「COVID-19患者を覚醒時に腹臥位にするのはお勧めか?」
TONOZUKAです。
COVID-19患者を覚醒時に腹臥位にするのはお勧めか?
以下引用
フランスF-CRIN research networkのStephan Ehrmann氏らは、COVID-19肺炎で高流量鼻カニューレ酸素療法を受けている患者を対象に、覚醒時にできるだけ腹臥位を保ってもらう方法と、標準的な治療を比較するオープンラベルのランダム化試験を6カ国で行い、腹臥位群の患者は、挿管が必要になる割合が低かったと報告した。結果は2021年8月20日のLancet Respiratory Medicine誌電子版に掲載された。
これまでにも小規模な観察研究で、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者やCOVID-19患者の治療中に、患者の体位を腹臥位にすると酸素化が改善することが報告されていた。しかし、腹臥位での治療継続が患者のアウトカム改善につながるかどうかは確認されていなかった。そこで著者らは、覚醒時の腹臥位療法が、COVID-19患者の挿管や死亡リスク減少に役立つかを調べるために、6カ国(カナダ、フランス、アイルランド、メキシコ、米国、スペイン)の病院で行われたオープンラベルのランダム化比較試験のデータを統合するメタトライアルを実施した。
組み入れ対象は、COVID-19肺炎による急性低酸素血症性呼吸不全で、SpO2/FiO2比が315以下(PaO2/FiO2比300以下に相当)であり、高流量鼻カニューレ酸素療法が必要な18歳以上の患者。血行動態の不安定な患者、BMIが40を超える肥満患者、腹臥位が禁忌な状態に該当する患者は組み入れから除外した。
条件を満たした患者は1対1の割合でランダムに、覚醒時腹臥位療法または標準ケアに割り付けた。腹臥位群には、目覚めている時間帯にできるだけ頻繁に、できるだけ長く腹臥位を取るよう指示し、介助した。担当看護師が腹臥位継続時間を記録した。試験中の酸素投与量は、SpO2が90~95%の間を保つように調整した。
主要評価項目は、登録から28日以内の治療失敗を示す複合イベント(挿管の実施または死亡)に設定した。副次評価項目は、28日後までの挿管、死亡、高流量鼻カニューレ酸素療法からの離脱、治療失敗までの時間、挿管までの時間、死亡までの時間、入院期間などに設定した。挿管の適用基準は、呼吸数40回/分超、pH7.25未満の呼吸性アシドーシス、多量の気道分泌物、FiO2が0.8以上なのにSpO2が90%を保てない、血行動態の不安定、意識状態の悪化、などとした。
2020年4月2日から2021年1月26日まで、2350人の患者をスクリーニングして、条件を満たし同意が得られた1126人がランダム割り付けに参加した。腹臥位群に567人、標準ケア群に559人を割り付けた。試験中に同意を取り下げた患者が5人いたため、腹臥位群564人(平均年齢61.5歳、女性が33%)と標準ケア群557人(60.7歳、女性が34%)、合計で1121人を分析対象とした。入院から組み入れまでの日数の中央値は、腹臥位群が1.0日(四分位範囲0.4~1.9日)、標準ケア群は1.0日(0.4~1.5日)だった。
最も多くの患者を登録していたのはメキシコで430人(36%)、フランス402人(36%)、米国222人(20%)となっていた。残りの3カ国の患者数は少なく、スペインは30人(3%)、アイルランドは24人(2%)、カナダは13人(1%)だった。1121人中986人(88%)がステロイドの投与を受けていた。登録時点のSpO2/FiO2比平均値は、腹臥位群が147.9(標準偏差43.9)で、標準ケア群は148.6(43.1)だった。
腹臥位群の患者で14日後までに記録されていた1日当たりの腹臥位時間の中央値は5.0時間(四分位範囲1.6~8.8時間)だった。参加国によって時間は異なり、スペインが1.6時間だったのに対して、メキシコは8.6時間だった。
治療失敗は、腹臥位群の564人中223人(40%)と標準ケア群の557人中257人(46%)に発生した。相対リスクは0.86(95%信頼区間0.75-0.98)になった。治療失敗を1件回避するための治療必要数は15(95%信頼区間8-156)だった。
28日までの挿管の累積発生率は、腹臥位群33%と標準ケア群40%で、死亡の累積発生率は21%と24%だった。Time-to-event解析のハザード比は、挿管が0.75(0.62-0.91)、死亡は0.87(0.68-1.11)になった。挿管リスクは腹臥位群が有意に低かったが、死亡リスクの差は有意ではなかった。
1日当たりの平均腹臥位時間が長い方が、28日までの治療成功率が高かった。腹臥位時間の平均値が8時間以上だった151人では、治療失敗は25人(17%)に留まったが、8時間未満だった413人では198人(48%)が治療失敗となっていた。
なお、標準ケア群557人中64人(11%)が少なくとも1回以上腹臥位をとっていたが、それらの患者のうちの36人(56%)が、28日後までに治療失敗となっていた。
あらかじめ設定していた有害事象の発生率は低く、両群間で同様だった。
これらの結果から著者らは、COVID-19による急性低酸素血症呼吸不全で、高流量鼻カニューレ酸素療法を受けている患者に対する覚醒時の腹臥位療法は、有害事象を増やすことなく、治療失敗のリスク、特に挿管のリスクを減らすと結論している。この研究はOpen AI社、Rice Foundationなどの支援を受けている。
原題は「Awake prone positioning for COVID-19 acute hypoxaemic respiratory failure: a randomised, controlled, multinational, open-label meta-trial」、概要はLancet Respiratory Medicine誌のウェブサイトで閲覧できる。
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