「ワクチン接種後の有害事象にもノセボ反応は多い」
TONOZUKAです。
ワクチン接種後の有害事象にもノセボ反応は多い
以下引用
米国Harvard大学医学部のJulia W. Haas氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの臨床試験を対象にして、ワクチン群とプラセボ群の有害事象の頻度を検討する系統的レビューとメタアナリシスを行い、ワクチン群が経験した全身性の有害事象の半数以上はノセボ反応と見なせると報告した。結果は2022年1月18日のJAMA Network Open誌電子版に掲載された。
SARS-CoV-2ワクチン接種が世界各国で行われているが、どの国にも一定数のワクチン忌避者が存在する。ワクチン拒否の理由は様々だが、有害事象に対する懸念を訴える人が少なくない。一方、SARS-CoV-2ワクチンの臨床試験では、プラセボ群からも様々な有害事象が報告されている。その中にはノセボ反応が含まれると考えられ、有害事象が起こるはずだという思い込みによる不安などから症状が現れたように感じたり、実は以前からあった症状であるにもかかわらず接種がきっかけで起こったと誤解した場合などが想定されている。
近年の研究では、臨床試験を実施する際に、起こり得る有害事象やノセボ反応についてあらかじめ説明しておくと、有害事象に関係する不安とノセボ反応を軽減できる可能性が報告されている。しかし、ワクチン接種後のノセボ反応についての検討は、あまり行われていなかった。そこで著者らは、SARS-CoV-2ワクチンの臨床試験でプラセボ群に報告された有害事象の頻度をワクチン群と比較するために、系統的レビューとメタアナリシスを計画した。
対象は、年齢16歳以上の被験者にCOVID-19ワクチンを使用したランダム化比較試験で、英語で公表された研究論文とし、2021年7月14日までにMedlineとコクランセントラルで検索可能なものとした。ワクチン群とプラセボ群の両方について、接種後7日間の予想される有害事象を報告している研究を組み入れた。ただし、プラセボ群に投与するのは生理食塩水などに限定し、アジュバントなどの何らかの活性成分を含んでいた試験は除外した。この研究では接種後7日間の有害事象を分析対象とし、その後の長期観察で報告された有害事象はメタアナリシスに含めないことにした。
主要評価項目は、プラセボ群で報告された全身性と注射部位の有害事象とした。ワクチン群との群間差を評価するためにオッズ比を対数化してZ検定を行い、95%信頼区間を算出した。
文献検索で見つかった87件の記事のうち、フルテキストを閲覧できたのが27件、このうち条件を満たした12件のデータを分析対象にした。参加者は合計で4万5380人、割り付けはワクチン群2万3817人、プラセボ群2万2578人だった。試験で用いられていたワクチンは、mRNAを使用したmRNA-1273(Moderna社)とBNT162b1(BioNTech/Pfizer社)、ベクターを使用したChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca社)とAd26.COV2.S(Johnson & Johnson社)、蛋白質を使用したNVX-CoV2373(Novavax社)、SCB-2019(Clover社)、CoV2 preS dTM(Sanofi Pasteur社)だった。
1回目の接種後には、プラセボ群の35.2%(95%信頼区間26.7-43.7%)が全身性の有害事象を1つ以上経験していた。頻度が高かったのは頭痛の19.3%(13.6-25.1)と、疲労感の16.7%(9.8-23.6)だった。局所の有害事象を1つ以上報告していたのはプラセボ群の16.2%(11.3-21.1)だった。ワクチン群で、全身性の有害事象を1つ以上報告した人は46.3%(38.2-54.3%)で、1つ以上の局所の有害事象を報告した人は66.7%(53.2-80.3%)だった。
プラセボ群が報告した有害事象をノセボ反応と仮定すると、初回のワクチン接種後に現れる全身性の有害事象のうちの76.0%と、局所の有害事象のうちの24.3%がノセボ反応と推定された。
2回目の接種後は、プラセボ群の31.8%(28.7-35.0%)が全身性の有害事象を、11.8%(6.6-17.1%)が局所の有害事象を報告していた。頻度が高かった全身性の有害事象は、頭痛の16.2%(12.5-19.8)と疲労感の14.9%(9.8-20.1)だった。
プラセボ群が報告した有害事象は、1回目の接種後に比べ2回目の接種後の方が有意に少なかった。全身性のあらゆる有害事象の対数オッズ比は0.33(0.18-0.47)、局所のあらゆる有害事象の対数オッズ比は0.22(0.08-0.36)だった。一方、ワクチン群では逆に、2回目の接種後の方が有害事象の報告頻度は高く、61.4%(47.4-75.4%)が全身性の有害事象を、72.8%(57.4-88.2%)が局所の有害事象を報告していた。
ワクチン群では、1回目の接種後に比べ2回目の接種後の方が有害事象の頻度が高い傾向を示したが、全身性のあらゆる有害事象の対数オッズ比は-0.71(-1.16から-0.26)で差は有意だったが、局所のあらゆる有害事象の対数オッズ比は-0.29(-0.73から0.14)で有意ではなかった。
プラセボ群が報告した有害事象をノセボ反応と仮定すると、2回目の接種後のノセボ反応の割合は、全身性の有害事象の51.8%と局所の有害事象の16.2%と推定された。
1回目接種後の両群の全身性の有害事象の発生率の差は、対数オッズ比が-0.47(-0.54から-0.40)となり、標準化平均差にすると-0.26(-0.30から-0.22)になった。1回目接種後のあらゆる局所の有害事象の差は、対数オッズ比は-2.44(-3.21から-1.66)で、標準化平均差にすると-1.34(-1.77から-0.92)だった。
同様に2回目の接種後は、全身性が対数オッズ比-1.36(-1.86から-0.86)、標準化平均差-0.75(-1.03から-0.47)、局所が対数オッズ比-3.15(-3.91から-2.39)、標準化平均差-1.74(-2.16から-1.32)になった。
このように、ワクチン群の方がプラセボ群より有害事象を報告した人の割合は有意に高く、初回接種後より2回目の接種後の方が、また、全身性の反応に比べ局所の反応の方が、両群間の差は大きかった。
これらの結果から著者らは、SARS-CoV-2ワクチンの臨床試験に参加し、プラセボ群に割り付けられた患者のおおよそ3人に1人が全身性の有害事象を報告しており、ワクチン群とプラセボ群の有害事象の頻度の差から推定したノセボ反応は、1回目の接種後は76.0%、2回目の接種後は51.8%だったと結論している。
原題は「Frequency of Adverse Events in the Placebo Arms of COVID-19 Vaccine Trials A Systematic Review and Meta-analysis」、概要はJAMA Network Open誌のウェブサイトで閲覧できる。
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