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【番外④】やっと縫わせてくれたボタン
以前、「美人ファーマーの飴玉」という文章を書いたことがある。人と接点が多くない統合失調症の男性が珍しく実習生に飴玉をあげたという話だ。本人の意思で一切の服薬を中断しているため日ごろからヒヤヒヤしながら見守っている私と裏腹に、緊張している実習生に対して安心の味がする飴玉をあげた孝雄さん(仮名)。彼はもちろん今も医療を再開などせずに1年と4か月が経過している。生活のリズムが崩れたり、親戚との付き合いの
もっとみる【番外③】美人ファーマーの飴玉
ある日、就労支援事業の活動を終えベンチで私がぼーっとしていると「おいしいけど食べるねー?」と向かいに座っていた孝雄さん(仮名)が私の隣に立っていた実習生に声をかけた。孝雄さんはその言葉を発しながらもポケットをゴソゴソしており、何が出てくるかまだ分からない状況に実習生は戸惑い、マンガのような返答で「あああああ、ええええええええ・・・・」と声を出している。誰が見ても分かる戸惑い様である。私はめ
【番外②】星座を紡ぐ分裂病のチカラ
最近星を見ていないと思い、子ども達を連れて夜の海に行った。満点の星空が広がっていて、流れ星も見えた。一応「綺麗だねー」と言ってはみたが、本心は少し怖かった。子ども達の手前なぜかありきたりな言葉を選んでしまった。しばらく浜辺に寝そべって星空を眺めていて、頭に浮かんできた疑問がある。規則性なく無数に点在している星々を昔の人はどうやって結び、星座を作ったのだろうか。まったく何の形にも見えない星空にどん
もっとみる【番外①】カレーライスと分裂病
1、はじめに
年末も差し迫った時期に携帯電話が鳴った、何年か前に沖縄で統合失調症臨床研究会を開催した時に電話番号を交換してそれっきりであった日本評論社の編集者からだ。私に統合失調症治療における作業療法について「統合失調症のひろば」に原稿を書けという用件であった。ひろばは私が敬愛してやまない横田Dr(オリブ山病院副院長)が編集員として参画している雑誌である為に、この上ない話であったが、なんせこの領