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「肺移植を受けたCOVID-19患者30症例の報告」

TONOZUKAです。


肺移植を受けたCOVID-19患者30症例の報告

以下引用

米国Northwestern大学の栗原知多流氏らは、同大学医療センターで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連呼吸窮迫症候群(ARDS)により肺移植を受けた患者と、それ以外の疾患により肺移植を受けた患者の臨床特性や転帰を比較する症例シリーズ研究を行い、COVID-19関連肺移植患者の転帰は良好だったと報告した。結果は2022年1月27日のJAMA誌電子版に掲載された。

 COVID-19によるARDSが重症化すると、末期の特発性肺線維症と類似した、重度で不可逆的な肺実質の損傷を引き起こす可能性がある。進行した特発性肺線維症では、最終的に肺移植が唯一の選択肢となる場合が多い。しかし、COVID-19パンデミック以前は、ARDSは肺移植の対象とは考えられていなかった。

 2021年5月9日に、米国、オーストリア、イタリア、インドからなる多国籍コンソーシアムが、COVID-19関連ARDSに対する肺移植について検討するためのガイドラインを提示した。しかしその時点では、COVID-19患者に肺移植を行った場合の長期的な転帰に関する情報はなかった。

 著者らは、Northwestern大学医療センターで、COVID-19関連のARDSを発症し肺移植を受けた患者の、特性と転帰について報告するために、後ろ向きケースシリーズ研究を実施した。2020年1月21日から2021年9月30日までの期間に同病院で肺移植を受けた連続する102人の患者のうち、30人がCOVID-19関連ARDSだった。

 同病院では、学際的なチームが、COVID-19によるARDS発症から4~6週以上が経過し、肺の回復は望めないと判断された患者を肺移植の対象の候補とした。年齢が70歳以下で、24時間間隔で行われた2回のPCR検査の結果はいずれも陰性で、肺のみが機能不全の状態に有り、BMIが35以下、といった条件を満たした患者に移植を行った。COVID-19関連ARDSによる肺移植患者は全員が両肺移植を受けていた。

 COVID-19ではない肺移植患者も含めて、患者の人口統計学的特性、臨床データ、臨床検査値、治療に関する情報を得て分析した。主要評価項目は肺移植の転帰とし、術後の合併症、ICU滞在期間と入院期間、生存についても検討した。追跡は2021年11月15日まで行った。

 肺移植を受けたCOVID-19関連ARDS患者30人の年齢の中央値は53歳(範囲は27~62歳)で、女性が43%を占めていた。慢性の末期肺疾患により肺移植を受けていた非COVID-19患者72人の年齢の中央値は62歳(範囲は22~74歳)で、女性が44%だった。COVID-19関連ARDS発症から移植までの日数の中央値は104日だった。COVID-19関連ARDS患者にSARS-CoV-2ワクチンを接種済みの人はおらず、非COVID-19群では1人が接種を受けていた。

 COVID-19群の17人(56.7%)には、移植直前までVV(静脈脱血-静脈送血)ECMOが適用されており、他に4人(13.3%)が侵襲的な換気を受けていた。非COVID-19群では、VV ECMO装着は1人(1.4%)で、侵襲的換気を受けていた患者も2人(2.8%)に留まっていた。

 COVID-19患者とそれ以外の患者を比較すると、レシピエント選定のためのリスクスコア化システムであるLAS(lung allocation score)のスコアの中央値は85.8(四分位範囲69.4~87.5)と46.7(38.9~54.3)で、Karnofsky Performance Status(KPS)のスコアの中央値は30(20~40)と50(40~60)だった。また、移植待機リストに掲載されていた期間の中央値はそれぞれ11.5日(5.2~26.0日)と15日(6.0~60.0日)だった。待機リストに掲載されている間の死亡率は18.9%と7.6%だった。

移植手術中の濃厚赤血球輸血量の中央値は、COVID-19患者が中央値6.5単位(2~10単位)、非COVID-19患者は0単位(0~2単位)だった。また、新鮮凍結血漿の投与量は1単位(0~5単位)と0単位(0~0単位)、血小板製剤の投与量は0.5単位(0~2単位)と0単位(0~0単位)だった。術中のVA(静脈脱血-動脈送血)ECMO適用は96.7%と62.5%だった。手術時間の中央値は8.5時間(8~9.7時間)と7.4時間(5.8~8.3時間)だった。

 術後72時間以内の移植肺機能不全(国際心肺移植学会の基準に基づいてグレード1-3)は、COVID-19患者の70.0%と非COVID-19患者の20.8%に発生した。術後に侵襲的な換気を受けた期間の中央値は6.5日(2~17日)と2.0日(1~4日)で、ICU入院期間の中央値は、18日(12~24.5日)と9日(6~15日)、肺移植後の入院期間の中央値は28.5日(18.3~37.8日)と16日(11~28.5日)だった。

 13.3%と5.5%が慢性血液透析患者となった。一方で、KPSスコアが移植後に改善した患者の割合は84.8%と11%だった。肺移植を受けたCOVID-19患者の中に抗体介在性拒絶反応は認められなかったが、非COVID-19患者では12.5%に起こっていた。

 追跡終了時点で、COVID-19関連ARDSによる肺移植患者は30人全てが生存していた。移植からの追跡期間の中央値は351日(四分位範囲176~555日)だった。非COVID-19患者では、追跡期間の中央値488日(368~570日)の時点で、60人(83.3%)が生存していた。

 これらの結果から著者らは、米国の単独の施設で肺移植を受けた連続する102人の患者のうち、COVID-19関連ARDSだった患者30人は、約1年後までの追跡で全員が生存していたと結論している。この研究は米国National Institutes of Healthの支援を受けている。

 原題は「Clinical Characteristics and Outcomes of Patients With COVID-19 Associated Acute Respiratory Distress Syndrome Who Underwent Lung Transplant」、概要はJAMA誌のウェブサイトで閲覧できる。




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