「おちんちんの先が剥けていなくて、中に白いできものがあります。大丈夫でしょうか?」
皆様こんにちは。今回のすくナビの担当は、腎臓・泌尿器担当の森本優一です。
今回は“教えて!近大先生〜日常生活編”です。小児科の外来でよくいただくご質問にお答えするシリーズです。
今回のご質問です。
「3歳の男の子です。おちんちんの先が剥けていなくて、中に白いできものがあります。大丈夫でしょうか?」
この問題は多くのお母さんたちにとって理解が難しいものです。それは当事者体験がないこと、そして一般的な家庭での日常会話ではあまり触れられないためです。また、質問をしにくいという側面もあります。そのため、間違った情報を得たり、知識が不足したりすることが少なくない問題と考えられます。
それでは、結論です。
「赤く腫れていたり、痛がっていなければ問題ありません。無理に剥がしたりすると痛みや出血の原因になります」
となります。
この結論にいたった理由について3つにわけてお話しします。
1. 包茎とは亀頭に包皮が被っている場合をいいます。乳幼児においては正常な状態です。
2. 包皮の中にある分泌物が溜まったものを恥垢といいます。これ自体が感染の基になることはありません。
3. 無理に狭い包皮をむくと陰茎が締め付けられて包皮がむくみ、元に戻らなくなるのでやめましょう。戻らないときは急いで受診が必要です。
1. 包茎とは亀頭に包皮が被っている場合をいいます。乳幼児においては正常な状態です。
おちんちんの先端の部分を亀頭と呼びます。亀頭の周りを包皮(ほうひ)という皮が覆っています。包皮が全くむけない状態を真性包茎、普段は包皮が亀頭を被っているけれど手でむくことは出来る状態を仮性包茎と呼びます。
生まれてすぐの男の子は、包茎の状態が正常です。年齢が上がるにつれて、包茎は自然にひっくり返り、解消されていきます。これは、成長とともに亀頭と包皮が自然に分離しやすくなるためです。
上の図にあるように、多くのお子さんは成長とともに自然に包茎が解消されていきます。尿路感染や亀頭包皮炎などの感染症を繰り返す場合などは外科的治療が必要になることもありますが、基本的には様子を見ていただいて大丈夫です。
また、『割礼』と言って包皮を部分的または完全に切除する手術があります。これは主に宗教的、文化的理由で行われます。割礼は世界中で広く行われており、特にユダヤ教、イスラム教の信者にとっては重要な宗教的儀式となっています。このような文化が残ってきた経緯として、割礼は、特に幼児期において、尿路感染症のリスクを減少させるという医学的利点が指摘されています。非割礼の男児は割礼を受けた男児に比べて尿路感染症にかかるリスクが高いことが、複数の研究で示されています。これは抗菌薬などがない時代では、命に関わる問題であったと言えます。しかし、現代においては尿路感染症の発症がそれほど多くないこと、そして診断と治療の方法が確立されていることから、大きな差はないと言えるでしょう。
2. 包皮の中にある分泌物が溜まったものを恥垢といいます。これ自体が感染の基になることはありません。
お子さんのおちんちん、特に包皮の下をよく見ると、時々白色〜黄色っぽい小さなかたまりが見えることがあります。これは、おちんちんの先端部分(亀頭)とその周りの皮膚(包皮)から出る自然な分泌物です。これを恥垢と言います。恥垢は、おちんちんの特定の部分を守る役割を持っています。この分泌物があるおかげで、包皮と亀頭の表面がゆっくりと離れやすくなり、包皮がむけやすくなります。これは男の子の成長過程で自然に起こることです。恥垢は閉鎖したスペースに溜まった皮膚のかけらなので、外からバイ菌は入りにくい状態です。また、お子さんが成長するにつれて、包皮が自然にむけていき、恥垢も自然に体外に出ていきます。そのため、特別な処置をする必要はありません。恥垢は自然な現象であり、男の子の成長の一部です。
3.無理に狭い包皮をむくと陰茎が締め付けられて包皮がむくみ、元に戻らなくなるのでやめましょう。戻らないときは急いで受診が必要です。
包皮が亀頭の後ろに引っかかり、適切に戻せなくなる状態を嵌頓包茎(かんとんほうけい)と言います。包皮が締め付けられることで亀頭への血流が阻害され、長期間放置すると組織の損傷や壊死を引き起こす可能性があります。また、包皮が締め付けられることで尿の流れが悪くなり、排尿時の痛みや不快感、場合によっては尿閉(尿が出なくなること)を引き起こすことがあります。嵌頓包茎が発生した場合、自己判断での対処をせず、速やかに小児科や泌尿器科の専門医の診察を受けてください。状況に応じて、包皮を安全に元に戻す処置や、必要に応じて手術的介入が必要になる場合があります。
ここまでのお話で、「3歳の男の子です。おちんちんの先が剥けていなくて、中に白いできものがあります。大丈夫でしょうか?」というご質問に「赤く腫れていたり、痛がっていなければ問題ありません。無理に剥がしたりすると痛みや出血の原因になります」とお答えした理由がご理解いただけたでしょうか。
この様な話を直接聞きたい、またはお子さんの包皮に気になるところがある、という方は近畿大学病院小児科を受診してください。また、受診の希望はないけど、ご質問やご意見などがあれば、このブログにコメントをいただければ「すくナビ」を続けていく上でとても参考になるので、どうぞよろしくお願いします。
近畿大学病院小児科では「健康について知ってもらうことで、こどもたちの幸せと明るい未来を守れる社会を目指して」をコンセプトに、こどもの健康に関する情報を発信しています。これからもよろしくお願いします。
森本 優一
参考文献:
[1] Yang, C., Liu, X., & Wei, G. (2009). Foreskin development in 10 421 Chinese boys aged 0–18 years. World Journal of Pediatrics, 5, 312-315.
[2] Mclarty, R., & Kiddoo, D. (2019). Foreskin care in childhood. Canadian Medical Association Journal, 191, E365 - E365.
[3] 久松英治:乳幼児の埋没陰茎と包茎① 小児科診療2022年3号335-339.
[4] 此元竜雄:乳幼児の埋没陰茎と包茎② 小児科診療2022年3号341-347.