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似合っていた

デザイナーの芦田淳さんが亡くなった。

そのお名前を見て
「ああ、」って懐かしさを感じた。

わたくしがお花を習い(!!)に行っていた頃
その教室の生徒さん達の芦田淳着用率が、半端でなく高かったんだ。

もう随分随分前の話になるのだけれど
高速から赤いポルシェを飛ばして習いに来ている人だとか
バレンタインデーには、引き出し式の3段GODIVAを、当たり前に持ってくるだとか

なんだろ、この人達って、お花そのものより
とにかく、生徒さん達があまりにわたくしとは、異世界に生きているので、面白くて面白くて、お花の腕はちっとも上達しなかったけれど、お稽古には結構真面目に通った。

「先生こんにちは。皆さま、こんにちは。
先生、お稽古よろしくお願い致します。」

そういうと、生徒さん達が一斉にわたくしを見て

「tonchikiさん、こんにちは。」
「いやあ、今日はまた、素敵なお召し物。」
「ほんまやわ~~。私もそんなん、1度は着てみたいけど・・・」

そういう言葉が降り注ぐ。

ものすごーくわたくしは「浮いていた」からね。

でも、ちっとも嫌味に感じないのは、本気で彼女たちがそう思っているから。

「品の良さ」
「ご近所に恥ずかしくない」
「女の子らしい」
「派手ではない」

そういうコンセプトの元に洋服を選んでいる彼女たちが
真っ赤なジャケットに紫のシャツ、胸ポケットに黒のチーフなんて、絶対、着る訳がない。金輪際。

でも、その浮きまくったわたくしの恰好が、彼女達には珍しく、「一度は着てみたい」のだという。

ハロウィーンでの仮装に対する気持ちのようなものかしらね。

ジャケットを貸すと、嬉しそうに羽織って
「ああ、これで外に出てみたい!」って言って、クルクル回っていた彼女は、今、どんな格好をしているだろう。

きっと、綺麗な巻き髪で
ニコニコ笑っているような、そんな気がする。

芦田淳の洋服は、そんな彼女たちに、とても、とても似合っていた。






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