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w√OCEAN覆面リレー小説 紅組2
では、少年のような大人とはなんだろう。少し黴臭い、浅葱色がかった鼠色の記憶を掘り返してみる。
私がまだ4つか5つの頃、なんでもよく食べる子供ではあったが、一つだけ、どうしても仲良くなれない物があった。
何を隠そうβカロテンが豊富で多くの料理にまとわりついてくる、細長くてオレンジ色をした、超ベリーキュートで憎たらしいソレ。
母のカレーライスには必ず大きめに乱切りされたソレが入っていて、私は幼いながらも毎度1口頬張るだけでほくほくとした気分になる甘口カレーライスの中にひっそりと佇むソレを睨みつけながら、1つ残らず避けていた。平たいカレー皿のヘリのギリギリに寄せて。
せっかくの大好きなカレーライスに取り憑いてくる疫病神であるソレには 崖っぷちの刑を与えないという選択肢は有ろうか。
ところで、私の母は、私の手によって綺麗に並べられて 理不尽にも服役中のソレを見るとこう言った。
「もうー、またニンジン残すんだから。次はちゃんと食べるのよ。」
そう言いながら私の手によって崖っぷちに立たされていたソレを 1つ残らず腹の中に仕舞っていくのである。
(…もう。お母さんってば私の嫌いなソレの名をあっけらかんと言ってのけるのだから。)
そんな 欲求の赴くままに生きていた頃の回想に耽っていると 既に丑三つ時をとうに超えていた。
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