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ロマンティック・ラブ・イデオロギー

『2024年9月3日(火)~9月8日(日)、溝ノ口劇場にて。
「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」という演劇に出演しました。
大千秋楽を迎え、幕を閉じました。
となりのパンダs の団体動員としては最高記録となる約770名のお客様が溝ノ口劇場に足を運んでくださったそうです。初秋とはいえ、夏の暑さもしぶとく残る中、沢山のお客様に作品をお届けできることができました。
本当にありがとうございました。』

と、書き始めている間に、早くも2週間が経とうとしています。
舞台で過ごしたあとの時の流れというのは、とても緩やかなはずなのに、ぼーっと川の流れに抗うことなく身を委ねている状態になり、気づくともうこんな地点にいる。みたいなことがよくあります。もがけばもがくほど顕著な対比です。それだけ突っ走ったってことなんでしょうね。

となりのパンダsという団体の、通算5回目の公演にして、初めての演劇作品、新作書下ろし初演、「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」(略してロマイデ)の製作現場について、自分なりに振り返っていきたいと思います。

あらすじ

恋愛禁止を校訓に掲げる聖ミゾノクチ女学園。
そこに勤める教師の小飯塚は産休に入る教師の代役として演劇部の顧問を請け負うことになった。
文化祭を間近に控え演劇部から上演作品のプレゼンが始まるものの、
小飯塚は「校訓に相応しくない」という理由で突っぱねてしまう。
生徒たちの提案した戯曲は恋愛至上主義の王道を行くラブストーリーだった!?
これはとなりのパンダsが送るハートフルコメディ(初の演劇作品)です!

https://www.mizogeki.com/romantic-love-ideology

今作は、あらすじの通り一応「コメディ作品」と名乗ってはいたのですが、蓋を開けてみると、タブーすれすれの社会的メッセージや、大人のリアルな恋愛要素といったビターな部分も入り混ざっていて、「純粋なコメディではないところに意外性があった」という感想を多くいただきました。
観に来た人が、キービジュアルからは想像もしなかった物語の展開に「思っていたのと違った」と言いながらも、どこかちょっとハッピーそうな雰囲気になってお帰りになったことが、個人的にはとてもうれしかったです。

チームD:原田希美役として

今作では、全4チーム(A~D)、1チーム8名、キャストとしては総勢32名が集まりました。
みなさんとてもイキイキとして愛らしく、休憩時間のおしゃべりはにぎやかで、でもちゃんと他チームがどんな芝居をやっているのかは意識していて、どことなくギラギラとした闘争心みたいなのが見え隠れしていました。その稽古場の模様はさながら「女子高」でした。
台本を持っている以上、構成がある程度統一される朗読劇と違い、演劇はいかに台本の中に余白を見つけて埋めていくかの作業が顕著だと思います。台本を手放し舞台の上で動かなくてはならないのですから、芝居の色も朗読劇以上に各チームで様変わりしていました。
芝居の良し悪しを決めるのはお客様それぞれであるべきだし、私たちは勝ち負けを決めるためにお芝居をしているわけではないけれど、4チームという大所帯で公演をやるうえで、お互いを意識し合えたのはすごく良い環境だったと私は思っています。
自分以外に3人も同じ役を演じる人たちがいて、それぞれに役の向き合い方や、芝居の構築の仕方が異なり、自分以外の3パターンもの演技を見られるのは、ものすごく勉強になりました。中には「なるほどその手があったか」と手のひらを打ったり、「そっちがそう来るなら私はこうしよう」と躍起になることもありました。そういう意味では、自分一人だけでなく、同じ役を演じる役者が複数人いたからこそ作れた役だと私は思うのです。

私が演じたのは、演劇部の部長:原田希美。部内唯一の高校3年生で、演劇部が全国大会に行くことを悲願としている熱血少女。あまりの熱血ぷりに、部員たちを置いて自分の世界に没入してしまうことも度々…そして、作中で全国に行きたい理由が唯一描かれている女の子でもあります。
私なりの解釈ですが、きっと彼女が全国に行きたいという熱い想いが、部員全員を奮い立たせ、沙月に脚本を書かせるきっかけになったと思うのです。この作品にスピンオフがあるとしたら、彼女の高校1年生~2年生のあいだが描かれそうなそんな人物。
夢があり、仲間がいる若い女の子のパワーというのはすさまじい。だからこそ、周りを巻き込むムードメーカーたりえるし、同時にトラブルメーカーにもなる危うさもあるんだと思います。だから、希美を演じるにあたっては、「コイツただものじゃないな」って、そう一目置かれそうな女の子を目指しました。

誰よりもテンション高く、誰よりも遊ぶことを意識して、なんなら「やりすぎやで自分」って稽古でいっぱい怒られようといろんなネタを顔合わせからゲネプロに至るまで凝りもせず必ず仕込んでいったのですが、残念ながら最後まで演出の山本さんに怒られることはなく(笑) 、なんならほぼすべてのネタが採用されてしまったので、私の希美はものすごい力押しのコメディエンヌになっていました。

ゲネプロでやった幻のアドリブ(笑)武田先生役の三島くんを巻き込んだ大作でしたが、
「ちょっとウケたいという欲が出過ぎている」という判断で却下になりました。

いつの間にかチームDが「絶対に笑ってはいけないロマイデ24時」的な雰囲気になっていくのに対し、共演者のみんなは私に呆れるでもなくぜんぶ受け入れてくれて本当にありがたかったです。(一回「一緒にやるの怖い」と言われたことはありました笑)
そんなありがたい環境で、稽古から本番に至るまで、もう何も恐れることなく、伸び伸び~!と楽しくやらせていただきました。お客さんが興ざめしたらほんまに堪忍…と覚悟はしていたのですが、毎公演、あったか~いお客様ばかりでこれには本当に救われました。調子に乗って次のリアクションで遊ぶと綺麗にすべるところまでセットで、本当にありがたかったです。
自分は改めてコメディが大好きで、今度こそ山本さんに怒られるくらい体を張った芝居にチャレンジしたいなと思いました。100恋の金井くんに続き、希美は最高のパートナーでした。彼女と過ごせた1か月、幸せでした。

希美へ、今頃は文化祭本番に向けて稽古が佳境になっているころだと思います。小飯塚先生とはこれからも衝突するかもしれんけど、先生は意地悪だけで言ってるんじゃないんやからちゃんと話聞こうね。沙月はきっと最後まで脚本で悩んでるだろうから励まして。真理奈は何も考えてないようでめっちゃ考える子やからもっと頼ってええと思うよ。未央は頭良いけど頑固なところもあるからそこはちゃんと先輩として導いてあげるんよ。聡子が暴走しそうになったら武田先生といっしょにフォローしてあげてな。あと、頑張りすぎて、部員の皆を置いてけぼりにしないように!学業も頑張るんよ!全国大会、亀ちゃんにええとこ見せてな!ほな、またね~!

カーテンコールでの写真撮影タイム。わちゃわちゃして楽しかったな~

チームB:演出として

本公演で初めて演出のお仕事もさせていただきました。
話が決まるまではいろいろてんやわんやがあったのですが、正式なお話しをいただいたときには、「私なんかに務まるのかしらん???」と疑問と不安でいっぱいいっぱいになりましたが、山本さんや、となりのパンダsのみんなや、かつての共演者の皆さんの後押しもあり、僭越ながら任につかせていただく運びとなりました。
チームBは、となりのパンダsの舞台によく出てくれている人や、初めてご一緒する人、そして初めて舞台に立つという人まで幅広いキャリアの方が集まったのですが、とにかくみなさん芝居に対して真面目で、周りの人のことを気遣える素晴らしい人たちで、初稽古から私は何も不安を感じることなく演出に徹することができました。
ひとりひとりがすごく真摯に、リスペクトを持って私を演出として向き合ってくれたし、たくさん個別に相談もきてくれて、稽古での指摘を自主練でクリアしてきてくれて、その度に、もうめちゃくちゃ、めちゃくちゃうれしかった。言葉が届いた!って瞬間は何にも代えがたい喜びでした。

何よりも、稽古を重ねるたびにどんどん作品ができあがっていく過程を見守ることができたのは、「これが演出の幸せってやつか」と胸がじーんとなりました。自分が輪の中に入ってやる芝居ももちろん楽しいけれど、輪の外から見つめる芝居も、すごくいいなあと思いました。
もちろん、順風満帆というわけにはいかず、焦って支離滅裂なことを言ってしまって皆の頭の上に「?」が浮かばせてしまった姿も何度か見たし、言葉のボキャブラリーが足りなくて「もっとうまく伝えられたはずやのに」と家に帰って寝る前布団の中で悩んだ夜もありました。彼女たちをより輝かせるための後押しとなる言葉を発するには、私はまだまだ経験も視野も足りないことを実感しました。ただ、それを知ることができたという意味では、とても良い機会でした。「自分にはまだ無理だ」なんて尻込みして断らなくて本当によかった。
信頼して任せてくださった山本さん、ついてきてくださったチームBのみなさん、ありがとうございました。またいつかチャンスがあれば、演出させてください。いつか、自分の書いた脚本を携えて、作・演出まで手掛けることが次の目標です。

溝ノ口劇場4連続公演を終えて

となりのパンダsは、今年2024年に入りまして、
4月 第2回「うさぎのダイアリー」、
6月 第3回「炎上する大奥~百鬼夜行の宴~」、
7月 第4回「100年越しの初恋vol.4」、
9月 第5回「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」、
4連続、溝ノ口劇場にて公演を打ちました。団体のホーム劇場になりそうな勢いでお世話になってます。
毎公演、こんな手厚いことあるんかってくらいものすごいエネルギーでサポートしてくださる劇場スタッフの皆さんには感謝してもしきれません。
私も劇場スタッフの一員として、そしてとなりのパンダsの一員として、4公演すべてに関わらせてもらって、たくさんのことを経験させてもらいました。
2024年正月時点では、まさか自分が舞台の照明づくりをするなんて思ってもなかったし、まさか自分が演出をやるなんて思ってもなかったし、そしてこんなにもたくさんの素敵なキャストの皆さんと出会うことが出来るなんて思ってもみませんでした。毎公演が驚きと学びの連続。自分の不甲斐なさにいっぱい怒ったし、かと思えば「やればできるじゃん自分」とたくさん調子に乗ったし、どの公演でも情緒はぐっちゃぐちゃですが、最終的には「芝居って面白いな~!」って、ここに到達するのが毎回面白くてたまりません。
これからも大好きな芝居を長く長く続けられるよう、引き続き精進します。

あ~~楽しかった!!!

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