【創作百合】いつも笑っていますよね、と彼女が言った【1・23今日の百合オフィス百合】
「佐々木さんて、いつも笑ってますよね」
何がそんなに楽しいんですか、そう言って、彼女がうつむく。
「どうしたの? 何か嫌なことでもあった?」
たまに話しかけてきたと思ったら、なんとまあ攻撃的。
そんなことを思いながら、わたしはコーヒーのインサートカップを手に取った。
ホルダーに差し込み、コーヒーメーカーのボタンを押す。
ほわり、コーヒーの香りが漂う。
「……何、ってことじゃないんですけど、課長にちょっと言われちゃって……。見てたんでしょう?」
「…ああ、」
なあんだ、あのことね。
午前中の資料のことで、そういえばなにやら呼び出されていたっけ。見るからにしょんぼりして戻ってきた彼女を見て、すぐに顔に出る彼女がとてもかわいいと思った。
怒られたら、しょんぼりする。
うれしかったら、にこにこと笑う。
くるくるかわるその表情が、なんてかわいいんだろうと、いつもそう思っていた。
「佐々木さん、わたしのこと見て笑ったでしょう」
「そりゃあまあ、ねえ。…だってあなたかわいいんだもの」
そう言ってにこりと笑って、コーヒーを注いだカップを口元に。
「なっ…!! なに言ってるんですかっ…」
すぐに顔を真っ赤にする彼女。そんな彼女を横目に、カップの中の液体を、ごくりとひとくち飲み込んだ。
うん、いい香り。今日の豆はどこのかな。
「ね、これおいしいね。あなたが買ってきたんでしょ? コーヒー、すきなんだ? センスあるよね」
「っていうか、佐々木さんわたしの質問に答えてないですよ」
さっきまでしょんぼりむっつりしていた顔が、今は真っ赤でいきいきと。
なーんて、ほほえましいのかしら。
「プッ」
「なあんですかあ!」
「ううん、やっぱりかわいいなって」
そう言ってわたしは笑って、一気にコーヒーを飲み干した。
さ、午後もがんばりますか。
「あっ、ちょっとまだ質問に――」
ぷくーと頬を膨らませ、答えてない、なんてさわぐから。
「あなたがそこに居るからよ」
なーんて言って、わたしはその場を後にした。
たくさん笑って、たくさん怒られて、たくさんへこんで、強くなれ。
かわいいかわいい後輩ちゃん、はやく大きくおなりなさい。
がんばれ、働く女の子!
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