などから予測される死亡数の差から、COVID-19の流行による超過死亡率を推定した。

　死亡統計が整備されている74カ国と266地域については、2020年と2021年の全死因死亡報告データを収集した。その上で、登録の遅れや異常気象による熱波などの影響を除外して、超過死亡率を推定した。全死因死亡率のデータがない場所や期間については、過剰死亡率を予測するための統計モデルを構築した。使用する変数はLASSO（least absolute shrinkage and selection operator）回帰の手法を用いて、血清有病率などのCOVID-19パンデミックに関する共変数と、医療アクセス・品質指数などの背景となる集団健康指標を含む共変数を15種類選択した。

　その結果、2020年1月1日～2021年12月31日の期間に、世界で公式報告されたCOVID-19による死亡数は594万人だったが、パンデミックによる推定死亡数は1820万人（95％不確実性区間1710-1960万人）だった。全ての年代を対象にしたCOVID-19による超過死亡率は、人口10万人当たりで120.3人（113.1-129.3人）だった。人口10万人当たりの超過死亡率が300人を超えた国は21カ国あった。

　国レベルで推定超過死亡数が多いのは、407万人のインド、113万人の米国、107万人のロシア、79万8000人のメキシコ、79万2000人のブラジル、73万6000人のインドネシア、66万4000人のパキスタンなどだった。人口10万人当たりの超過死亡率が最も高かったのは374.6人のロシア、325.1人のメキシコ、186.9人のブラジル、179.3人の米国などだった。

　これらの結果から著者らは、全死因死亡データから推定された超過死亡数は、COVID-19のみを対象にした死亡例の報告数を大きく超えていた。そのため、将来の新たなパンデミックに備える意味でも、世界的な死亡登録システムの強化が重要だと結論している。


　今回注目した論文は、脳神経外科領域でツイート数の多かった「Characteristics of a COVID-19 Cohort With Large Vessel Occlusion: A Multicenter International Study」（急性の大血管閉塞で脳卒中センター50施設に入院したCOVID-19患者の特徴［一般の脳梗塞患者と比較した国際共同研究］）だ。この論文は北米、欧州、中東などにある包括的な治療が可能な脳卒中センター50施設が共同で行ったコホート研究の結果を報告したもの。大血管閉塞（LVO）を起こして脳卒中センターに入院した患者を対象に、COVID-19患者とそれ以外の患者で血行再建術の有効性などに違いが見られるかを調べている。

対象は2018年1月から2020年12月に、LVOで50施設に入院した連続する患者575人。このうち194人がCOVID-19と診断されており、381人はCOVID-19ではなかった。COVID-19群の患者の方が平均年齢は若く（62.5歳と71.2歳）、血管疾患の危険因子を持たない患者の割合が多かった（25.3％と14.2％）。

　治療成績では、Modified thrombolysis in cerebral infarction（mTICI）スコア3の完全再開通を達成した患者の割合は、39.2％と67.2％でCOVID-19群が少なかった。オッズ比は0.4（95％信頼区間0.2-0.7）だった。退院時のmodified Rankin Scale 3～6（中等度の障害～死亡）で、機能回復が不良だった患者の割合は79.8％と66.7％で、COVID-19群に多かった。オッズ比は2.5（1.4-4.5）だった。これらの結果から著者らは、COVID-19はLVOを起こした脳梗塞患者の危険因子であり、年齢が若く危険因子が少ないにもかかわらず、一般のLVO患者よりも予後が悪かったと結論している。

　この期間中に話題となった、各診療科の論文は下記の通り。

内科
Estimating excess mortality due to the COVID-19 pandemic: a systematic analysis of COVID-19-related mortality, 2020-21
http://dx.doi.org/10.1016/s0140-6736(21)02796-3
COVID-19パンデミックによる超過死亡率の推定：191カ国を対象にした2020～21年の死亡統計分析

小児科
School Masking Policies and Secondary SARS-CoV-2 Transmission
http://dx.doi.org/10.1542/peds.2022-056687
学校によるマスク対策の違いはSARS-CoV-2の2次感染率にどのような差を与えたか

皮膚科
Spectrum of Nonkeratinocyte Skin Cancer Risk Among Solid Organ Transplant Recipients in the US
http://dx.doi.org/10.1001/jamadermatol.2022.0036
免疫抑制された米国の臓器移植患者にみる非角化細胞性皮膚癌の危険因子

精神科
Long-Term Cannabis Use and Cognitive Reserves and Hippocampal Volume in Midlife
http://dx.doi.org/10.1176/appi.ajp.2021.21060664
中年期における大麻の長期使用と認知能力や海馬体積との関係

外科
Survival After Hyperthermic Intraperitoneal Chemotherapy and Primary or Interval Cytoreductive Surgery in Ovarian Cancer
http://dx.doi.org/10.1001/jamasurg.2022.0143
初回あるいは中間期腫瘍縮小手術後に腹腔内温熱化学療法を受けた卵巣癌患者の生存率

整形外科
Rehabilitation to improve outcomes of lumbar fusion surgery: a systematic review with meta-analysis
http://dx.doi.org/10.1007/s00586-022-07158-2
腰椎固定術後の成績を改善するためのリハビリテーション：系統的レビューとメタアナリシス

産婦人科
Impact of SARS‐Cov 2 infection on risk of prematurity, birthweight and obstetrical complications: a multivariate analysis from a nationwide, population‐based retrospective cohort study
http://dx.doi.org/10.1111/1471-0528.17135
SARS-CoV-2感染が早産・出生体重・産科合併症に及ぼす影響：フランスの全国データベースを利用したコホート研究

眼科
Association of Strabismus With Mood Disorders, Schizophrenia, and Anxiety Disorders Among Children
http://dx.doi.org/10.1001/jamaophthalmol.2022.0137
小児の斜視と気分障害、統合失調症、不安障害との関連（屈折異常以外の眼疾患がない小児と有病率を比較したコホート研究）

耳鼻咽喉科
A Comparison of the Burden of Thyroid Cancer Among the European Union 15+ Countries, 1990-2019
http://dx.doi.org/10.1001/jamaoto.2021.4549
甲状腺癌による疾病負担の1990年～2019年の変遷をEU15カ国と北米などで国際比較

泌尿器科
Management of Respiratory Failure
http://dx.doi.org/10.2215/cjn.13091021
呼吸不全の管理に関する総説（人工呼吸器が腎機能に及ぼす影響など）

脳神経外科
Characteristics of a COVID-19 Cohort With Large Vessel Occlusion: A Multicenter International Study
http://dx.doi.org/10.1227/neu.0000000000001902
急性の大血管閉塞で脳卒中センター50施設に入院したCOVID-19患者の特徴（一般の脳梗塞患者と比較した国際共同研究）

放射線科
Breast cancer screening in women with extremely dense breasts recommendations of the European Society of Breast Imaging (EUSOBI)
http://dx.doi.org/10.1007/s00330-022-08617-6
デンスブレストの女性が乳癌検診を受ける際の欧州乳房画像学会の推奨（乳房MRI画像の利用）

麻酔科
Role of regional anesthesia and analgesia in enhanced recovery after colorectal surgery: a systematic review of randomized controlled trials
http://dx.doi.org/10.1136/rapm-2021-103256
大腸手術後の回復促進における鎮痛と局所麻酔の役割：系統的レビュー

病理
NKX6-1 Is a Less Sensitive But Specific Biomarker of Chromophobe Renal Cell Carcinoma
http://dx.doi.org/10.1097/pas.0000000000001872
NKX6-1は感度は低いが特異度が高い嫌色素性腎細胞癌のバイオマーカーである

臨床検査
Automated prediction of low ferritin concentrations using a machine learning algorithm
http://dx.doi.org/10.1515/cclm-2021-1194
全血球計算とCRPから貧血患者のフェリチン低値を自動予測する機械学習アルゴリズム

救急科
Tendency to call an ambulance or attend an emergency department for minor or non-urgent problems: a vignette-based population survey in Britain
http://dx.doi.org/10.1136/emermed-2020-210271
軽症で緊急性がないのに救急車を呼んだり救急外来を受診する傾向の分析：「こんな時にあなたならどうしますか？」という場面を設定した英国の住民調査

形成外科
Tear Trough Filler Techniques Utilizing Hyaluronic Acid: A Systematic Review
http://dx.doi.org/10.1097/prs.0000000000008990
ヒアルロン酸涙液注入法について検討した論文の系統的レビュー

リハビリテーション科
Experiences of receiving a diagnosis of multiple sclerosis: a meta-synthesis of qualitative studies
http://dx.doi.org/10.1080/09638288.2022.2046187
多発性硬化症の診断を受けたときの経験：患者の受け止め方や感情を調べた定性的研究をまとめる試み

総合診療科
Association of Vaccination with the Persistence of Post-COVID Symptoms
http://dx.doi.org/10.1007/s11606-022-07465-w
COVID-19急性期後の後遺症とワクチンの関係

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