「感染初期のイベルメクチン投与はCOVID-19入院を減らさない」
TONOZUKAです。
感染初期のイベルメクチン投与はCOVID-19入院を減らさない
以下引用
本コラムでは、Googleが提供する学術雑誌のインパクト指標「h5-index」から、各領域10誌を抽出。それを元に世界中で最も多くツイートされた論文を紹介する。
3月28日~4月3日に最もツイート数が多かったのは、NEJM誌の論文「Effect of Early Treatment with Ivermectin among Patients with Covid-19」(新型コロナウイルス感染症[COVID-19]患者の早期に投与したイベルメクチンの有効性)の2万3191件だった。この論文はブラジルのMinas Gerais州で行われ、COVID-19の治療薬候補を複数検討した臨床試験で、候補の1つであるイベルメクチンのデータをまとめたものだ。
イベルメクチンは元々抗寄生虫薬として用いられている薬だが、in vitroで抗ウイルス活性を示したため、COVID-19の治療薬候補の1つに上がった。この研究は、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル・リトナビル、メトホルミン、ドキサゾシン、PEGインターフェロン、フルボキサミンなども治療薬候補になっており、全体では3515人の患者が参加したランダム化比較試験だ。
イベルメクチンの試験は、2021年3月23日~8月6日に募集した患者に対して行われた。組み入れ対象は、年齢18歳以上の外来クリニックを受診したCOVID-19患者で、発症から7日以内の人。COVID-19が重症化する危険因子(年齢50歳以上、高血圧、糖尿病、肥満、慢性腎疾患など)が少なくとも1つあることを条件とした。ワクチンの接種を受けたことがある患者も参加可能とした。イベルメクチンに割り付けられた患者は、体重1kg当たり400μgの用量を1日1回3日間服用した。主要評価項目は割り付けから28日後までのCOVID-19による入院と救急受診とした。
1358人の患者をイベルメクチン群とプラセボ群に679人ずつランダムに割り付けた。年齢は中央値で49歳(四分位範囲38~57歳)、58.2%が女性患者だった。入院または救急受診した患者は、イベルメクチン群100人(14.7%)、プラセボ群111人(16.3%)、相対リスクは0.90(95%信頼区間0.70-1.16)で、両群の差は有意ではなかった。わが国で疥癬治療に承認されているイベルメクチンの用量は体重1kg当たり200μgなので、倍の用量を投与しても入院患者を減らす効果は得られなかったことになる。
今回注目した論文は、整形外科領域でツイート数の多かった「Persistent Tennis Elbow Symptoms Have Little Prognostic Value: A Systematic Review and Meta-analysis」(テニス肘の症状が持続しても予後とは関連しない:系統的レビューとメタアナリシス)だ。テニス肘は正確には上腕骨外側上顆炎のことで、テニス愛好家に多かったため名付けられたが、原因はスポーツだけに限らない。症状が強い場合は、軽いものを持つだけで強い痛みを伴い、日常生活に支障を来す。症状が改善するまで安静を心掛け、鎮痛薬などを処方されることが多いが、症状が持続する場合は手術が勧められることもある。
この研究は、テニス肘患者を対象に追跡期間が6カ月以上のランダム化比較試験で、積極的治療を受けなかったプラセボ群や無治療群に着目したメタアナリシスだ。2019年8月12日までにMEDLINE、Embase、CENTRALに登録された研究から、条件を満たすRCTを抽出した。グローバルな症状改善、痛み、障害のアウトカムを調べている。24件の研究で、積極的治療を受けていない患者は1085人いた。治療群の主な内容は、ステロイドの注射が7件、衝撃波治療が4件、理学療法3件、血小板注射2件、レーザー治療2件、ヒアルロン酸やグルコサミン2件、などだった。
積極的な治療を受けていない患者群でも、全般的な有症状者の割合は2.5~3カ月で半減していた。12カ月後までに89%(95%信頼区間80-97%)の患者が、オリジナルの研究で治療が成功した場合の定義と同じ状況まで症状が改善していた。疼痛スコアも同様で、3~4カ月で半減し、12カ月後には88%(70-100%)の患者で痛みが解消していた。機能障害スコアも同様で、3~4カ月で半減し、ベースラインに比べ1年後には85%(60-100%)の患者で明確な改善が見られた。これらの結果から著者らは、症状が持続している患者でも、その後に自然治癒する可能性が少なくないため、手術を推奨することは支持されなかったと結論している。
この期間中に話題となった、各診療科の論文は下記の通り。
内科
Effect of Early Treatment with Ivermectin among Patients with Covid-19
http://dx.doi.org/10.1056/nejmoa2115869
COVID-19患者の早期に投与したイベルメクチンの有効性
小児科
Re‐evaluation of medical findings in alleged shaken baby syndrome and abusive head trauma in Norwegian courts fails to support abuse diagnoses
http://dx.doi.org/10.1111/apa.15956
虐待による頭部外傷が疑われたノルウェーの裁判所事例を再評価したところ当初の結論は支持されず
皮膚科
Global Burden of Cutaneous Melanoma in 2020 and Projections to 2040
http://dx.doi.org/10.1001/jamadermatol.2022.0160
2020年時点の皮膚黒色腫の世界的な負担の差と2040年までの展望
精神科
Benzodiazepine use and neuroimaging markers of Alzheimer’s disease in nondemented older individuals: an MRI and 18F Florbetapir PET study in the MEMENTO cohort
http://dx.doi.org/10.1038/s41386-021-01246-5
非認知症高齢者のベンゾジアゼピン系薬の使用はアルツハイマー病の神経画像マーカーと関連があるか?:MEMENTOコホート研究のMRIとPET画像
外科
Postpancreatectomy Acute Pancreatitis (PPAP)
http://dx.doi.org/10.1097/sla.0000000000005226
膵切除術後の急性膵炎(International Study Group on Pancreatic Surgeryによる定義の設定)
整形外科
Persistent Tennis Elbow Symptoms Have Little Prognostic Value: A Systematic Review and Meta-analysis
http://dx.doi.org/10.1007/s00586-022-07181-3
テニス肘の症状が持続しても予後とは関連しない:系統的レビューとメタアナリシス
産婦人科
Associations between ethnicity and admission to intensive care among women giving birth: a cohort study
http://dx.doi.org/10.1111/1471-0528.16891
出産する女性のICU使用率に民族的な差はあるか?(黒人女性は出血によるICU利用率が高い)
眼科
Cataract Surgery and the Risk of Developing Late Age-Related Macular Degeneration
http://dx.doi.org/10.1016/j.ophtha.2021.11.014
白内障手術とその後の加齢黄斑変性発症リスク(手術はリスクを増やさない)
耳鼻咽喉科
The impact of comorbid allergic airway disease on the severity and mortality of COVID-19: a systematic review and meta-analysis
http://dx.doi.org/10.1007/s00405-021-07072-1
アレルギー性気道疾患はCOVID-19の重症度や死亡率に影響するか?:系統的レビューとメタアナリシス
泌尿器科
Advances in Understanding of Pathogenesis and Treatment of Immune-Mediated Kidney Disease: A Review
http://dx.doi.org/10.1053/j.ajkd.2021.07.019
最近の研究による免疫介在性腎疾患の病態解明と治療の進歩に関するレビュー
脳神経外科
Ivy sign: a diagnostic and prognostic biomarker for pediatric moyamoya
http://dx.doi.org/10.3171/2021.11.peds21384
アイビーサイン:MRIのFLAIR画像所見は小児のもやもや病のマーカーとして役立つ
放射線科
O-RADS MRI Risk Stratification System: Guide for Assessing Adnexal Lesions from the ACR O-RADS Committee
http://dx.doi.org/10.1148/radiol.204371
O-RADS MRIリスク層別化システム:米国放射線学会の委員会が作成した付属器病変の評価のためのガイド
麻酔科
Implementing advance care plans in the peri‐operative period, including plans for cardiopulmonary resuscitation: Association of Anaesthetists clinical practice guideline
http://dx.doi.org/10.1111/anae.15653
周術期の心肺蘇生を含むアドバンス・ケア・プランニングの実施:英国麻酔科医会臨床実践ガイドライン
病理
Signals of Significantly Increased Vaccine Breakthrough, Decreased Hospitalization Rates, and Less Severe Disease in Patients with Coronavirus Disease 2019 Caused by the Omicron Variant of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 in Houston, Texas
http://dx.doi.org/10.1016/j.ajpath.2022.01.007
テキサス州ヒューストンのCOVID-19患者は、オミクロン株によりブレークスルー感染が増え、入院率や重症患者の割合は減少した
臨床検査
Low clinical utility of testing for anti-platelet factor 4 in asymptomatic individuals after ChAdOx1 nCoV-19 vaccine
http://dx.doi.org/10.1111/ijlh.13774
ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後の無症候者では抗血小板因子4抗体検査の有用性は低い
救急科
Continuation of outpatient buprenorphine therapy after dispensing Buprenorphine-Naloxone from the emergency department
http://dx.doi.org/10.1080/15563650.2021.1968421
救急受診時にブプレノルフィン-ナロキソンを調剤した後の外来でのブプレノルフィン治療継続状況の調査
形成外科
Assessing Long-Term Outcomes in Breast Implant Illness: The Missing Link? A Systematic Review
http://dx.doi.org/10.1097/prs.0000000000009067
乳房インプラント関連疾患の長期成績の評価:系統的レビュー
リハビリテーション科
Effectiveness of brief patient information materials for promoting correct beliefs about imaging and inevitable consequences of low back pain: A randomised controlled trial
http://dx.doi.org/10.1177/02692155211065974
腰痛の画像診断と必然的な結末について正しい理解を促すための簡単な患者用情報資料はどんな形式が有効か?
総合診療科
No association between breast pain and breast cancer: a prospective cohort study of 10 830 symptomatic women presenting to a breast cancer diagnostic clinic
http://dx.doi.org/10.3399/bjgp.2021.0475
乳房痛と乳癌の関連はない:乳癌クリニックを受診した有症状女性10830人のコホート研究
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