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「未だ「空気感染を認めない」日本のコロナ政策の謎」

TONOZUKAです。


未だ「空気感染を認めない」日本のコロナ政策の謎

以下引用

国立感染症研究所が1月に公表した「新型コロナウイルスの感染経路」の記述に間違いがあるのではないか――。2月1日、感染症や物理学などの有識者8人が連名で国立感染症研究所の脇田隆字所長に公開質問状を送った。

質問者を代表する東北大学大学院理学研究科の本堂毅氏は、「正直、目を疑いました。複数の専門家と話をして、これは〝前代未聞の記述〟ということで、公開質問状を出すことにしました」とあきれ顔だ。本堂氏は、病気と室内換気との関係についての研究で知られる日本臨床環境医学会に所属している物理学の専門家だ。

有識者が問題視している記述とは、感染研のホームページにある「SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第6報)」の中の、「ウイルスの性状・臨床像・疫学に関する評価についての知見/感染・伝播性」という部分の一部だ。

少し長くなるが、その一部を引用する。
「実地疫学調査から得られた暫定的な結果からは、従来株やデルタ株によるこれまでの事例と比較し、感染・伝播性はやや高い可能性はあるが、現段階でエアロゾル感染を疑う事例の頻度の明らかな増加は確認されず、従来通り感染経路は主に飛沫感染と、接触感染と考えられた。また、多くの事例が従来株やデルタ株と同様の機会(例えば、換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起こっていた。基本的な感染対策(マスク着用、手指衛生、換気の徹底等)は有効であることが観察されており、感染対策が守られている場では大規模な感染者発生はみていない」
本堂氏は言う。

「ご存じのように、感染研のレポートは政府や自治体の新型コロナウイルス感染対策の基本データとして使われるものです。不正確な報告書に基づいて対策が実施されれば、学校や家庭、飲食の場、乗り物、オフィスなど、さまざまな場所で不要な感染が広がることになります」
では、この記述の何が問題なのか。本堂氏は2つの問題を指摘する。1つは「論理的に問題があると思われる記述がある点」、もう1つは「世界的なコンセンサスが得られている考え方と一致しない記述が見られる点」だ。

まず、1つめの問題点は、「換気が不十分な屋内や飲食の機会で感染が広まっているとする一方で、現段階でエアロゾル感染を疑う事例の頻度の明らかな増加は確認されず」としているところだ。

「〝換気が不十分なところで感染が起こる〟と述べている一方で、〝エアロゾル感染は増加していない〟という。これは明らかにおかしい記述です」

昨年から新型コロナ感染は〝空気感染(空中を浮遊するエアロゾルを通して感染が広がる状態)〟が主な感染ルートであると主張している本堂氏ら(詳しくは、前回記事『38人の科学者が提言「空気感染」から身を守る方法』)。空気感染だからこそ換気が必要になると考えるのが普通だが、感染研は〝空気感染ではないが、換気は必要〟といっているわけだ。

そもそも、これは2つめの問題にも通じるが、本堂氏によると、新型コロナウイルスはオミクロン株に限らず、従来株からずっと主に空気感染で広がるということは、国際的なコンセンサスとなっているという。

例えば、WHO(国際保健機関)では2021年12月23日に更新したホームページでは、〝ウイルスは感染者の至近距離にいる人たちが感染者の咳やくしゃみ、会話、咳、呼吸をしたときに感染する〟としていて、これを近距離のエアロゾル(short-range aerosol)あるいは、近距離の空気感染(short-range airborne transmission)としている。しかも〝ウイルスが広がる(can spread virus)〟と断定調で書かれている。

これに対して、ウイルスに汚染された表面や物に触れた後に目や鼻、口を触ることで感染する、いわゆる接触感染については〝かもしれない(may)〟という表記にとどまっている。

WHOだけでなく、アメリカのCDC(アメリカ・疾病対策センター)でも昨年5月には主要な感染ルートは空気感染であると述べている。

「少なくとも海外の論文を読んでいる研究者なら、〝新型コロナの主な感染ルートは空気感染である〟とわかっています。それなのに、なぜ感染研だけが頑なに飛沫感染と接触感染を主張するのか、まったくわかりません」

今年に入り、特にオミクロン株の流行が始まってからは、周囲に感染者(陽性者)や濃厚接種者が明らかに増えた人も多いだろう。政府や分科会が呼びかけている「基本的な感染対策(マスク着用、手指衛生、換気など)の徹底」だけでは、もはや十分でないと感じている人もいるはずだ。

実際、本堂氏らの有識者のもとに、学校や高齢者施設の関係者からの問い合わせが増えている。
「感染ルートの優先順位にわれわれがこだわるのは、対策を講じるために非常に重要だからです。人もお金も潤沢にあるわけではない中、限られたリソースのなかで重み付けをして配分していかなければなりません。でも現状は、われわれから見て優先順位が低いものを手厚くしているように思えてなりません」

さて、この公開質問状の提出から1週間経った2月8日、本堂氏に感染研から回答が届いた。それを紹介する。

「ご質問の内容につきましては、研究者の間で議論の途上にあるところと認識しており、学術界において科学的な知見を基に合意形成がなされていくべきものと考えております。国立感染症研究所といたしましては、今回お問い合わせのあったご意見も参考にしながら、今後とも最新の科学的な知見に基づき感染症対策に資する情報発信を適切に行っていく所存です」


これを受け取った本堂氏は、肩を落とす。

「新型コロナの関係に限らず、すべての科学は研究の途上、議論の途上です。『研究者の間で議論の途上にある』というのは、永遠に使えるマジックワードでしかない。一方で、『最新の科学的な知見に基づき感染症対策に資する情報発信を適切に行っていく』といっていますが、新型コロナが空気感染するということは、最新の科学の知見です」

さらにこうも言う。

「感染研も科学者の集団であり、“独自の見解”でもって接触感染や飛沫感染を重視するのであれば、その根拠となるエビデンスを示してほしい。〝○○という根拠があるから、WHOやCDCとは違った見解である〟と」

感染研は1月26日に「SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第7報)」を出した。

感染経路については、「国内の流行初期の多くの事例が従来株やデルタ株と同様の機会(例えば、換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起こっていると考えられた」という記述にとどめられていた。

本件に関して、編集部からも感染研に問い合わせたが、「当該取材につきましては、質問者様にこちらから回答したことが全てでございますので取材は承ってございません」との回答だった。



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