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「聖なるもの」読書会まとめ&今後のこと


◯「聖なるもの」読書会の概要

2023年の2月から『近代体操』第2号刊行に向けて1年間取り組んできた読書会が、2024年3月をもって最終回となりました。『近代体操』第2号の特集テーマは「聖なるもの」。宗教やポップカルチャー、詩・短歌まで多彩な問題圏に重なるこの概念を、1年間かけてさまざまな角度から検討してきました。

読書会で扱った書籍は、以下のとおりです。

第1回  大塚英志『少女たちのかわいい天皇』
     宇佐見りん『推し、燃ゆ』 
第2回  タラル・アサド『世俗の形成』
     エミール・デュルケーム『宗教生活の基本形態』
第3回  モリス・バーマン『デカルトからベイトソンへ』
     ジャック・デリダ『信と知』
第4回  吉本隆明『初期歌謡論』
     折口信夫「大嘗祭の本義」「水の女」など
第5回  安丸良夫『神々の明治維新』
     ヘンリー・ジェンキンズ『コンバージェンス・カルチャー』
第6回  ジャン=リュック・マリオン『存在なき神』
     大竹宏ニ『公開性の根源』
第7回  阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』
第8回  ラクー=ラバルト『ハイデガー:詩の政治』(草乃)
第9回  森鴎外『かのように』
第10回  フランツ・カフカ『審判』
第extra回(参加者発表回)黒沢清『CURE』
            『加藤郁乎詩集』
             安井浩司『海辺のアポリア』
第11回  山本圭『アンタゴニズムス』
第12回  リュック・フェリー『神に代わる人間』
第13回  中沢新一『精神の考古学』

※読書会の様子は、note記事としてもアップロードしていますので、よろしければそちらもご覧ください。

読書会で話し合われたことは本当に多種多様で、ここには書ききれません。詳しくは上記の記事をお読みいただければと思いますが、ひとつ例として挙げるとすれば、たとえば何度も議論となった話題に「推し」の問題があります。

『推し、燃ゆ』の主人公にもその傾向は見られますが、「推し」現象ではしばしば「推し」になんらかの聖性を見出し、そこに自己を仮託するような振る舞いが見られます。「推しは神!」とか、「尊い」のような表現は、そのあらわれのひとつです。書籍で言えば、アイロニカルなタイトルかと思いきや、その実かなりベタにAKBを礼賛している濱野智史『前田敦子はキリストを超えた』などがわかりやすい例でしょう。

とはいえ、「推し」現象を単に批判しても仕方ありません。アイドルを「推し」て楽しんでいる人たちに、推し活の歪さについて説くだけでは、人の楽しみにケチをつけるだけの結果に終わります。

重要なのは、「推し」のような形で回帰してくる「聖なるもの」のゾンビ性でしょう。私たちは宗教的なものを切断して「近代」を生きていると考えています。ところがオウム真理教や統一教会、あるいは「推し」、陰謀論などといった形で、抑圧された「聖なるもの」は回帰します。この抑圧➠回帰の構造こそ私たちが考えるべきテーマです。

こうした「聖なるもの」の回帰性は、大竹弘二『公開性の根源』で指摘する、どんなに抑圧しても回帰する「秘密」とも通底するものでしょう。もちろん、こうした抑圧と回帰の構造は、精神分析理論とも接合可能です。

2号では、このような問題系を中心に「推し」や自己啓発、陰謀論、詩、法学、身体、ナショナリズム、アイロニーなどが問題となっていくでしょう。1年間考えてきたことを、各同人が論考の形にしていきます。

◯『近代体操』第2号の刊行について

このようにして私たちは、1年間かけて約20冊の本を参加者の方と読み、議論を積み上げてきました。これからいよいよ、冬の文フリに向けて、第2号の作成にとりかかります。近代体操第2号は、2024年12月開催予定の東京フリマ東京でお披露目となる予定です。

第2号では、論考のみならずインタビュー記事や座談会記事、さらに創作なども加え、1号よりもさらにバラエティーに富んだ誌面となる予定です。現在、冬に向けて本格的な誌面の作成がスタートしています。

創刊号も販売中ですので、『近代体操』の活動に興味を持たれた方は、ぜひ創刊号もお買い求めください。

また、第2号では広告者さまも募集しています。もし『近代体操』になにか広告を載せたい!という方がいらっしゃりましたら、下記のメールアドレスまでご連絡ください。

kindaitaiso2021(アットマーク以下はgmailアドレス共通のもの)

それではみなさま、『近代体操』の2号をよろしくお願いします。

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