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「小児コロナ症例、重症化傾向に変化はあるのか」
TONOZUKAです。
小児コロナ症例、重症化傾向に変化はあるのか
以下引用
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の日本国内の小児例において、臨床症状と重症度の変遷が明らかになった。2020年2月から2021年7月の流行初期に40%ほどに認めた発熱は、オミクロン株流行期に入って80%に増加。また、肺炎の合併頻度は成人に比べて低率で推移し、デルタ株やオミクロン株の流行期でも大きな変動は認められなかった。日本小児科学会が実施しているレジストリ調査の結果で、2022年3月7日に中間報告・第3報として公開された。
日本小児科学会は2020年5月から、国内小児のCOVID-19レジストリ調査を継続している。2022年2月28日時点での登録数は5472例(写真1)。全例が把握されているわけではないが、日本の小児コロナ症例における「異変」をキャッチする上で貴重なレジストリとなっている。
今回公表された中間報告・第3報は、臨床症状と重症度の変化に焦点を当てて解析している。調査対象は、2020年2月1日から2022年2月20日の間に、レジストリに登録された0~15歳の5129例。
解析は、国内における主要な流行株をもとに、(1)流行初期(2020年2月~2021年7月)、(2)デルタ株流行期 (2021年8月~12月)、(3)オミクロン流行期(2022年1月〜2月20日)の3期に分類して行った。それぞれの症例数は、流行初期が1830例(55.2%)、デルタ流行期が1241例(24.2%)、オミクロン株流行期が1058例(20.6%)だった。
解析の結果、臨床症状では以下の5点が明らかになった。
(1)発熱:流行初期に41.0%に認めたが、オミクロン株流行期には80.6%と増加した。
(2)痙攣:熱性痙攣の好発年齢である1~4歳において、流行初期に11例(1.3%)、デルタ株流行期に10例(3.0%)だったが、オミクロン株流行期には22例(9.4%)と増加していた。さらに5~11歳の年長児においても、流行初期で4 例(0.4%)、デルタ株流行期で0例(0.0%) だったが、オミクロン株流行期には18例(3.5%)と増加していた。
(3)味覚・嗅覚障害:デルタ株流行期まではコロナの特徴的な症状として、年長児以降で認めていた。しかし、オミクロン株流行期ではほとんど認めなかった。
(4)咽頭痛:オミクロン株流行期では、それ以前と比べ、咽頭痛を訴える割合が26.1%と増加していた。
(5)悪心・嘔吐:オミクロン株流行期に、特に5~11歳において認める割合が14.5%と増加した(流行初期4.4%、デルタ株流行期6.1%)。一部の患者においては補液や入院管理が必要となっていた。
オミクロン株流行期に入ってからの特徴は、発熱が倍増し、痙攣が熱性痙攣の好発年齢である1~4歳だけでなく、5~11歳の年長児においても増加している点だ。また、咽頭痛を訴える症例が増え、悪心・嘔吐も特に5~11歳において割合が増えていた。このうち、悪心・嘔吐のために「一部の患者においては補液や入院管理が必要となっていた」ことは懸念される。一方で、味覚・嗅覚障害はほとんど見られておらず、コロナに特徴的な症状が薄れていることには留意すべきだろう。
「小児患者の重症化傾向は確認されなかった」
また、重症度では以下の4点が明らかになった。
(1)入院の割合は、流行初期 79.4%、デルタ株流行期53.4%、オミクロン株流行期28.6%と経時的に減少傾向を認めた。しかし、流行初期は隔離目的、経過観察目的などによる入院が含まれていた可能性が高いことから、「入院率で各流行期における重症度を評価することは困難」と結論している。なお、PICU入院率は、各流行時期で大きな変化を認めていない。
(2)酸素需要、呼吸・循環管理、抗ウイルス薬、抗体療法、ステロイド全身投与などの治療の実施は、デルタ株やオミクロン株などが流行した後も大きな変動は認めなかった。
(3)小児例における肺炎の合併は、流行初期に1.1%、デルタ株流行期に1.6%、オミクロン株流行期に1.3%だった。肺炎の合併は、成人と比較し低率であり、デルタ株やオミクロン株などの変異株流行においても変化は認めなかった。その他の合併症に関しても、デルタ株やオミクロン株などが流行した後も、それぞれの頻度に大きな変動は認めなかった。
(4)合併頻度は高くないものの、重篤な合併症である心筋炎・心外膜炎が、流行初期に0.2%、デルタ株流行期に0.1%に認めた。オミクロン株流行期には、今のところ認めていない。
今回の報告は、対象症例の62.6%が入院例だった。また、レジストリに登録されているのは国内小児コロナ症例の0.5%に過ぎないことから、調査結果をまとめた日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会は「国内においてはレジストリに登録されていない軽症外来患者が多数存在する」と推定。「レジストリには比較的重症度が高い症例が登録されている可能性が想定される」としている。
その上で同委員会は、比較的重症度が高い症例が登録されているレジストリにもかかわらず、「オミクロン株を含む変異株の流行による小児患者の重症化傾向は確認されなかった」と結論付けている。ただし、オミクロン株流行後に、発熱、痙攣、咽頭痛、嘔吐などの症状の出現頻度が増加している点に懸念を示し、「今後オミクロン株のさらなる流行拡大による小児コロナ症例の絶対数の急激な増加が臨床症状や重症度に与える影響を引き続き注視していく必要がある」と結んでいる。
■参考文献
・「データベースを用いた国内発症小児Coronavirus Disease 2019 (COVID 19) 症例の臨床経過に関する検討」の中間報告(日本小児科学会)
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