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「こどもののどに物がつまりました。どうしたら良いですか!?」
皆様こんにちは。今回のすくナビの担当は、永谷です。
今回は、ニュースなどで気になっている、心配になっている方も多いと思われる話題についてお話します。それは
「こどもののどに物がつまりました。どうしたら良いですか!?」
という疑問です。
早速ですが、結論です。
「のどがつまったサインがあれば119番へ救急要請を行い、人手を集めてすぐに一時救命処置を開始しましょう!」
となります。まず、のどにつめないようにすること、そして、つまったときの適切な対応に役立つ情報を3つにわけてお話します。
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1. つまりやすい食品を知り、予防する。
2. 誤嚥や窒息のサインを知り、緊急事態に早く気づく。
3. 119番して、1歳未満では胸部突き上げ法と背部叩打法を、1歳以上では腹部突き上げ法を行なう。
1. つまりやすい食品を知り、予防する。
食品により窒息が起きやすいのは、こども側と食品側との両方の要因があります。
まず、こども側の要因としては、赤ちゃんや小さなこどもは食べる力が弱いことがあげられます。かむ、のみこむ力が弱いので、のどにつまりやすいです。また、食事の時の行動にも注意が必要です。走り回りながら食べる、たくさんの食品を口いっぱいにつめる、などは窒息につながる可能性があるのでやめましょう。
食品側の要因としては、
・丸くてつるっとしている
・ねばりけが強く、唾液を吸収して飲み込みづらい
・かたくてかみきりにくい
などがあります。特に事故の頻度が高いものを下にまとめましたので、参考にして、日々の食事でも注意してみると良いでしょう。
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食品以外では、レジ袋やヒモ、スーパーボールやBB弾などものどをつめる原因となることもありますので、注意しましょう。
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2. 誤嚥や窒息のサインを知り、緊急事態に早く気づく。
続いて、窒息についての知識を整理し、窒息のサインを確認しましょう。
平成28年から令和2年の5年間では子どもの不慮の窒息事故死例433例の中で、胃内容物の誤嚥による事故が122例、食品の誤嚥による事故が69例、その他の物体の誤嚥による事故が56例と誤嚥による事故が237例(54%)を占めます。
気道が完全に塞がっている程度にもよりますが、窒息から5分で呼吸が停止し、その後心停止、窒息から10分で大脳障害が起こり、25分で脳死状態になるとされています。窒息を発見したら迷わず直ぐに対応することが求められます。
そのためにもまず、おとながこどもに窒息が起こっていることに気づかなければなりません。
「チョークサイン」は全世界共通の窒息時のサインとされています。自分の喉を親指と人差し指で掴むサインで、ある程度大きくなれば子どもも可能です(イラスト参照)
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しかし、低年齢の子どもはサインを出すことが出来ないため、次の症状がサインとなります。
· 急に咳き込む
· 咳が止まらない
· 急にゼーゼーし始める
· 顔色が悪い
· よだれを垂らして苦しそうな顔をして声が出せない
特に最後の「よだれを垂らして苦しそうな顔をして声が出せない」は完全気道閉塞の可能性があるため、早急な対応が必要です。
3. 119番して、1歳未満では胸部突き上げ法と背部叩打法を、1歳以上では腹部突き上げ法を行なう。
では、対処法について説明します。
① まず誤嚥や窒息のサインを見つけたら、119番へ救急要請すると同時に一時救命処置を開始します。
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② 口腔内を確認して、異物が見える場合は取り除いて下さい。この際異物が見えなければ無理に手探りで行うのはかえって異物を奥に深めてしまう可能性があるので絶対にしないでください。
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③ ここからは年齢で処置が分かれます。
< 1歳未満(新生児・乳児)>
A:背部叩打法・・・救護者が膝を曲げるあるいは椅子に座り、太ももに患児をうつ伏せにします。患児の頭を体よりも低い位置で保ち、空いているもう片方の手のひらで患児の左右の肩甲骨の間を5-6回強く叩きます。その後口の中を確認し、異物が見えたら取り除いて下さい。これでも異物が見つからなければBへ移ります。
B:胸部突き上げ方・・・救護者の片方の腕に患児を乗せます。手のひら全体で患児の頭を支え、頭が身体よりも低い位置になるように保ちます。空いているもう片方の手の指の2本を用いて患児の左右の乳頭を結ぶ線の少し足側を胸郭が1/3沈むぐらい5回押さえます。その後口の中を確認し、異物が見えたら取り除いて下さい。これでも異物が見つからなければ再びAへ移ります。A→B→A→B→A・・・・・・・・と繰り返します。
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(参考動画)
A: https://www.youtube.com/watch?v=yJ2yh55ErPA 東京消防庁
B: https://www.youtube.com/watch?v=4eX7lVjxGkM 東京消防庁
< 1歳以上 >
Aは同じです。Aの背部叩打法を行っても異物除去出来なければCへ移ります。
C:腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)・・・患児の背中側から救護者の両手をお腹に回し、親指がみぞおちに来るように片手で握りこぶしを作り、もう一方の手で包むように握ります。患児の背中と救護者の体を密着させて素早く手前上方に5-6回押し上げます。その後口の中を確認し、異物が見えたら取り除いて下さい。これでも異物が見つからなければ再びAへ移ります。A→C→A→C→A・・・・・・・・と繰り返します。
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※A、B、Cを行っている最中、お子さんの反応がなくなったときは直ぐに胸骨圧迫を始めて下さい。胸骨圧迫は胸骨の真ん中より下あたりを1分間に120回(1秒に2回)程度、胸の厚さが1/3へこむくらい圧迫して下さい。片手で押しても両手で押しても良いですが、一番力が入る手のひらの付け根(手根部)を押し当てて下さい。
ここまでのお話でのどに物がつまったときの対応方法についてご理解いただけたでしょうか。日頃から事故が起こらない様に注意しておくことはとても大切です。しかし、実際に起こってしまった場合にも全く対応方法について知らないのと知っているのとでは、行動に大きな差があると思います。参考になれば幸いです。ご質問やご意見などがあれば、このブログにコメントをいただければ「すくナビ」を続けていく上でとても参考になるので、どうぞよろしくお願いします。
近畿大学病院小児科では「健康について知ってもらうことで、こどもたちの幸せと明るい未来を守れる社会を目指して」をコンセプトに、こどもの健康に関する情報を発信しています。これからもよろしくお願いします。
永谷 奈央
参考文献:
・厚生労働省「人口動態調査」HP
・日本小児科学会HP~食品による窒息 子どもを守るためにできること~
・消費者庁イラスト集(5)3-安全関連