「IgA血管炎って何?」
こんにちは!今回のすくナビの担当は、森本優一です。
今回は“教えて!近大先生〜自己免疫疾患編”です。小児科の外来でよくいただくご質問にお答えするシリーズです。
今回のご質問です。
「5歳の娘がIgA血管炎と診断されました。この病気はどんな病気で、どのように治療するのですか?」
早速ですが、結論です。
「IgA血管炎は自然に治ることが多く、治療は対症療法が中心です。しかし、重症例ではステロイドなどの治療が必要になることもあります。」
それでは、IgA血管炎について3ステップに分けて詳しく見ていきましょう。
STEP 1: IgA血管炎とは?
STEP 2: IgA血管炎の治療
STEP 3: 日常生活での注意点
STEP 1: IgA血管炎とは?
IgA血管炎(アレルギー性紫斑病)は、主に10歳以下の子どもに見られる病気で、全身の小さな血管に炎症が起こることでさまざまな症状が現れます。代表的な症状には、皮膚に現れる紫色の斑点、関節の痛み、お腹の痛み、そして腎臓の問題があります。
〈症状〉
皮膚症状:約70%の患者さんに初期症状として、触れることのできる紫色の斑点が現れます。特に足やお尻に見られます。これらはまるで小さなあざのように見えますが、押すと痛みを感じることがあります。
関節症状:
約2/3の患者さんに関節の痛みや腫れが見られ、特に膝や足首に多く、痛みで歩くのが難しくなることもあります。
腹部症状:
約半数の患者さんにお腹の痛み、吐き気、嘔吐、下痢、血便などの症状が見られます。小児では腸重積といって、腸の一部が反対側に入り込んでしまう状態になることもあります。
腎症状:
約半数の患者さんに尿に血が混じる、尿にタンパクが出るといった症状が見られます。これが進行すると、重篤な腎臓の病気に発展することもあります。また、腎症状は他の症状から遅れて出現することもあるため、注意が必要です。
〈発症原因〉
IgA血管炎は、免疫システムが何らかの原因で異常を起こし、自分の血管を攻撃してしまうことで発症します。具体的な原因はまだ完全にはわかっていませんが、風邪やウイルス感染、特定の薬がきっかけとなることがあります。
〈診断〉
IgA血管炎の診断は、主に症状に基づいて行われます。皮膚の紫色の斑点、関節の痛み、お腹の痛み、腎臓の問題のうちいずれかが見られる場合、医師はこの病気を疑います。場合によっては、血液検査や尿検査、皮膚の一部を取って顕微鏡で調べることもあります。
STEP 2: IgA血管炎の治療
多くのIgA血管炎の患者さんは、特別な治療をしなくても4週間ほどで自然に治ります。治療は主に症状を和らげることを目的としており、水分を十分に取り、安静にすることが基本です。関節の痛みやお腹の痛みには、痛み止めや抗炎症薬が使われます。
〈対症療法〉
安静: 体を休めることで、自然治癒力を高めます。
痛み止め: 関節の痛みやお腹の痛みを和らげるために使います。
〈重症例の治療〉
症状が重い場合や腎臓に問題が出ている場合は、ステロイドという強力な抗炎症薬を使うことがあります。これにより、症状の進行を防ぎ、早く治すことができます。
〈その他の薬〉
ステロイド以外にも、次のような薬が使われることがあります。
免疫抑制剤: 免疫系の働きを抑えることで、炎症を軽減します。
抗ヒスタミン薬: かゆみやアレルギー反応を抑えるために使用されます。
抗生物質: 感染症が併発している場合に使用されます。
STEP 3: 日常生活での注意点
IgA血管炎にかかったお子さんが日常生活で気をつけるべき点についてもお話しします。
〈休息と栄養〉
十分な休息: 無理をすると症状が悪化することがあります。お子さんには十分な休息を取らせてあげてください。特に、症状が出ている間や体調が悪いときは、運動を制限し、体を休めることが重要です。
バランスの取れた食事: 栄養バランスの良い食事を心がけましょう。腹部症状がある場合は、消化に良いものを中心に食事を考えましょう。また、食事内容については医師や栄養士と相談することをお勧めします。
〈学校生活〉
お子さんが学校に通っている場合、先生にも病気のことを伝え、必要な配慮をお願いすると良いでしょう。体育の授業や激しい運動は避け、症状が落ち着くまで安静にすることが重要です。
〈日常生活でのその他の注意点〉
感染予防: 風邪やインフルエンザなどの感染症にかからないよう、手洗いやうがいを徹底しましょう。
定期的な医師の診察: 症状が治まっても、定期的に医師の診察を受け、状態をチェックすることが大切です。IgA血管炎はおよそ10%に再燃が見られるため、注意深く観察し、早期に対応することが重要です。
まとめ
IgA血管炎は心配な病気ですが、多くの場合、自然に治ることが多いです。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの医師に相談することをお勧めします。近畿大学病院小児科では、IgA血管炎を含むさまざまな小児の病気に対応していますので、何か気になることがあればいつでもご相談ください。
また、ご質問やご意見があれば、このブログにコメントをいただければ「すくナビ」を続けていく上でとても参考になりますので、どうぞよろしくお願いします。
近畿大学病院小児科では、「健康について知ってもらうことで、こどもたちの幸せと明るい未来を守れる社会を目指して」をコンセプトに、こどもの健康に関する情報を発信しています。これからもよろしくお願いします。
森本 優一
参考文献:
1) アレルギー性紫斑病(IgA血管炎) 林朋恵 血栓止血誌 2018;29(6):651-653
2) 紫斑病性腎炎. 難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/4657